――藤岡さんにとって、世界を旅することの意味とはなんでしょうか?

:これは人類みんながそうですし、もちろん私もそうですが……我々は皆、自分で求めて、自分の力だけで生まれてきたわけではないですね。運命――天の采配があり、奇跡のような確率を経てこの世に生まれてきた、本当に幸運な存在です。私には「人間たちがそうした奇跡のもとで生まれてきたからには、誰もが何らかの使命を背負っているはずだ」という確信があるんです。ならば、生きてその使命を果たさなくてはいけない。
私は長年にわたり「自分の使命とは何だろう?」と煩悶してきました。自分は何のために存在し、何を為し、どこへ行くのだろうか……と。そこで、それを掴むためには多くの旅を経て、命懸けでサバイバルの経験を積むことが大事だと考えたんです。
そうした旅の中には幸福な旅もあれば、悲しみの旅、痛みや苦しみを伴う旅もありました。決して栄光の旅ばかりではなかった。でも、そういう旅こそが大事だったんです。
失敗を幾度も重ね、辛酸を舐めつつも前進を止めないこと。これが人間にとっては何よりの栄養となります。こうした経験こそが血肉となり、自身を逞しく成長させてくれる。
旅の中で学んだ生きた知識を世界に還元していくために、藤岡家という血筋を残すことの大切さにも気づきました。私自身、父から藤岡家の伝統を継承し、今日まで生き抜いてきたわけです。それなら、今度は父になった私自身が子供たちに対し、同じことをしてあげなくてはならない。――おそらく、こうした知識、技術、精神の継承こそ、私が命を賭けるべき最大の使命なのであって、果たさないことには先へと進めないでしょう。
人間はひとりひとり、大きな使命を背負っていくんです。次なる者へ何を託し、何を委ね、何を残すのか。未来のための試練に真剣に立ち向かっていく、そういう生き様に耐え得るよう自らを鍛え、力をつけていかないと、とても使命を遂げられません。私の父がよく言っていました。「どのような社会にあっても、誇りを失わずに精進し続けろ」「他人には優しく、己には厳しくあれ。最大の敵は己の心だ!」「何事にも不撓不屈の精神で真剣に挑み、立ち向かえ!」と。私は、そういう教えを受けてきたんです。自分の心に打ち勝つ、強い精神を養うことが大切だと。だから私の戦いは、常に「自分との戦い」です。こんなに素晴らしい教えはありませんね。こうした先人たちの教えは、日本の本当の宝です。

――最後に、読者への叱咤激励をお願いします。

:たとえ間違いだったとしても、命を賭けて「自分はこうである!」という信念を持つこと。まず自分が死ぬ覚悟で動いていくことで、周りの人間に本気だと捉えさせるんです。人生は冒険とサバイバルの旅である、という意識がないと駄目ですね。無難に、やり過ごすように生きていてはいけません。
こういう教えを伝えていくのには、漫画が向いていますね。漫画の読者人口はどんどん増えているし、なにより読みやすいですから、子供たちが楽しみながら学んでいける。そういう意味でも、僕と『ゴールデンカムイ』との出会いは偶然ではなく、とてつもない大きな使命を背負ったものだと思えました。出会わせていただいたことに感謝していますよ。人と人の出会いによって人生は変わるし、歴史も運命も変わる。今日のこの出会いも、歴史を変えるようなものになるといいですね。
いや、説教臭くなってしまって申し訳ない。こういう気概を持った俳優もいるんだ……ということだけ、ご記憶いただけたらと思います。

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