特集

Interview
尾高長七郎役・満島真之介さんインタビュー「この作品がこれからの自分の人生を大きく動かしていくことになる」
“同志”のような人たちができる現場は初めてかもしれない
Q:撮影が始まり数か月がたちましたが、今どのように感じていますか。

主役が今最も美しく力強い吉沢亮くんと聞き、さらに、幕府目線ではなく、村で暮らす農家の人々を中心に始まっていくお話だったので、今までの幕末物語とは違うものになるという期待が強くありました。だからこそ、今自分の持つ全てを力に変えて演じたいと思い、覚悟を持って長七郎を生きています。
時代が大きく変わり始め、不安と希望が入り交じった今を我々は生きています。幕末もそういう時代だったのだなと改めて考えさせられ続ける毎日です。渋沢栄一さんの生き方には、これから僕らが新しい時代を作っていくためのヒントがたくさんあるように感じます。

同年代の吉沢くんや高良(健吾)さんと役の少年時代から一緒に演じられたことで、ただ長く共演したということだけでは作れない特別な空気感が生まれているのを心から感じています。こんな “同志”のような人たちができる現場は初めてかもしれないです。実は『青天を衝け』のお話をいただいたときから、自分のターニングポイントになる作品だと思っていました。この経験によって、人間的にも成長し、自分の人生が新たに大きく動いていく気がしているんです。

黒崎監督が一番の志士です(笑)
Q:栄一たちの横浜外国人居留地の焼き討ち計画を長七郎が止めるシーンは、どのように作り上げたのでしょうか。

あのシーンは、リハーサルの日からすごい熱量でした。剣を振るって戦うわけではないけれど、昔からの仲間たちと命の削り合いをしなくてはいけないシーンです。目の前にいる彼らの心を深く感じ、魂の宿った目を見つめて思い切りぶつけていくしかない。小細工は通用しないと思いました。「ここで涙を流す」と台本上のリズムに乗っかれるように探ってはいたのですが、彼らといざ向かい合って芝居をしたとき、台本を読み込むだけでは到底たどりつけなかった心の奥底から湧き上がる感情でいっぱいになっていたんです。その感情に素直に乗っかっていると、何度やっても自然と涙があふれてきました。

---本番後には自然と拍手が起こっていましたね。

本番中は、カメラマンさんも音声さんも照明さんも、スタッフ全員が集中してそこに起きている瞬間をしっかり捉えてやるという熱が伝わってきていました。みんな緊張していたと思います。現場にいる全員が同志のように心をつなぎ合わせたシーンになったので、本番直後のあの拍手は、みんなの力がひとつになった奇跡のような時間を共有できたという喜びの拍手だったと思います。
その全てを見守ってくれているのは、演出の黒崎監督。監督の持つ人間性がこのチームをひとつにしてくれているんです。監督は本番中、スタジオの隣の副調整室にいるはずなのに、その表情が想像できるんですよ。インカムからもれてくる「カーット!オッケーイ!」の声で、みんなの緊張の糸がホッとゆるんで、喜びに満ちあふれるんです。凛(りん)として現場を指揮する姿にほれてしまいそうなほど、芯の通った生き方をされているんだと思います。そんな姿を見ていると、監督が一番志士のようですよ(笑)。あのシーンのMVPはスタッフのみなさんと見守ってくれた黒崎監督だと思っています。

これからの長七郎はしびれる展開になっていきます
Q:演出とはどのような相談をされますか。

すごく感銘を受けた『火の魚』(NHK広島発ドラマ)という作品で演出の黒崎さんのお名前を知り、そのときから、いつかご一緒したいと強く思っていたんです。黒崎さんは人をよく見ておられていて、言葉をかけたほうがいいときと、何も言わずに見守るときのバランスが絶妙なんです。第12回の横浜焼き討ち計画を止めるシーンでいうと、僕の芝居については全く何もおっしゃらず、動きが不自然にならないように立ち位置を相談したくらいでしたね。あのとき僕にだけ一言も声をかけなかった。でも、「ちゃんと見ていますよ。大丈夫ですよ」と、言葉ではなく、目を見れば伝わってくる安心感が僕の背中を押してくれました。その強く優しいまなざしのおかげで乗り越えることができたんです。とても感謝しています。そこにたたずんでいるだけで安心を与えてくれる大きな存在感は、やっぱり誰よりも志士のようです(笑)。

これからの長七郎はなかなかしびれる展開になっていきます。一つの出来事、出会い、環境。人生とは瞬間瞬間の選択によって形成されていきます。長七郎と栄一と喜作、いつも一緒だった3人がたどる人生の変化は、このドラマを見る方々にとっても、いろいろと考えさせられるものになるはずです。自分と照らし合わせてみたり、会えなくなってしまった誰かを思い出してみたり、自分を内観したり…今につながるこの物語が、これからを生きていくみなさんの力になっていくことを心から願っています。ぜひ今後の長七郎にも注目してください。

Back number

インタビュー

  • ドラマ週間番組表
  • ドラマブログ
  • NHK_PR ドラマ担当
  • NHKオンデマンド