座間事件の「論じ方」〜専門家が「経験と想像」で分析することの危険性

原因は結局わからないまま…
原田 隆之 プロフィール

粗雑な犯罪理解の問題点

「犯罪の原因は家庭にある」という素朴で粗雑な「推測」は、加害者家族を傷つける。加害者の家族は、ただでさえ非常なバッシングを受ける。

これまでも重大事件の家族が、自殺をしたり一家離散したりという例は枚挙に暇がない。「専門家」を名乗る者が、それを焚きつけるような主張をすることは、到底容認できるものではない。

重大事件の原因がよくわからないと、人は不安になる。だからといって、それを軽々しく想像で埋め合わせてわかったことにしてしまうことのほうが、よほど問題である。

〔PHOTO〕iStock

現在、「専門家」というものが、自称すれば誰でもなれる簡単なものに成り下がっており、専門家のデフレが甚だしい。論文を1本も書いていないような人が、ある日突然「専門家」を名乗って、メディアで発信できる世の中なのである。また、その自称に乗っかってありがたかっているメディアの責任も非常に大きい。

SNSやウェブメディアが発達し、簡単に情報発信ができるようになった今だからこそ、専門家にしろ、メディアにしろ、その影響力を自覚して、責任ある発信を強く望みたい。

なお、「現代ビジネス」は同サイトに掲載された記事やメディア批判に関するこの記事の掲載を快く引き受けてくれた。これは、言論のプラットフォームとして、大変健全なあり方であり、この点に関して謝意と敬意を表したい。

 
(1)Bonta J. et al. The Psychology of Criminal Conduct. 2017.
(2)Hare R.D. Without Conscience. 1993.
(3)Marshall LA et al. J Personal Dis. 1999.
(4)Raine A. The Anatomy of Violence. 2013.

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