しゅん【旬】
〘名〙 (「しゅん」は「旬」の漢音)
① 中古、朝廷で行なわれた年中行事の一つ。毎月、一日、一一日、一六日、二一日に、天皇が臣下から政務をきく儀式。はじめは毎月行なわれたが、のち、四月と一〇月との一日だけとなって、四月を
孟夏の旬、一〇月を
孟冬の旬と称し、合わせて二孟の旬という。この日、闈司奏・監物奏・六府
番奏・少納言庭立奏などの諸官の奏、歌舞、賜祿などの事があり、孟夏の旬には扇、孟冬の旬には氷
魚を賜わるのを例とした。また、天皇の出御のない時は、平座
(ひらざ)と称して略儀としたが、後世は多く平座となった。諒闇
(りょうあん)・忌日などには行なわれず、日食の際にはその翌日となる。恒例の旬の外に臨時の旬があり、一一月一日が冬至にあたった時は朔冬旦至の旬、内裏新造後には新所の旬、即位後には万機の旬が行なわれた。
旬儀。
旬政。
※日本紀略‐延喜七年(907)一二月一六日「旬、天皇御二南殿一」
② 草木などの盛りの
時期。また、魚介・果物・
野菜など、季節の食物が
出盛りの時。物がよく熟し、最も味がよい季節。
※玉塵抄(1563)一四「蔓草は秋冬がしゅんなり」
③ (②から転じて) 物事を行なうのに、最も適した時期。最も盛んな時期。
※玉塵抄(1563)三「八月は風のしゅんできぶうあらいぞ」
※和英語林集成(初版)(1867)「Shun(シュン) ハズレ」
じゅん【旬】
〘名〙
① 一〇日。一〇日間。特に、一か月を三分したときの、それぞれの一〇日間。一日から一〇日までを上旬、一一日から二〇日までを
中旬、二一日から月末までを
下旬という。
※万葉(8C後)一七・三九六五・題詞「忽沈二枉疾一、累旬痛苦、祷二恃百神一、且得二消損一」
※今昔(1120頃か)一二「只堂の
預の俗三人、清浄にして旬を替て各十日の間入る」 〔礼記‐曲礼・上〕
※台記‐天養元年(1144)一二月一五日「以二所レ著之直衣装束一具一、給二高基一過二五旬一、凌二寒気一之故」 〔白居易‐偶吟自慰、兼呈夢得詩〕
※末枯(1917)〈
久保田万太郎〉「すっかりもう冬めきました〈略〉今年はすこしいつもより旬
(ジュン)が早いやうに思はれますが」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
しゅん【旬】
[名]
1 魚介類や蔬菜・果物などの、最も味のよい出盛りの時期。「旬の魚」「たけのこの旬」
2 物事を行うのに最も適した時期。「紅葉狩りの旬」
3 古代、宮中で行われた年中行事の一。天皇が紫宸殿に出御、臣下に酒を賜り、政務を聞く儀式。もとは毎月1日・11日・16日・21日に行われたが、平安中期以後は4月と10月の1日だけとなった。4月を孟夏の旬、10月を孟冬の旬といい、合わせて二孟の旬という。このほか、朔旦冬至の旬など、臨時の旬もあった。
[形動]評判になっているさま。また、最新であるさま。「もっとも旬な話題」
[類語]盛り・最盛期・盛期・盛時・黄金時代・花・盛代・真っ盛り・花盛り・たけなわ・たける・出盛り
じゅん【旬】
1 10日。特に、1か月を3分した、それぞれの10日間。→上旬 →中旬 →下旬
2 10年を1期とした称。「齢七旬を迎える」
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
旬【しゅん】
魚類,野菜,果実などの最も美味な時期をいう。多くは漁獲量や収穫量の多い出回り期がこれに当たるが,必ずしも一致せず,魚では脂ののった生殖期直前の場合が多く,野菜では収穫の初めのころがよい。
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
旬
味,物性などから食品の収穫に最も適した時期.通常,最も多量に収穫される時期に一致する.
出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報
しゅん【旬】
(1)魚貝類,蔬菜(そさい),果実などが最も美味な時期をいい,漁獲量,収穫量の多い出盛り期がそのまましゅんであることが多い。魚では生殖期直前の脂ののった時期であることが多く,蔬菜では収穫期の初めのころである。しゅん以前のものは〈走り〉〈初物〉,しゅん過ぎのものは〈しゅんはずれ〉と呼ばれたが,遠洋への出漁による漁獲や促成栽培の日常化により,日本人の食生活をいろどっていた季節感は薄れ,しゅんもまた失われつつある。
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報