座間事件の「論じ方」〜専門家が「経験と想像」で分析することの危険性

原因は結局わからないまま…
原田 隆之 プロフィール

一方、連続殺人に限定せず、犯罪のリスクファクターに関する膨大なデータを集積したメタアナリシスによるエビデンスを見ると、虐待など逆境的な家庭環境やトラウマは、犯罪の原因としてはさほど重要なものではないことがわかっている(1)。つまり、阿部氏の「経験」に基づく「推測」を、エビデンスは明確に否定している。

また、サイコパスの原因に関しても、サイコパス研究の第一人者であるカナダの犯罪心理学者ロバートヘアは、「結局のところ、サイコパスが幼い頃の社会的、あるいは環境的要因に直接基づいているという確かな証拠はどこにも発見できない」と語っている(2)。

 

イギリスの心理学者マーシャルらの研究では、サイコパスと非サイコパスの間に非虐待経験率には有意差がなかったことが見出されている(3)。

さらに、犯罪神経学者のエイドリアン・レインは、反社会的行動に対する家庭環境などの寄与率は、4%にすぎないと指摘している(4)。もちろん言うまでもなく、これらはさまざまな研究データに基づく知見であり、彼らの経験や推測ではない。

30〜40年前ならいざ知らず、現在の犯罪心理学では、これらは周知の科学的事実である。それを知らないのなら、「専門家」を名乗る資格はない。

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