2021年良かった音楽10選

お久しぶりです。せっかくの年明けなので更新します。

2021年とはありますが、リリース年とは関係ありません。私がその年に聴いたというだけです。たくさんいい曲を聴いたのですが、キリがないので10曲だけ選びました。

10曲を順番に紹介するだけで、順位を付けた訳でははありません。あしからず。

 

 

①あいつら全員同窓会/ずっと真夜中でいいのに。

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SpotifyのCMに使われていて知った曲。ずっと真夜中でいいのにはかなりの人気ですよね。ありきたりな表現ですが世界観がすごい。アニメPVはの曲はYouTubeでバズる条件になってきていますね。その中でも一番アニメと曲が調和が飛び抜けてるのが、ずっと真夜中でいいのにだと思います。

無理せずに歌詞の中で韻を踏むのも気持ちが良い。メロディーもACAねさんのボーカルも唯一無二ですよね。

中でもこの曲を選んだのは、歌詞が自分に刺さりまくりだったからです。

匿名の自分になって 誰を批判しなくたって 発散できる言葉探してる
誰かを貶して自分は真っ当 前後を削った一言だけを 集団攻撃 小さな誤解が命取り

自分がツイッターで他人を批判してたときにこの曲を聴いて、自分のやってることはこのPVに出てくるモンスターと一緒だなと思いました。1つ目のモンスター=匿名の自分でしょう。この女の子の匿名の姿がこのモンスターな訳ですね。最後は抱きしめあって、匿名のモンスターな弱い自分も認め、一つになります。

私達も、どうか、モンスターな自分を、どうでもいいから置いてかないで、抱きしめて欲しい。

 

②ぺこらんだむぶれいん!/兎田ぺこら

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ホロライブ所属のVtuber、兎田ぺこらのオリジナルソングです。我々インターネットピーポー達にとって、2021年にVtuberの存在を無視することは出来ないでしょう。

私はぺこーらの配信をそれほど見たことがないのですが、Vtuberとしての象徴として君臨する兎田ぺこらは最もVtuberらしいVtuberだと思います。

シャフトを想像させる演出のこのMVは、音楽とMVがセットで完成されていますね。"ずっと真夜中でいいのに。"が音楽をアニメの世界観によって再現したのであれば、この「ぺこらんだむぶれいん!」は彼女という存在を1つのアニメとして再現した際のオープニングムービーのようなものになっています。

作詞はなんとあの”畑亜貴”です。ホロライブの本気が伺えます。

私がぺこらにハマってないのに、この曲にはハマった理由というのは、私自身の夢が、『自分のアニメop手描きMADを作ってもらうこと 』だったからです。わからない方に説明すると、ニコニコ動画の全盛期にはアニメのopをトレスして、自分の好きなアニメに改変する手の混んだMADが流行ったのです。私自身もアニメopになればアニメの世界に入れるような気がして、とても羨ましかったのです。

彼女はそれを完全に叶えてしまったので、そういう感動からこの曲を何度もリピートしてしまいました。ぺこーら、ホロライブにも入れない私は一体どうしたらいいんだ……。

 

退屈がイヤだったら こっち来れば?

だいじな場所なんてさ 自分で作らなきゃさ

ホロライブに入れなくても、畑亜貴に作詞されなくても、アニメMVを用意して貰わなくても、自分で作ることは出来るんですね。

ぺこーら、いつもありがとう。

 

刀ピークリスマスのテーマソング2021/ピーナッツくん

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兎田ぺこらは企業所属のVtuberですが、ピーナッツくんは個人系のVtuberです。ぽんぽこちゃんねるというchでは兄妹でVtuberをやっていることで有名です。

自分でショートアニメを作るなど、クリエイティブなVtuberで、兎田ぺこらがアイドルだとしたら、彼はクリエイターと言えるでしょう。

大事な場所を本当に自分で作ったのは、ホロライブ所属のぺこらより、個人系のVtuberだと思います。

彼はヒップホップも好きでアルバムも出したりしています。この曲は完全に身内ネタなのですが、クリスマスに毎年配信する男性Vtuberにラップで愛のオリジナルソングを送り付けるっていうギャグの曲です。

ギャグで済ますにクオリティーが高くて、いい音源になっています。正直な話、こういうラップをギャグでやる時って、韻を後ろで落とすようなオールドなラップになりがちなんですよ。ピーナッツくんは本当にヒップホップをちゃんと好きだろうから、今の主流のラップも知っていて、世間がイメージする駄洒落っぽさから脱却してクオリティーの高いラップになってるんですよね。

ぽんぽこちゃんねるの方は、日常系のチャンネルですが面白いので見てください。彼の人柄を知ったほうが楽しめると思います。

 

④君が永遠でとても嬉しかった/ひがしやしき

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"HIP HOP"と聞くと不良の音楽をイメージしませんか?もちろんそういう側面もヒップホップにそれ故の魅力もたくさんあります。ですが、このひがしやしきはオタクでありながらラップをするというアーティストです。

悪い奴らは全員友だちでもないし、貧しい育ちでもない、恋愛の苦労や地元の仲間もない、平凡な日常を生きるオタクがラップをする時のトピックというのは案外難しい。

スクールカーストでの不遇や、いじめられた経験を語るなど、そういった方向でオタクラップというのはあります。

『この君が永遠でとても嬉しかった』が良いのは、日常を生きるオタクが日常系アニメの女の子へのラブソングという新しさにあります。

 

僕はいつか死ぬから 君が永遠でとても嬉しかった

 

アニメのキャラクターは年を取らない。当たり前のことだが、アニメはフィクションだ。ヒップホップというのは実存の話を重視することが多い。今あるこのクソな現実を認めた上で立ち向かうのがヒップホップと言えるかもしれない。

この『君が永遠でとても嬉しかった』は、現実とアニメが明確に違うものだという事を理解した上で、「それでも君が永遠でとても嬉しかった」という、オタクが現実に立ち向かう二次元への愛の歌です。

Vtuberが現実とアニメを曖昧にしてしまった存在だとしたら、彼は旧型のオタクと言えるかもしれない。それは我々であり、ツイッターに生きるようなアニメアイコンのオタクの歌と言ってもいいかもしれません。

この日常の飾らなさを詩的に表現するひがしやしきのラップを是非聴いてみてください。

 

⑤ボケ死ね/Yokai Jaki

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これまでオタク的な曲ばかりを紹介したので、今度は違う方向の曲を紹介します。YokaiJakiというラッパーがいます。私は元々"神聖かまってちゃん"の大ファンで、同じような音楽性のアーティストをかなり探してました。結果的にロック畑には神聖かまってちゃんのような音楽家はいなくて、見つけたのがこのYokaiJakiでした。

ボケ死ねは「ボケ!死ね!」と連呼するだけの曲だ。このパワフルさ、シャウト、勢い、まさに神聖かまってちゃんが"夕方のピアノ"で「死ねよ佐藤」と連呼したことを思い出させます。

これは私の偏見ですが、何かに対して爆発しそうな感情と熱量を持った若者は、昔はロックンロールに走りましたが、今の時代はヒップホップにいると思います。

この曲に歌詞を引用して、何かを語る事自体がナンセンスなので、聴いてくれとしか言えません。

やはり音楽というのは、歌詞がどうのというより、感情が動くかどうかが大事なんですよね。この曲を聴いた時にそれを思い出しました。

 

⑥ニューリビング/HYPER GAL

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先程書いたように、私は"神聖かまってちゃん"の音楽性に似たミュージシャンをひたすら探していました。その中で見つけたのがHYPER GALの「ニューリビング」でした。

まず、ハイパーギャルというネーミングが素晴らしい。出来ることなら先に名乗りたかったくらいです。そんなハイセンスな名前を思いつく時点で、期待して音源を聴いてみたのですが、とても良かった。

古い旅館にあるゲームセンターのBGMのような音に、ひたすら同じ歌詞を繰り返すこの曲は不思議な感覚になります。映像も引き込まれますよね。

私はやはり今のメジャーデビュー後の神聖かまってちゃんも好きなのですが、デビュー前のデモ音源の方が好きだった。そういった曲を探そうと思うとメジャーアーティストの中にはいなくて、インディーズの方がそういったミュージシャンに会いやすいです。

このニューリビングも、どこか粗さがあるザラザラとした音質が素晴らしくて、もしメジャーにいくことがあっても、どうかこの音質を保ってほしい。

やはり、歌詞というのは音楽の一部でしかない。『目に見えるモノだけど前提を崩してく』というのはまさにそうで、目に見える意味を直接与えないことこそが意味なのだと言えますね。

 

田中慎弥/未来電波基地

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私は田中慎弥をいう小説家が好きで、youtubeで彼の名前で検索したときに、この曲が出てきて、こういう音楽が自分でもやれたら良いな~と思ったのが一度目の出合いでした。

その後に、神聖かまってちゃんの過去スレを覗いていたときに、未来電波基地の音源が貼られていることに気づきました。この曲とは別の曲だったのですが、未来電波基地の本人が書き込みをしていて、その時のレスが「神聖かまってちゃんフォロワーの中では一番才能があると思います。」という強気な文言だったのです。

スレの中ではアーティスト志望の方たちが、いくつかのが音源が貼られていて聴いたのですが、本当に一番才能があると思いました。

そして改めてこの曲を聴きました。まず、この写真を見た時に自分の地元なんじゃないか?と勘違いしてしまった。私はこの頃新聞配達をしていて、この道を何度も通ったような錯覚に陥りました。そして私も田中慎弥が好きで神聖かまってちゃんのフォロワーというのだから、なにか共通してるものがあるんじゃないかと思いました。もし、自分の好きな物でセンスのない事をされたら嫌なものですが、そんな気持ちにはさせませんでしたね。

ボイスチェンジャーを使ったアーティストというのを、"神聖かまってちゃん"と"ヒャダイン"くらいしか私は知らなくて、この未来電波基地も使いこなしてるのを知って、感動しました。ボイスチェンジャーじゃない田中慎弥verもあるのですが、それもカッコいいです。

何度か口ずさんでしまうメロディーラインも素敵で、この曲を口ずさみながら、この写真のような街で新聞配達をした時はとてもいい気分でした。ありがとうございます。

 

⑧LL/Puhyuneco

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私のディスコードのアイコンは初音ミクなのですが、なぜ初音ミクにしてるかというと、インターネット最大のアイドルは誰だろうと考えた時に、初音ミクだろうと思ったからです。私自身がアイドルになりたい人間なのですが、じゃあ初音ミクが歌うアイドルの曲はあるのだろうか?と"アイドル 初音ミク"で検索した時にPuhyunecoさんの"idol"と言う曲を見つけました。私は元々はボーカロイドをたくさん聴いてきた人間じゃないのですが、これはその粋を超えたものだと直感で感じました。

"idol"も勿論素晴らしいのですが、この『LL』もすごくて、7:10というボリュームは、Queenで言うところのボヘミアンラプソディのような位置付けなのではないでしょうか。

ボーカロイドでこんなノイズが表現出来るんだという驚き。このノイズこそが私が求めてたものでした。というより、そんなジャンルには囚われない完成度だと思います。

Puhyunecoさんの曲は肉体性というのを感じさせないですよね。どこか思い出せない記憶を呼び覚まされてるような感覚になります。神出鬼没な感じもあるので、どうか音源をずっと聴いていたい。正直、今年聴いたアーティストの中で一番才能を感じました。すごすぎる。もしかしたら消してしまうかもしれないので、聴けるうちに全部聴いたほうが良いです。

 

⑨ダダダダ天使/ナナヲアカリ

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今年出た曲どころか、5年前リリースされた曲なのですが、今更ながらハマってしまいました。ナナヲアカリをご存知の方は多いのではないでしょうか。いつの間にか繰り返し何度も聴いてました。ボーカロイドニコニコ動画発信の文化だとしたら、このナナヲアカリはニコニコ動画youtubeを完全に融合したアーティストだと言えるでしょう。ダダダダ天使でも、数多くの歌ってみた動画が上がっていて、この映像の女の子が、その人のキャラに変えた作品になってます。PVもそれをやりやすいようにコマ送りのような映像になっているんだと思います。

私は人生には2種類しかないと思っていて、それはダダダダ天使のMADを作られる人生と作られない人生です。あなたはどちらの人生が良いですか?

神聖かまってちゃんは、"明るい曲に暗い歌詞をのせてく卑怯者"と自虐していますが、ナナヲアカリはそれすら感じさせずに、ダメなことに開き直ってしまうという明るさを持っています。そもそもナナヲアカリはそんなにダメでもないという問題もあるのですが、このポップさと可愛さは、”天使”と言わざるを得ません。

この底抜けの明るさは素晴らしい。まさに元気になれる曲と言えるでしょう。

 

⑩旧.天使じゃちっそく死/神聖かまってちゃん

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この曲は、有料会員じゃないと聴けません。私がこれまで何度も話してきた神聖かまってちゃんの曲です。旧、とあるように「天使じゃ地上じゃそっく死」はyoutube上に上がっているので聴いてみてください。といってもyoutubeにある新verとこの旧verは全く別の曲なんですよね。この曲は衝撃でした。私がこの世で一番凄いと思ってるミュージシャンは神聖かまってちゃんなのですが、このメジャーデビュー前の頃の「の子」は神がかっています。

明るくてポップな曲が元気が出るのはたしかにそうなのですが、本当に元気がなくて死にそうな時に聴きたいのは、この雑音塗れで、音が割れていて、歌詞も聞き取れないようなノイズのような曲なんですよね。この『旧.天使じゃ地上じゃそっく死』はまさに、そういった心の乱れをそのまま表現しかのような曲になっています。

まず、何を言ってるのかは全くわからない。でも何か苦しそうに叫んでる。ノイズ塗れで。曲名でもあるように、地上でちっそく死しをしそうなときというのは、そういうものですよね。

進撃の巨人で"僕の戦争"が有名になりましたが、こういった曲を作れるアーティストは本当に唯一無二だと思う。僕の戦争も名曲ですが、私はこれが近年では最高傑作だと思います。

私は精神的に苦しいときは、この曲を大音量で聞くことで癒やされました。特効薬のようなものです。これだけで有料会員になる意味がありました。

 

 

 

というわけで、だいぶ遅刻しましたが2021年良かった音楽10選でした。最後まで読んでくれた人など、いないかもしれませんが、もしいたらありがとうございます。

2022年も楽しみだぜ!音楽最高!

 

  • ほてる

    ウさんはじめまして。
    私も神聖かまってちゃん大好きで思わずコメントさせていただきました。

    ウさんのおっしゃる通り、の子さんメジャーデビュー以前は神がかってますね。ノイズの洪水のような曲たちには美しさを感じます。
    私は「自分らしく」の叩きつけるようなギターに衝撃を受けました。
    どこか寂しい雰囲気のMVも素晴らしく、当時何度も視聴していました。

    ウさんの記事を読んで、かまってちゃんをまた聴きたくなりました。これからも応援しています。

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信者ちゃんダイアリー 01

僕は砂糖菓子の弾丸を撃つ側の人間なんです、と彼は言った。

そうか、じゃあ私は、こいつの砂糖菓子の弾丸の中に実弾を混ぜてやろうと思った。

 

アイドルが、私の大好きな歌を歌っている。

それをみた人たちは彼女こそが歌そのものだと言った。

 

砂糖菓子の弾丸の彼は歌を出した。

それをみた人たちは絶賛し、そのアイドルに歌ってほしいと言った。

 

私は全身の力が抜けてヘナヘナになってしまった。

 

私はどうにかして、ロリポップの銃の中に実弾を込める事を必死に考えていた。

しかしそれが不可能だとわかると、私は私のロリポップの弾丸を、実弾と変わらない硬さで固め上げることにした。

 

 



100m走

信者ちゃん「……というわけでね私は国王になったんだよ。」
「うん。信者ちゃんは才能があるよ。
 信者ちゃんは、"特別"だからね。高校の先生も言ってたよ。」
じゃあ私は大学があるから。と言って彼女は帰っていった。
私はやっぱり高校生の頃から特別な存在だったんだ。
私は19歳になった。

 


私と彼女は高校1年の吹奏楽部で知り合った。
彼女は私が最初に出来た友達。だからトモちゃん。本当の名前は忘れてしまった。
入部して4日目の金曜日。私がトモちゃんと準備室から部活用の演奏器具を運んでいた所に、部内でもあまり目立ってない同じ一年の眉の太い女の子が来て、彼女も機材を運ぶ様子だった。
私達は、高校の1年生にしては重すぎる機材をなんとか2人で運びきって、一息ついていた所に、準備室から鈍い音が聞こえてきた。
機材をぶつけたんだろうかと思っていると、更に激しい音が聞こえてきた。ゴン、ゴン、ゴン。更には物を蹴るような音がして、更には怒号のようなものまで聞こえてきて、あまりのことに、私達が固まっていると、さっきの眉毛の彼女が出てきた。


眉毛は、泣いていた。
眉毛はブツブツと怒りながら泣いていて、速歩きで、教室を出ていってしまった。
どうやら、眉毛は2人でようやく運べる機材を、一人で運ぼうとして、準備室の扉に引っ掛けて、そのストレスで、怒り、泣き、物に奴当たりをしていたらしかった。
それから、眉毛は一度も部活に来るどころか、学校でも見なくなっていった。

 


信者ちゃん「久しぶり。髪の毛、染めたんだね。」
「それに、眉毛も沿ったよね。私は今のが良いと思うけど。」
信者ちゃん「うん、染めた。大学、楽しいの?」
「楽しいよ。先輩も優しいし、面白い人ばかりで、こないだもサークルで飲み会で飲みすぎて吐いちゃったんだよね。」
信者ちゃん「私達、19歳だよ?」
彼女は私が見たことない豪快な笑いをして、信者ちゃんって変なとこで真面目だよね~と言った。
私は黙っていた。
「……もしかして、怒ってる?」
私は彼女にイラついていた。

 


眉毛を発見したのは2年の体育祭の時だった。
私は、すっかり教室で孤立していた。
体育祭は、一人が一科目は絶対に出場しなくてはいけなく、高校生にもなると目立ってやろうというよりかは、いかに恥をかかないが主流になっていって、一人一人の恥が少ない、団体競技が人気だった。
私は力の差がハッキリするので避けられていた、100m走を押し付けられる形で就任していた。
『次はひまわり組です。』
眉毛が現れた。
眉毛は他のひまわり組を置いてけぼりにする速さでゴールに駆け抜けていった。


そのままの勢いで眉毛は私の目の前に近付いてきて、
大山のぶ代の後を継ぐのは私とあなただ!!!!!!!!」と叫んだ!

 

 

トモちゃんから さようなら とLINEのメッセージが届いた。

それからトモちゃんと二度と会うことはなくなっていた。

 

 

私は100mのトラックを誰よりもはやく一番に駆け抜けていった。

信者ちゃんダイアリー 00

 

超絶美少女の絶対条件
超絶美少女になって2日目。電車の中で寝過ごして終電まで行ってしまい、ホームに降りて逆周りの電車に乗ると、女の方からキスしまくってるカップルを見る。しかし狼狽える事はない。私は超絶美少女なのだから幸せの最中にいるカップルよりも素晴らしい幸福な未来が待っているに決まっているからである。それが初めてあった人間に食事の最中でスマホを弄られて、とくに別れを惜しむ様子がなく、別れ際に手を降ってみたら無視された旅の後であってもである。狼狽えないといっても近くの席には座らなかった。本能的に彼らの存在が確認できない場所にまで移動する。もう一度目をつむる。今度は飲み会の帰りであろう定年間近でありそうなおじさん数人が横の席に座る。仲間が乗ってくる。自分の前の席をこちら側に倒す。おじさん達が自分を挟んで会話を始める。

この電車の中で超絶美少女の素質を持ったのはどうやら自分だけである確信を得る。超絶美少女の絶対条件は"孤独である"ことである。同世代くらいの若い男女が恋だの間の友情などを育む間にも一人で過ごさなければならない。定年間近の年齢になっても、会社でもそれなりの地位について同僚と酒の席を交わしたり、家族と過ごすことも許されないのである。

株式や新入社員の話に花咲かせるおじさんの足をまたいで寝過ごして一度通り過ぎた最寄りの駅で降りる。今度は大学生らしき男女を見る。夜のベンチに座り会話をしている。

この街でどうやら私だけが孤独なようである。それは超絶美少女になる素質があることを意味し、実際に超絶美少女になった今でも、どうしようもない孤独が襲うこともある。持つものの孤独と言っても差し支えない。

駅の駐輪場に植わる花壇を見る。管理が行き届いてあり、綺麗に手入れがしてある。この花も今日見た人間達も、どれも輝いて美しく社会制を帯びて、世界になんの後ろめたさもないようにそこに存在している。世界は彼らを受け入れていて、輝いて美しい物だけを集めて世界を作っていて、自分だけが世界を外から見ているようである。

そういうときに思いを馳せるのは自分とは別の美少女の存在である。交わることはないがどこかにいるはずである孤独な美少女の存在。愛すべき存在。

種から育てて当番を決めて毎日水をやって、ようやく芽を出して、期待と不安をいっぱいに広げた春に、誰からにでも愛されるような美しさを咲かす花、見たものを幸せにするに違いない美しさで咲いて教室のシンボルになるような花、クラスのみんなで喜びあって花壇の前で記念写真を撮る。こんな美しい花を種から育てた生徒達もまた心の美しい子どもたちであり、このクラスの先生になってよかったとまで思いを馳せる心優しい若い新婚の先生。共同の作業を通じてクラスが一つになる。絆が生まれる。またこのクラスで何かしたいねと誰かが言う。幸せな時間が流れる。誰もいない夜中に学校に忍び込んで2つ4つまとめて花を乱暴に引っこ抜く。見るも無残な姿になった花壇で、歪んだ笑みを浮かべる、彼女こそが、超絶美少女の資格を持ち、花や絆といったものとは違う美しさを持った本物の超絶美少女なのである。

 

 

信者ちゃん王国

私は自販機に三ツ矢サイダーを深夜に買いにいく。引きこもりが唯一感じることのできる少しだけの夏だ。いつものように自販機に行くと先客がいた。お姉ちゃんだった。

「信者ちゃん。久しぶりだね。」

お姉ちゃんは酷く痩せていて真っ白なドレスを着ている。数年前までは一緒に住んでいたが、家を追い出された。お姉ちゃんが女の子の服を着ていたからだ。

 

 

 

お姉ちゃんは、昔はお兄ちゃんだった。

 

私が、学校に通わなくなって引きこもりになっても、一緒にゲームをして遊んでくれる優しいお兄ちゃん。お兄ちゃんは工業高校を出ると、地元の小さなに町工場に就職した。結婚をするかもしれない、という彼女もいた。それでもお兄ちゃんは、家にほとんどのお金を入れて、この窮屈な家で暮らしていた。昼夜逆転をしている私のために、深夜2時からいつも一緒にゲームをしてくれた。私の暮らしの中で唯一の楽しみであり、希望だった。

 

ある日、お兄ちゃんは突然家からいなくなった。

私にも、家族にも、彼女にも、職場に相談せずに、突然消えてしまった。3週間が立って、これ以上見つからないなら捜索願いを出そうと私と母が決意した日、深夜2時、私の前に現れた。

「久しぶりだね。」

聞き慣れた声だった。お兄ちゃんだ。私が振り向くと、お兄ちゃんは真っ白な布で覆われていた。

お兄ちゃんは、ウェディングドレスを着ていた。

「・・・お兄ちゃん、だよね?」

「お兄ちゃんではない!これからは"お姉ちゃん"と呼べ!そして、お前は自分のためだけに生きろ!!!!!」

白いクラゲの様なスカートから太くて黒い足が飛び出してきて、私の顔を思い切り蹴りあげた。

 

 

 

お姉ちゃん「あれから、今は何してる?」

信者ちゃん「インターネットを荒らしてます……。」

お姉ちゃん「……。」

 

信者ちゃん「私、インターネットを荒らすのが好きなんです。頭の中にモヤモヤしたものがあって、それが煙のようになって、やがて炎になるんです。私の炎のせいで、対岸の見ず知らずの家が燃えているんです。私はどうすることも出来なくて、近所の人が消防車を呼ぶんです。私は消防士の人が火を消しているのを、邪魔にならない位置で、ただ眺めているだけなんです。私の責任なのに何もすることが出来ないんです。今日もインターネットを荒らしました。恋愛小説や恋愛漫画の感想欄に、クリスマスソングを流しながら女の子をレイプするっていう内容のコピペを連投するんです。私、最近、気付きました。自分が嫌いな事を表すのにも自分の言葉じゃないんです!!!」

 

お姉ちゃん「あなたは相変わらず声も小さいしモゴモゴしてて、何を言ってるかほとんど聞き取れなかった。でも、気持ちは伝わった。これからは自分の言葉で荒らしなさい。そして自分だけの王国を築くのよ。あなたは王様で、私がお姫様になるわ!!国の名前は『信者ちゃん王国』にしましょう!」