いつかは大河ドラマに挑戦してみたいという思いがあったので、お話をいただいたときはうれしかったです。実在の人物を演じることに責任を感じましたし、「自分にできるのか」という不安もありました。ただ、本物の家茂についてどんな人であったのかを知っている人はいないと思うので、『青天を衝け』の家茂は自分が作っていくしかないと、書籍や情報を一とおり調べて勉強しました。
『青天を衝け』には『ひよっこ』(連続テレビ小説 第96作)でお世話になったスタッフさんがたくさんいました。『ひよっこ』は僕のなかで本当に大切な作品なので、またご一緒できることもとても楽しみでした。すでにチームワークができている『青天を衝け』の現場に入ることに緊張もあったのですが、知っている方たちのおかげで、硬くなりすぎずにいられた気がします。
その時代の所作が全くわからなかったので、クランクインの前に将軍としての姿勢や手の動き、歩き方などを所作指導の先生に教えていただいてから撮影に臨みました。現場でもそのつどわからないことを先生に聞きながら、家茂を作り上げていった気がします。僕が一番難しいと感じたのは畳のへりを踏まないで歩くということ。歩幅を合わせなくてはいけないし、でも、合わせようと思うとわざとらしく見えてしまう。本番前に何度も練習するんですけど、ほんの少し踏んでしまったりするんです。「将軍になったらそこまで気にしなくていいよ」と先生はおっしゃってくださったのですが、僕はこだわりだしたらちゃんとやらないと気がすまない性格で…(笑)。
最初は所作=制限と考えてしまい、日常の動きがうまくできなくて難しかったですね。最終的にわかったことは、そのときの家茂の感情のまま堂々と歩けば、絶対にへりを踏まずに歩けるということ。自分がいまどのような立場でどのような感情なのかをきちんと演じながら将軍の椅子まで歩くと、不思議と踏まない。所作といっても気持ちなのだと、新しい発見ができました。
監督からは優しい将軍であってほしいということと、和宮様とのシーンで二人が愛し合っているところをきちんと見せたいというお話がありました。家茂は13歳の若さで将軍になり、21歳で亡くなってしまいますが、若いながらも一生懸命幕末という時代を背負っていたのだと思います。演じていて、家茂は苦しかっただろうなと感じることもありました。さまざまな意見に対して真摯(しんし)に向き合う、心の豊かな人で、気遣いができる将軍だと感じましたし、そして、和宮様を思い、愛し合っていた。どんな人にも寄り添える優しい将軍が表現できたらいいなと思いながら演じていました。
岸谷五朗さんが演じる井伊直弼とのシーン。家茂が「水戸の人間が命を狙っているため大老の職を退いてはどうか」と井伊に伝える場面です(第9回)。岸谷さんと向き合って、ずっと見つめ合いながら演技をしていたのですが、岸谷さんの目の奥が悲しんでいるように感じたんです。そして、その場に二人しかいないような感覚になり…。気づいたらカットがかかっていました。この不思議な体験が、とても印象に残っています。
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