バスの車内事故とは
都内で路線バス運転手としてのキャリアが14年目を迎える現役バス運転手です。
この記事ではバス運転手が最も警戒すべき車内事故について解説します。
まずは「車内事故」とは何かを解説します。
車内事故とは乗り物の車内でケガ人が出たり、物が壊れたりすることです。
大半が急ブレーキや急発進などが原因で転んだり、体をぶつけたりして起こります。
この記事で「バスの車内事故」としているのは車内事故の件数が圧倒的に多いのがバスの車内だからです。
被害者の約8割が高齢女性で、車内事故のけががきっかけで寝たきりになる人も多い非常に危険なものです。
高齢者が多く利用するバスだからこそ件数も増えている、という状況です。
国土交通省からも防止マニュアルが出されるなど社会問題化しています。
お時間があれば下のリンクからマニュアルを読んでみてください。
ここまでの説明で車内事故とは何かが分かっていただけたでしょうか。
次の項では車内事故が起こるとバス運転手はどうなるかを解説します。
車内事故が起こるとバス運転手はどうなるか
車内事故が起こるとバス運転手はどうなるのでしょうか?
まず、車内事故として処理される場合は過失割合はバス運転手が100%になります。
事例としては自転車が飛び出してきて、事故を避けるために急ブレーキ・急ハンドルしたら車内で立っていたお客さんが転んだ、というのが典型例です。
この場合、自転車とは接触していないので自転車を相手とした事故にはなりません。
単独の自損事故、ということになります。
単独の自損事故で人身で過失割合は100%、かなり厳しい行政処分が来ますね。
怪我の度合いによって点数は違うんでしょうけど一発免停くらいにはなります。
ドライブレコーダーの映像などから飛び出してきた相手が特定できれば救われることもありますが、これには過度の期待は禁物です。
車内事故を起こすと「あんたプロでしょ、これくらいの危険は予知して運転しなきゃ!」と警察からも言われます。
つまりは飛び出しくらいで急ブレーキかけるような運転をはじめからするな、って言われるんですよ。
急ブレーキをかけたことにやむを得ない理由があって、かつ、相手が特定できれば相手にも責任を問えますが、そうでなければ運転手の100%過失です。
運転手にとっては厳しすぎますね。
バス車内事故の防止策はアナウンスしかない現状
バス車内事故の防止策は現在のところ注意喚起のアナウンスをするしかありません。
(と言うより事故が起こった場合、注意はしたのに言うことを聞かなかった本人の責任にできて過失割合を下げられるので予防線を張っていることにもなります)
注意喚起のアナウンスをしても年寄りは言うことを聞かないんですけど。
椅子に座っててくれれば防げたはずの車内事故は数知れません。
年寄りはせっかちなので降りたいバス停が近づいてもいないのに席を立って、ドアに向かって歩き出します。
こういう時に転ぶのが目立つケースですね。
だから「バスが完全に停車してから席を立ってください」とアナウンスしているんです。
これでも言うことを聞きません。
注意をされたにもかかわらず、車内をうろうろ歩いたり手すりにつかまっていなかったり、となれば多少は本人の自己責任にもできます。
しかし、年寄り相手に椅子に座っていろ、手すりにつかっていろ、などと注意をすると接客態度が悪いって苦情になるんですよね。
これはこれで処分されるので。
結局は恐る恐る運転することになるんですよ。
そうすると所要時間の少ないダイヤで走っているので「遅いぞバカヤロー」って怒鳴られる。
どっちを我慢するかって話になります。
悪用厳禁!バスの車内事故の闇
ここからはバスの車内事故の実態、闇の部分をお知らせします。
(悪用厳禁でお願いします)
バスの車内事故って相手もいなければ証拠もほとんど必要なく、自己申告で成立するんです。
例えば普通に滑らかに発車したとしても、そのタイミングに合わせて手すりに肩をぶつけたり。
赤信号で停車するタイミングに合わせてわざと尻もちをついたり。
こんなのでも乗客がケガをしたと自己申告すれば車内事故は成立します。
もっと恐ろしいのは、ある日突然会社の事務所に診断書を持って客が来ることもあります。
「数日前にバス車内でケガをした、後になって痛くなったから医者に行って診断書もらってきた」などと言ってきます。
この場合はさらに証拠がないので該当運転手を警察に差し出す形になります。
ちなみにこういうケースでは医者は喜んで診断書を書きます。
全治5日の打撲程度の診断書なら本人が痛いと言い張ればケガがなくても診断書は書けます。
年寄りの間では「バスに乗って痛いと言えばバス会社から金がとれる」なんて話が都市伝説のように噂されています。
実際、「わたし腕をぶつけました、お金くれるんでしょ?」と年寄りに聞かれた同僚もいます。
骨折するほどのケガなら運転手も納得できるかもしれませんが、年寄りの小遣い稼ぎに利用されるのは本当にムカつきますよ。
なので、車内事故のケガ人を「被害者」って呼ぶのも嫌なんです。
以上、バス運転手が最も警戒すべき車内事故について、現状を解説しました。
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