華厳宗の法灯を継いだ古代朝鮮の新羅出身の義湘の功績が紹介され、印象に残ったので書き留めておきます。
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義湘(625-702)

義湘は、日本の華厳宗の中興の祖と言われる高山寺の明恵上人が特に重要視し、国宝「華厳宗祖師絵伝」で、明恵は自分を義湘になぞらえ、その足跡を絵巻で残しました。
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国宝 華厳宗祖師絵伝 巻二
善妙が義湘に恋心を打ちあける場面

義湘は、唐で二祖智儼に教えを受けますが、統一された新羅に呼びもどされ新羅に華厳宗を広めました。

私が、番組の中で最も興味をひかれたのは、義湘が書いた「華厳一乗法界図」です。
華厳一乗法海図

「法」を中心に、順にたどっていくことで仏教の真理に至ることができるのだという。
この詩を読み下すと、以下のとおりとなります。
  • 法性は円融して二相無し
    諸法は不動にして本来寂なり
    無名無相にして一切を絶す
    証智は所智にして余境に非ず
    真性は甚深にして微妙を極む
    自性を守らず縁に従って成ず
    一中一切多中一
    一は即ち一切多即ち一
    一微塵中に十方を含み
    一切の塵中も亦た是の如し
    無量なる遠劫は即ち一念
    一念は即ち是れ無量劫
    九世と十世互に相即す
    仍つて雑乱せず隔別成る
    初発心の時便ち正覚
    生死と涅槃常に共に和す
    理事冥然として分別無し
    十仏普賢大人の境
    能仁は海印三昧の中
    翻出如意にして不思議なり。
    宝の雨をふらし生を益して虚空に満つ
    衆生は器に随って利益を得
    此の故に行者本際に還れ
    いずくんぞ妄想を息めずんば必ず得ず
    無縁の善巧捉うること如意
    帰家分に随って資糧を得
    陀羅尼無尽の宝を以って
    法界の実宝殿を荘厳す
    実際中道の床に窮座して
    旧来不動なるを名づけて仏と為す
形式的には曼荼羅の様相も呈しているが、仏法の真理をこのような形で表現する義湘の才能は尋常なものではありません。

ほとんど廃れてしまった韓国の仏教ですが、この華厳一乗法界図(海印図)は現在でも実践に使われているそうです。
お寺の境内に大きな海印図を模った迷路を作り、人々がその道を歩くことによって功徳を積むことができるとされているのだそうです。
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義湘は韓国では、日本の弘法大師のような存在なのかもしれません。

本日もお読みいただきありがとうございました。