また、忘れてはならないのが、測定した女子四人の存在だ。
彼女らは、人に話せば連帯責任でお仕置きすると告げられているし、これを秘密にするよう皆で約束した。

その場に居た者として、彼女らも話を尋ねられれば、私が秘密をバラしたと分かってしまう。
当然、私を嫌い、お仕置き怖さに事実を否定するかも知れない。

そうなると私は嘘つき呼ばわりされた挙げ句、金ごんから睨まれ、お仕置きされるだろう。
下手をすると、悠より酷い目に遇わせられるかも知れない。


自身、驚くほど急に頭が回った。
詰まる所、金ごんに対する恐怖の為せる業かも知れない。

「先生っ、待って、待ってくださいっ！
金田先生に話すのは許してくださいっ！」
私は先生にすがらんばかりに懇願した。

先生はちょっと困惑し、
「じゃあ説明しなさい。
これは何だ？」
と質問する。

「え？あ、あの…それは…」
再び言葉に詰まる。
仮にその通りと答えれば、やはり先生は事実確認するだろう…。
だとすれば、もう一つの選択肢しかない。


「…先生、ごめんなさい…
イタズラ…です…」
こうなったら仕方ない。
あくまでもイタズラで通して、先生の胸だけに収めさせて貰おう。


すると先生は真顔で私に念を押した。
「川内、確かにイタズラなんだな？
間違いないな？」

私は自己を貶めざるを得ない屈辱に、
「…はい…イタズラです…
先生っ、すみませんでしたっ！」
と、震えながら頭を下げた。


先生は腕組みして、考え込む仕草をした。
「すると川内は授業中、ありもしない嘘を書いてそれをクラス中に回そうとした、という訳だな？」

「ﾋｯｸ、…はい、その通りです…。」
余りの悔しさに涙が出てくる。
クラス中に回すつもりは毛頭無かったが、下手に言い訳したところでどうなるものでもない。

先生は明らかに怒ったようだ。
険しい顔は変わりないが、私を見る目が冷たいものとなった。
「川内、泣いて謝っても許されるものじゃないぞ。

金田先生を妖怪呼ばわりし、三島を覗き扱いにして辱しめたこの内容、イタズラで済むレベルじゃない。」

「ごめんなさいっ！
先生っ、ごめんなざいっ！」

斎藤「おまけに授業中、それをクラスに回そうなどとは…。

分かっているのかっ！
お前のイタズラは、クラスの皆にも迷惑掛けたんだぞっ！」

先生は語気も荒く、私を問い詰める。
それも本来、謂れのない事でだ。

さすがに私もムッとした。
が、それも一瞬。
いやいや、ここは謝るにしくはない。
「先生っ、ごめんなさいぃっ！」
勢い、土下座するような形となり、謝罪を繰り返した。

斎藤「大体何だ、この内容はっ！
お尻叩きだの、全裸で測定だの…終いには肛門に体温計っ？
変態小説でも書くつもりかっ！」

素直に謝ってるんだから、そんなに言わなくてもいいじゃんっ。

その後も侮辱的な罵詈雑言が私に浴びせられる。

私は段々と腹が立ってきた。

斎藤「川内っ、何だその目はっ！
言いたい事があるなら言ってみろっ！」

ついに我慢の限界がきた。
「先生のばかっ！」

斎藤「な、何っ!?」

「そんなにボロクソ言わなくていいじゃんっ！
ちょっとイタズラしただけなのにっ！」

すると先生、その顔から険がとれた。
が、怒りを収めた訳じゃない、冷たいまでに無表情となったのだ。

あれ？私、今なんか変な事言った？

斎藤「川内…どうやら反省は全く無いようだな…。
お前には、ここに書いてあるようにお仕置きが必要みたいだ。」

私は仰け反らんばかりに驚いた。
「ちょ、ちょっと待ってよ先生っ！
そんなのダメに決まっているじゃんっ！」

先生は私を蔑視しながら、ため息をついた。
「言い聞かせて分からない悪い子は、お尻で反省しないと分からないだろ？
それとも金田先生にこれを見てもらったがいいか？」
その瞳は、揺るぎない信念に支えられたように力強い。

冗談止めてよ先生っ！
そんな選択肢って、あんまりだわっ！
「せ、先生っ、言い過ぎましたっ！
反省してますっ！
だから金田先生には言わないでくださいっ！」
結局、私はひれ伏さざるを得ない。

斎藤「分かった、言わずにおこう。
じゃあ川内、先生の膝にうつ伏せになって、お尻を出しなさい。」

私は驚き、ついで土下座して再び謝罪を繰り返した。
「お尻叩きなんて無理です、許してくださいっ！」

が、先生の表情は些かも変わらない。
「聞こえなかったのか？
お尻を出せ、と言ってるんだ。
それとも金田先生からのお仕置きがいいか？」


その感情の無い言葉に、私は目の前が真っ暗になった。
そして子供ながらに、如何なる言葉を用いても、この究極の選択から逃れられないと悟った。