新しい年を迎えた喜びもつかの間、新型コロナウイルスの暗い影が沖縄を覆っている。新たな変異株「オミクロン」の勢いはすさまじく、楽観を許さない状況だ。
県内の6日の新規感染者は981人で、1日当たりとしては第5波のピークを超え過去最多となった。それでもまだ天井が見えない。
県は同日、「まん延防止等重点措置」の適用を政府に要請した。期間は9~31日、飲食店に対して時短営業などを求める方針だ。
緊急事態宣言が解除されて約3カ月。飲食店に出されていた時短措置が全面的に解かれてから2カ月ちょっとしかたっていない。
もちろん打撃を受ける分野への支援は必要だ。しかし事態は差し迫っている。さらに厳しい「緊急事態宣言」への移行も念頭に、今の危機について県民と認識を共有しなければならない。
新規感染者は2日の51人から、3日130人、4日225人、5日623人、6日981人と、これまでとは次元の異なるスピードで増えている。デルタ株からオミクロン株への置き換わりが進んだことが要因とされる。
オミクロン株の特徴は強い感染力である。調査では2日未満という短期間で感染者数が2倍となっている。
県内では若者の感染が突出して多く、年末年始に飲食を介し増えたとみられている。
週末には成人式を予定している自治体も多い。状況を正しく理解した上で大人としての慎重な行動を求めたい。
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オミクロン株はデルタ株に比べて重症化リスクが低いという調査結果がある。
ただ重症化率が低くても倍々で増えれば、結果的に重症者は増える。若者から基礎疾患のある人や高齢者に広がれば、医療は逼迫(ひっぱく)する。
県内では医療従事者の感染や濃厚接触者認定で診療が制限されるなど病院機能への影響も出始めている。
過去には郵便局職員の感染で郵便物の配達がストップしたこともある。社会経済活動へ与える影響も危惧される。
「かかっても大丈夫」という楽観論は到底成り立たない。
今月15、16日には大学入試共通テストも控え、受験シーズンも近づいている。
基本的な対策の徹底、ワクチン未接種者への接種促進、追加接種の前倒しなど、収束に向けできることを一つ一つ積み上げていきたい。
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政府は沖縄のほか、山口、広島の3県に重点措置を適用する方針だ。3県に共通するのは米軍由来のオミクロン株が基地から市中に広がったとされる点である。
当時、米兵らは日本への出発前と到着後のPCR検査を受けず、入国後の行動制限期間中も基地内を自由に動き回っていた。
日米地位協定に守られた、ずさんな検疫体制が県民の不安を広げたのだ。
林芳正外相は6日、米側に米兵の外出制限を含む感染防止策の強化を要請した。
市中に「染み出した」今となっては遅きに失した対応だ。