きっかけを考えると、亡き父からもらった唯一の贈り物である髪飾りを川に落としてしまって、それを栄一さんがわざわざ川に入って探してくれたところだと思います。「千代は俺が守る」というプロポーズのような言葉まで言われて、恋心という自覚はなかったにしても、千代はものすごくうれしかっただろうと想像しました。
また、村のお祭りがなくなってしまったときに手作りのお祭りを開催するような(第2回放送)、人のために積極的に何かをしている栄一さんを、千代は日常生活でたくさん見てきました。きっと、幼いころからそんな栄一さんのことが大好きだったのではないかと思います。
周りの人の幸せのために行動できる優しさや、生命力、愛情深いところ。そして快活で、一緒にいるだけで笑顔にしてくれるところに惹(ひ)かれていると思います。千代も小さいころからずっと周りの人のために生きてきた人だから、栄一さんは自分と同じ気持ちを持っている人であり、尊敬できる人。自分より少し先を歩くお兄ちゃんのような存在への尊敬みたいなものがあり、それが恋愛感情にも、人としての愛情にもつながっていると感じます。
喜作さんの心根も伝わってくるし、でも栄一さんとの幸せを選びたいという千代の気持ちもあるし、複雑でした。現代は好きな人と一緒になることが一般的になってきたけれど、昔はそれがぜいたくというか貴重というか…女性が思いや意見をなかなか主張できない時代なので、自分の気持ちをまっすぐに伝えられないもどかしさがありますよね。喜作さんへの胸の痛み1割、うれしさ9割という感じでした。「取り合いなんて、少女漫画のヒロインみたい」とむず痒(がゆ)い気持ちになりました(笑)。
私は取り合いされるヒロインのような役は初めてですが、このあとも少女漫画のような世の女子たちが悶絶(もんぜつ)するであろうシーンが出てきます。そのシーンの千代もすごくかわいくて、自分で演じながら心の中で悶絶しちゃいました。楽しみにしていてほしいです。
尾高家から渋沢家にお嫁にいくシーンの撮影は、村の人たちから「おめでとう」と言われ、恥ずかしかったことを鮮明に覚えています。オープンセットの中を母と手をつないで家族と共に歩き、渋沢家に着いたら栄一さんのお母さまへバトンのように自分の手を受け渡され、今まで育ててきてくれた家族に一礼する。この流れすべてにグッとくるものがありました。
特に田辺誠一さん演じる惇忠さんは千代にとってお父さんみたいな存在なので、兄さまの顔を見たときに、“嫁ぐ”ということを強く実感して感慨深い気持ちになりました。
最初に吉沢さんの演技を見て驚いたことは、声の振り幅の広さです。裏返ったり、低い声を出したり、ひとつのセリフの中ですごく抑揚があったので。吉沢さんの声の表現によって栄一さんの快活さやあふれる生命力を感じて、すごいなと思いました。
また、顔の表情もすごく豊かですよね。一瞬ごとに目つきや表情がコロコロ変わる。吉沢さんのお顔を見てお芝居するのが楽しいですし、つられて思わず元気になる引力みたいなものも感じています。
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