武（ぶ）王（おう）、太公（たいこう）に問（と）うて曰（いわ）く、凡（およ）そ兵（へい）を用（もち）うるの要（よう）は、必（かなら）ず武（ぶ）車（しゃ）、驍（ぎょう）騎（き）、馳（ち）陣（じん）、選鋒（せんぽう）有（あ）り。可（か）を見（み）れば則（すなわ）ち之（これ）を撃（う）つ。如何（いか）にして撃（う）つ可（べ）きか。

太公（たいこう）曰（いわ）く、夫（そ）れ撃（う）たんと欲（ほっ）する者（もの）は、当（まさ）に審（つまび）らかに敵人（てきじん）の十（じゅう）四（し）の変（へん）を察（さっ）すべし。変（へん）見（あら）わるれば則（すなわ）ち之（これ）を撃（う）て。敵人（てきじん）必（かなら）ず敗（やぶ）れん。

武王曰（いわ）く、十四の変、聞くを得（う）べきか。

太公（たいこう）曰（いわ）く、敵人（てきじん）新（あら）たに集（あつ）まるは撃（う）つ可（べ）し。人（じん）馬（ば）未（いま）だ食（く）わざるは撃（う）つ可（べ）し。天（てん）時（じ）順（じゅん）ならざるは撃（う）つ可（べ）し。地（ち）形（けい）未（いま）だ得（え）ざるは撃（う）つ可（べ）し。奔走（ほんそう）するは撃（う）つ可（べ）し。戒（いまし）めざるは撃（う）つ可（べ）し。疲（ひ）労（ろう）するは撃（う）つ可（べ）し。将（しょう）、士（し）卒（そつ）を離（はな）るるは撃（う）つ可（べ）し。長（ちょう）路（ろ）を渉（わた）るは撃（う）つ可（べ）し。水（みず）を済（わた）るは撃（う）つ可（べ）し。暇（いとま）あらざるは撃（う）つ可（べ）し。阻（そ）難（なん）狭（きょう）路（ろ）は撃（う）つ可（べ）し。行（こう）を乱（みだ）るは撃（う）つ可（べ）し。心（こころ）怖（おそ）るるは撃（う）つ可（べ）し。