初期費用が“100万円”なのに平均的なオーナー年収は“1600万円”…「ワークマン」フランチャイズ経営者の懐事情を解き明かす
文春オンライン / 2022年1月12日 6時0分
写真はイメージです ©iStock.com
「ブラックですか? う~ん…」フランチャイズオーナー歴約30年の男性(56)が明かす“ワークマン”経営のリアル から続く
フランチャイズ店舗経営は「ブラック」視されることも少なくない。しかし、作業服メーカーのワークマンでは、ノルマ無し、閉店5分後に退勤、家族と過ごしながら年収1000万円といった「ホワイト」なフランチャイズ経営が可能なのだという。どのようにして、そのような仕組みを構築できたのだろうか。
ここでは同社の専務を務める土屋哲雄氏の新著『 ホワイトフランチャイズ ワークマンのノルマ・残業なしでも年収1000万円以上稼がせる仕組み 』(KADOKAWA)の一部を抜粋。フランチャイズ店舗立ち上げに必要な初期費用や、オーナーが得られる収入について紹介する。(全2回の2回目/ 前編 を読む)
◆◆◆
初期費用に200万円、年収は1600万円 コンビニより加盟しやすい設定
加盟店になるにはどのくらいの資金が必要となり、その後はどのくらいの収入を得られるものなのか?
実際に加盟店にエントリーしようかと悩んでいる人はもちろん、そうではなくても経営に興味がある人には気になるはずの部分について解説しておきたい。
パンフレット的な内容にはならないようにしたいところだが、現実にオブラートをかけないためにも数字が並んでしまうのはご容赦いただきたい。
フランチャイズ契約(Aタイプ3年契約)で最初に必要になるのは、支援制度などを適用していない基本設定として、「加盟金」の37.5万円(税込41.25万円)、「開店手数料」の50万円(税込55万円)、「研修費」の25万円(税込27.5万円)。
ここに契約満了時に返還される「保証金」の100万円を入れて合計212.5万円(税込223.75万円)となる。
一部のコンビニチェーンでは加盟金が引き下げられて、100万円から200万円ほどの資金で加盟できるようにもなっているが、その後にかかるコストなどを考えるなら、ワークマンの初期資金は決して高くはないはずだ。
応募してきた人たちに聞くと、「コンビニなどに比べて初期資金が少なく済むのでワークマンを選んだ」、「他のフランチャイズはあまり検討しなかった」という人も多い。
新規加盟した場合、収入のない最初の1か月の生活費なども含めれば300万円から350万円ほどのお金を用意しておくべきだと考えておいてほしい。
自己資金の少ない若手を支援する制度
それまでにも仕事をしていた40代、50代の人なら難しい金額ではないかもしれないが、20代、30代の人なら簡単に用意できる額だとはいいにくい。そこで、2020年3月からは、若い人でも加盟しやすくするために「ヤング加盟店支援制度」を導入している。
この制度は、加盟時点で40歳未満の人を対象としたものだ。加盟金、開店手数料、研修費については低金利での融資を受けられるようにしている。この融資を利用した場合には、自分で用意する必要があるのは保証金の100万円のみとなる。制度の導入以来1年間で16件の利用があったのだから、いかにニーズが大きかったかがわかる。
この制度は、加盟店推進部の部長である八田博史の提案からつくられたものだ。沖縄県の若い夫婦が資金づくりに困っているのを見て制度の必要性を感じたというから、いかにも人情派の八田部長らしい。
新店オープン店舗でのスタートを応援
また、それより早く2018年11月からは「オープンスタート支援制度」も導入している。既存店の引き継ぎではなく、新規オープンの店舗に加盟した場合、必要となる経費から50万円が減額されるというものだ。この制度が適用された場合は、最初に必要となる額は保証金を入れて162.5万円(税込178.75万円)になる。加盟店になろうとする場合、新規オープンの店舗を選びたがるのではないかと思われるかもしれないが、既存店のほうが売上げ額が見込みやすいメリットがある。その安心感が意外と大きい。
以前のワークマンでは、新店の開店時には直営として運営し、軌道にのってから加盟店にしていく方法をとる場合が多かった。しかし、それでは新店を出すたび直営店が増えていくので、立ち上げと同時に加盟店にするケースを増やしたかった。そういう事情もあって導入された制度である。
もっとも、最近の新店は最初から売上げが高く、大きな収入も見込めるため、開店時から加盟するメリットは十分あるといえる。
オープンスタート支援制度はヤング加盟店支援制度との併用もできる。その場合、融資を受ける額はさらに少なくて済む。
これらの制度ができたことによって、ずいぶん加盟はしやすくなったはずだ。
9日間で店長になれるサポート体制
店長になる前には必ず研修を受けてもらう。
まずは本部で3日間の座学を受講して、基礎的な部分を学ぶことから始める。そのうえで6日間の店舗研修を行う。短い期間ではあるが、教育部のトレーナーがつくのでおよそのノウハウは身につけられる。
どの店舗で研修を行うかはケースバイケースになる。たとえば、父親がやっていた店を継ぐかたちで店長になるのが決まっているなら、あえて別の店舗で研修を行うようにするのが通例だ。
一方、直営店として運営している店舗の店長になることが決まっているなら(店長が替わる際には一時的に直営店にしている場合もある)、実際に店長になるその店で研修を行うケースも多い。パートさんたちと顔をつなぐなど、店を引き継ぐ際の戸惑いを小さくできるからだ(パートさんの雇用を継続するかは自分の意思と相手の意思で決めることになる)。
研修が終わって店長になれば“その瞬間からすべてを自分ひとりでやっていかなければならないのか”という不安を持つ人もいるかもしれない。その点で心配しすぎる必要はない。最初のうちはSVがなるべく店を訪れるようにするなど、本部でも、できるだけのフォローをしていく。
収入は売上げの約1割
なによりも気になるのは収入と支出に関する点だろう。
わかりやすい目安でいえば、売上げの1割程度がオーナーの収入となる。
平均の年間売上げである1億6000万円であればおよそ1600万円の年収になるということだ。
経費や店舗スタッフへの賃金を差し引いたあとの収入と考えてもらっていい。
ただし、人件費にどれくらい出すかといった部分などでは差が出てくるので、1割程度が収入というのはあくまでおよその目安に過ぎない。
説明的な解説にならざるを得ないが、内訳についても簡単に記しておきたい。
年間売上げ1億8000万円の店舗で、店長の年収は約1200万円
ワークマンでは荒利分配方式をとっているので、売上げ額には関係なく、月々の荒利益額を一定比率で分け合うことになる。
加盟店が40%、本部が60%だ。
ひと月の売上げが1500万円だったとすれば、平均荒利率=36%から計算して荒利益額は540万円となる。
このうち40%の216万円が加盟店、60%の324万円が本部と分けられる。
この216万円から月々の経費である約29万円(内訳は営業経費の約22万円、棚卸ロス預託金2万円、在庫金利負担の約5万円)を引いた約187万円が分配金となる。
地代家賃や宣伝広告費、物流費などはすべて本部が全額負担している。
営業経費の約22万円とは、水道光熱費やビル管理費などの合計額だ。
棚卸ロス預託金とは、年2回の棚卸によって精算することになるロス金額を見越して、あらかじめ積み立てておくお金である。年間ロスは平均で15万~20万円ほど。月2万円×11回で22万円が積み立てられているので、それよりロスが小さければ差額は返金され、ロスが大きければ差額が請求される。
また、「店内在庫」はすべて店長が買い取り、契約を終えるときには逆にワークマンが買い取る方式をとっている。
在庫の原価は2240万円ほどになるので、加盟時に一括でこの金額を払える人はあまりいない。そこで本部から買取り金を借り受け、毎月、利子(年間2.5%の金利)を支払っていくことになる。これが在庫金利負担の5万円である。
金利を払っているだけでは借入金は減らせないので、毎月の分配金から10%返済していくのが基本となる(一括返済なども可能)。分配金から10%を返済していく場合、1500万円を売上げて分配金が187万円になったときには18.7万円を在庫の返済金に充て(返済が済めばなくなる)、168.3万円が口座に振り込まれることになる。
人件費にどれだけ充てるかは店長の考え方次第だ。シミュレーションとしては、本部で推奨している売上げの4.5%(一般的に3.5~4.5%が多い)を人件費に充てるとして、1500万円×0.045で67.5万円。これを振り込まれた額から引けば、100.8万円となる。
このシミュレーションでいけば、月の売上げが平均1500万円で年間売上げが1億8000万円の店舗であれば、店長が手にできるのは月に約100万円で、年間で約1200万円になる。
売上げの1割には満たないが、契約満了時に戻ってくることになる店内在庫の買取り金を引いての数字である。これらのお金は収入から支払っていくものだと考えるなら、収入はおよそ1500万円ということになる。
この金額にさらに付け加えられる収入がある。
次に説明する褒賞金だ。
褒賞金だけで400万円を得ることも
「褒賞金制度」が充実しているのがワークマンの特徴といえる。
年間売上げが1億5000万円以上の店舗は「サクセス俱楽部」として年間20万~50万円、前年比で売上げが101%以上になれば「ステップ・アップ賞」として3万~150万円の褒賞金が設定されている。2019年下半期や2020年上半期などは全国の店舗の売上げが一斉に伸びたので、半期ごとに約5億円ものステップ・アップ賞が計上された。会社としてもその額には驚かされたほどだ。
この他にもさまざまなコンクールなどが用意されている。
より良いサービスを心がけてもらうための表彰が「顧客満足度(CS)向上」や「BSO(ベストストア・オペレーション)」などだ。現在は行っていないが、2020年にはコロナ対策をしっかりしていた店舗に褒賞金を出したようにイレギュラーに設定される表彰もある。褒賞金の出る表彰はどんどん増えているといっていい。
フランチャイズ加盟店にとにかく優しい会社
これらの褒賞金は店長たちのモチベーションを高める役割も果たしている。賞金が得られるだけでなく、直接、社長から表彰される場を設けるようにもしている。現在は新型コロナウイルス感染対策として行っていないが、表彰の場に立つことを目標にしている店長も少なくなかったようだ。
売上げが前年比101%以上になっただけでも褒賞金が出るようにハードルは低めに設定されている(上昇率などによって褒賞金の額は変わってくる)。
“できるだけ褒賞金を取ってもらいたい”というのが会社側の考えだ。褒賞金制度は、店長たちの努力に報いるためのものであり、「加点主義」になっている。
こうした制度があるのもベイシアグループの企業文化といえる。加盟店を対象としたものに限らず、本部の社員とパートさんへの利益還元制度もあるくらいだ。
全国926店舗のほぼ全店がなんらかの褒賞金を得ており、その平均額は年間で約170万円となっている。褒賞金だけで405万円を得た人もいる。
見込み額にはなるものの、この170万円を年収に加えて考えることもできる。
八田部長などは「自分の会社ながらフランチャイズ加盟店にはとにかくやさしい会社だと思うので、いい点については世間にもっと知ってもらいたい」とも話しているほどだ。
※各種金額は2022年1月1日時点のもの。初期費用などについては2022年1月1日以降の加盟に対する条件であり、将来的な変更はあり得る。
【前編を読む】 「ブラックですか? う~ん…」フランチャイズオーナー歴約30年の男性(56)が明かす“ワークマン”経営のリアル
(土屋 哲雄)
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