2013.10.01
問題解決のデッドロックを叩き壊す、とにかく考えを前に進めるための方法
「とにかく書け」とか「とにかく読め」という話を何回か書いてきた。
(「とにかく書け」という記事)
・「自分の書く文章は価値がない」を抜け出すライティング・マラソンという方法←自己検閲を振り切って書きなぐるために 読書猿Classic: between / beyond readers
・心理学者が教える少しの努力で大作を書く/多作になるためのウサギに勝つカメの方法 読書猿Classic: between / beyond readers
(「とにかく読め」という記事)
・聞けば身も蓋もない1冊を30分で読む方法と習慣 読書猿Classic: between / beyond readers
どんなやり方がよいか考えあぐねて、ぐるぐる逡巡しているくらいなら、とにかく取り掛かった方が早いし速い。
やり方を改善するにしても、試行錯誤の中で行わないと結局うまくいかない。
書くこと・読むこと以上に、どういうアプローチが良いのか逡巡してしまうものに問題解決がある。
アプローチを決めることが問題解決のほとんどすべてであるように思われるので、あれこれ迷うのはむしろ本筋なのだが、それに甘んじていると、これまたいつまでもぐるぐる逡巡して時が過ぎる。
取り組んだことがないような初見の問題だとなおさらだが、既存の手続でうまくいかないからこそ問題解決の出番なのだから、こじらせると、ぐるぐる逡巡することが〈標準化〉してしまいかねない。
いろんな場合に使える汎用の問題解決の手順は存在する(たとえばIDEAL法=Identify problems 問題と機会をとらえる→Define problems 問題を定義する→Explore possible strategies 解決策を探る→Anticipate outcomes and Act 結果を期待し実行する→Look back and Learn 振り返り、そこから学ぶ)。
・問題解決を導く50といくつかの言葉/IDEAL(理想)の問題解決5ステップ 読書猿Classic: between / beyond readers
けれど、ぐるぐる逡巡を抜けるという目的からすれば、これも悪い意味で、まだ一般的過ぎる。
とくに「解決策の評価と選択」のところは、解決策を複数(それもなるべくたくさん)考え出すことが含まれているのだが、どうやって考え出すかは、よく言えばオープン、悪く言えばユーザーに丸投げである。
「どんなやり方でもいいから考えてね、それもなるべくたくさん」という要求だけがあるので、どんなやり方で解決策を考え出すのが一番良いだろうかとやっていると、やっぱりぐるぐる逡巡する。
逡巡するうちに時間が経って、あせって神経をすり減らし、最後には選ばないよりはマシと愚策を選ぶ、という繰り返し。
これでは「心理学者が教える少しの努力で大作を書く/多作になるためのウサギに勝つカメの方法 読書猿Classic: between / beyond readers」で書いたBinge WritingならぬBinge Creating ideasである。
対策としては、より具体的な手続を「迷ったときはこれで行く」とデフォルトにしておくことだ。
そして、ぐるぐるしそうになったら、とにかくデフォルトのやり方で進むのである。
ここで「デフォルトのやり方」候補にはいろいろあるが……とやると、話が元に戻ってしまうので、中の人が普段、アプローチが思いつかない場合のデフォルトにしているNM法を紹介する。
NM法のメリット
今回の「とにかく問題解決にとりかかる」というテーマから見た、NM法のメリットは、
・手順がほどよく具体化されており、次に何をすればいいのかが各ステップで明確である
・各ステップでの作業時間も短く(ヤングみたいに寝かさない、KJ法みたいに渾沌をして語るのを待たない)、ぐるぐる逡巡に入る暇がない
・すばやくできるので、他の手法の中に取り入れて使うのも簡単
・用途は限定されておらず、どんな問題にも使える
・既知を未知の問題に適用するアナロギー(類比)を基本にした手法で、初めて直面するの問題にも使える
・自由度を上げて発想を広げるのにも、手堅いアイデアを得るのにも使える
時間がない人のためのまとめ
まとめると次の4つの質問に順に答えていく。
1.QK(Question of Keyword)「要するにどうなればいいか」
2.QA(Question of Analogy)「~するもの/~なものといえば、例えば何があるか?」
3.QB(Question of Background)「そこでは何が起きているか?」
4.QC(Question of Concept)「それを何かに活かせないか?」
少し詳しいNM法のやり方
NM法にはいくつかのタイプ(型)がある。詳しいことは、創案者によるNM法のことならなんでも載ってる次の本を参照。
ものづくり・発明を志向したH(ardware)型がその原型であるが、普及しているのは、その前半を取り出して簡略化したT型である。拡散的思考を担当するもので、ブレインストーミングを使うような場面では、これで代替できる。
今回の目的にはぴったりなので、これについて手順を説明しよう。
1.まずお題を決める。つまり何を解決したいのかをお題にする。
2.QK(Question of Keyword)「要するにどうなればいいか」という問いに答えてキーワードを決める。
キーワードは、問題解決の要を一言で言い表したものだが、一旦問題のおかれたコンテキスト(文脈・状況)から離れて思考を広げるために、問題解決を抽象化したものである。
抽象化というのが難しいなら、「要するにどうなればいいか」に文章で答えて、その答えの文章から最重要な動詞(ときに形容詞)をひとつ選ぶとよい。
3.QA(Question of Analogy)「~するもの/~なものといえば、例えば何があるか?」というアナロギーを導く問いにに、具体的な事物をあげて答える。せっかくコンテキスト(文脈・状況)から離れるのだから、取り組んでいる問題とは異分野の事物がよい。たとえば自然現象からアナロギーを選べば、自然が行ってる問題解決から学ぶことになる。
4.QB(Question of Background)「そこでは何が起きているか?」に答えて、アナロギーとして出た事物とそれが活動している状況をイメージする。絵を描くのもいい。絵をいうとおののく人もいるかもしれないが、6歳児が描くような絵がいい。
5.QC(Question of Concept)「それを何かに活かせないか?」という質問に答えて、これまでアナロギーとイメージで広げてきたものを、アイデアとして着地させる。頭の使い方としては、「お題(問題解決のテーマ)とかけまして、(QBで出たイメージ)と解きます、その意(こころ)は?」という謎かけを(ときに無理やりに)とくような感じである。
6.答えるべき4つの質問(QK,QA,QB,QC)には、それぞれ複数の答えがあり得る。これを繰り返して複数のアイデアを得ていく。
7.やり方としてはQAから一つのアナロギーを思いついたら、そいつが温かいうちに、→QB→QCとステップを先に進めていって、アイデアが得られるまでやり切る方がよい。
そしてそこでアイデアが出なくなったら、行き詰ったら一つ前のステップに戻って、次の答えへ進む。いわゆる深さ優先探索/縦型探索と呼ばれるやり方に似ている。
これに対して、まずはQAに答えていってアナロギーをたくさん集めて終えてからQBへ進む、幅優先探索/横型探索風のやり方だと、また元のアナロギーを考える頭に戻らなくてはならず、やりにくい。たくさんのアナロギーやバックグラウンドが一種の〈未解決案件〉として残ったままになるのも、やる気を損ないやすいようだ。
出来はどうあれ先にQCに答えて、どんどんアイデアという成果物を得たほうが、やる気もスピードも上がりやすい。
NM法T型の例
試しに一つやってみよう。
・Theme(お題):「すらすらブログを書く」
↓
QK(Question of Keyword)「要するにどうなればいいか」
・「ページが埋まればいい」→「埋める」
・「何でもいいから記事を出せればいい」→「出す」
Keyword「埋める」から
QA「埋める/埋まる」ものにはどんなものがあるか?
A.ゴミピット
QB「ゴミピットでは何が起きているか?」
B.コンテナが傾けられ溜め込まれたゴミがピットへとすべり落ちていく
QC(Question of Concept)「それを何かに活かせないか?」
C.貯め込んでいたものを一気に投下する→書物をリストを貯めておいて、たまったらブックリスト記事にして一挙放出
B.クレーンで持ち上げられたゴミが水平移動してピットの真上まで来てパカッと開く
QC(Question of Concept)「それを何かに活かせないか?」
C.違うところから持ってきて投下→自分の他のページや過去に書いたものからコピペ
・・・
Keyword「出す」から
QA「出す」ものにはどんなものがあるか?
A.宿題
QB「宿題では何が起きているか?」
B.締切があるので不完全でもとにかく出す
QC(Question of Concept)「それを何かに活かせないか?」
C.締切を設定して完成/未完成を問わずに投下する
C.「未完成である」ことを記事のネタにする
A.名刺
QB「名刺では何が起きているか?」
B.お互いに差し出した名刺を相手から受け取る
QC(Question of Concept)「それを何かに活かせないか?」
C.双方向なブログ記事→非難の応酬?誉め合い?他ブログとの相互投稿?
もうひとつ、たくさん作れる例として、
お題を「アイデアの生産法」とし、キーワード「集める」だけから広げてみた。
なお質問(QA,QB,QC)は省略している。
A:掃除機
B:速い空気の流れとともに細い口から吸い込む
C:高速で大量に集める
→強制連想法,ブレインライティング法
A:掃除機
B:流れを作りフィルターで濾しとる
C:大量のインプットから少数のよいものだけを残す
→要素分解×機械的組合せで数を作ってから、選択する
A:ピンセント
B:細かいものを拡大鏡で見ながら一つ一つを摘み上げる
C:中に含まれる必要だが小さなものを拾い上げる
→既存のアイデアをもう一度詳しく見て,使えるコンポーネントだけピックアップ
A:雨樋
B:予め設置された樋を重力にしたがって雨が流れ落ちていき自然に一箇所に集められる
C:自然にネタがたまる仕組み
→キーワード→アラートでネットから情報を集め、結果を専用メアドへ送付。
A:図書館
B:まとめて買入れ,ひとつひとつにナンバーを割当て,予めすべての本を分類できる体系に従って仕分され,それぞれの位置へ配架される
C:記事の分類を予め決めておき,入ってきたネタをその場で分類する(時間はかかるが,時間が経るごとにライブラリーは自己組織化され充実する)。
A:ラジオ体操のスタンプ
B:一回に付きひとつずつもらえる,これを毎日繰り返す
C:1日1個のアプローチ
→アイデア日記。アイデアだけでなく、アイデア作りに貢献する行動をなんでもいいので記録する。
A:観光地のスタンプ
B:一箇所に付きひとつずつ押せる,これを各箇所で繰り返す
C:定点観測系のネタあつめ
→一定の基準で,いろんな箇所からデータを集める
→(主客を逆転して)他人にいくつかのサイトを回ってもらう仕掛
A:ベルマーク
B:学校などに設置された箱の中に,子供たちがめいめいそれぞれの家出集めたマークを入れにやって来る
C:ソーシャルな手法,ネタを投稿してもらう場所を設ける
C:投稿サイトから掬い取る
→投稿サイト×ピンセットの手法
A:磁石で砂鉄
B:砂の上に磁石を這わせてくっついて来た砂鉄を一箇所で落とす,これを繰り返す
C:選別アプローチ→例えば、玉石混交のソース(資源)から,一定の条件にかかるものだけを引っ張り挙げる(フィルター)
→たとえばランダムネスなソース=辞書のコトバをランダムに拾う
NM法T型がもたらすもの
実は、普通にNM法T型を用いると、最後のQCから出てくる答えは「既存の名案」となりやすい。とくにその分野の問題解決に精通した玄人はそうなりやすい。
原因は、広がったイメージを今解こうとしている問題解決に着地させるQCのステップにある。QKで問題のおかれたコンテキスト(文脈・状況)を離脱し、QA→QBでアナロギーを梃子にして広がった発想が、お題の問題解決に役立てようとすることで引っ張り戻されるのだ。QCという質問が、脳裏から当てはまりそうな解決策をサルベージしてくるのだ、ともいえる。ときどき、うんうん考えるだけでは意識にのぼってこない「既存の解決策」が、QCという質問に促されて出てくることがある。
また、とてもじゃないが活かしようがない(QCに答えようがない)と思える、問題解決からかけ離れたアナロジーやイメージを無理やり引っ張り降ろす場合にこそ、既存のアイデアを超えたものが出る可能性がある。脳裏にある既存の解決策に結びつくものがないからこそ「かけ離れた」「活かしようがない」感じがするのである。そこで感じる抵抗は、つまるところ、頭をいつもとは違う方向に動かすことについての抵抗である。
NM法のプロトタイプであるH型では、QCで出てきた多数の実用的な解決策を、さらに掛け合わせるステップが後続する。ものづくり・発明を志向する以上、パテントが取れない「既存の名案」では困るからだ。
NM法としてはこの後半が重要で、QCまでの前半はむしろ、一つの視点にこだわらず問題を様々な面から眺めるための準備的意味合いが強い。
もっとも日常の問題解決では、「既存の名案」で間に合うことが多い。誰かに売りつけることを考えなければ、新奇で実績のないアイデアよりも、使い古された実績のある「既存の名案」の方がうまくいくことすら少なくない。
そして「とにかく問題解決にとりかかる」というテーマからすれば、ここまでで目標は一応達成されている。
「新しい」と「すぐれた」の両方を満足するアイデアだけを求めていると、頭の働きはギクシャクする。凡庸なアイデアをとにかく数出していけば、次第にどうでもよくなって、頭も随分スムーズに動くようになるのだが、アイデアを求める人や求められる状況は、多くの場合、そうした余裕を欠いている。
NM法は、そこに効く。
Binge Creat ideasのデッドロックを解き、頭をふたたび回転させる。
ありきたり過ぎて見逃しがちなアイデアも含めて、とにかく手順よく数多く生み出す。
「問題をさまざまな観点から見る」「まず多様な解決策を複数作り出す」という、問題解決に不可欠だが、小目標にはなっていても作業手順についてはユーザーに丸投げだった部分(ブレインストーミングにせよ「批判はするな自由にやれ」というだけだった)が、具体化されているところがミソである。
先に書いたが、NM法は自分の頭のなかをサルベージする方法である。
問題の中には、今の自分が知らないだけで、世の中に解き方/取り組み方が既に存在するものも少なくない。そうした場合は、自分の中をごそごそ探るよりも、調べ物をした方が速いことも多い。
また理詰めで一歩一歩分析していけばちゃんと解けるものもある。これらの正攻法はおろそかにすべきではない。
しか調べ物するのを待ってはくれず、正攻法では歯がたたない問題だってある。
NM法は頭の中にあるリソースを使う方法だが、それが役立つのは、リソースをいつもとは(そして蓄えた時予想していたのとは)異なる仕方で呼び出す/異なる角度で読み出すからだ。
このやり方から生まれた多数のアイデアを整理したり、掛け合わせたりするやり方(NM法のA型やS型やD型)や、他のメソッドと組み合わせ方(たとえば手塚治虫がストーリーをつくるのに使ったチャートで、分岐が思いつかない場合にNM法を使うとか)は、また別の機会に。
(「とにかく書け」という記事)
・「自分の書く文章は価値がない」を抜け出すライティング・マラソンという方法←自己検閲を振り切って書きなぐるために 読書猿Classic: between / beyond readers
・心理学者が教える少しの努力で大作を書く/多作になるためのウサギに勝つカメの方法 読書猿Classic: between / beyond readers
(「とにかく読め」という記事)
・聞けば身も蓋もない1冊を30分で読む方法と習慣 読書猿Classic: between / beyond readers
どんなやり方がよいか考えあぐねて、ぐるぐる逡巡しているくらいなら、とにかく取り掛かった方が早いし速い。
やり方を改善するにしても、試行錯誤の中で行わないと結局うまくいかない。
書くこと・読むこと以上に、どういうアプローチが良いのか逡巡してしまうものに問題解決がある。
アプローチを決めることが問題解決のほとんどすべてであるように思われるので、あれこれ迷うのはむしろ本筋なのだが、それに甘んじていると、これまたいつまでもぐるぐる逡巡して時が過ぎる。
取り組んだことがないような初見の問題だとなおさらだが、既存の手続でうまくいかないからこそ問題解決の出番なのだから、こじらせると、ぐるぐる逡巡することが〈標準化〉してしまいかねない。
いろんな場合に使える汎用の問題解決の手順は存在する(たとえばIDEAL法=Identify problems 問題と機会をとらえる→Define problems 問題を定義する→Explore possible strategies 解決策を探る→Anticipate outcomes and Act 結果を期待し実行する→Look back and Learn 振り返り、そこから学ぶ)。
・問題解決を導く50といくつかの言葉/IDEAL(理想)の問題解決5ステップ 読書猿Classic: between / beyond readers
けれど、ぐるぐる逡巡を抜けるという目的からすれば、これも悪い意味で、まだ一般的過ぎる。
とくに「解決策の評価と選択」のところは、解決策を複数(それもなるべくたくさん)考え出すことが含まれているのだが、どうやって考え出すかは、よく言えばオープン、悪く言えばユーザーに丸投げである。
「どんなやり方でもいいから考えてね、それもなるべくたくさん」という要求だけがあるので、どんなやり方で解決策を考え出すのが一番良いだろうかとやっていると、やっぱりぐるぐる逡巡する。
逡巡するうちに時間が経って、あせって神経をすり減らし、最後には選ばないよりはマシと愚策を選ぶ、という繰り返し。
これでは「心理学者が教える少しの努力で大作を書く/多作になるためのウサギに勝つカメの方法 読書猿Classic: between / beyond readers」で書いたBinge WritingならぬBinge Creating ideasである。
対策としては、より具体的な手続を「迷ったときはこれで行く」とデフォルトにしておくことだ。
そして、ぐるぐるしそうになったら、とにかくデフォルトのやり方で進むのである。
ここで「デフォルトのやり方」候補にはいろいろあるが……とやると、話が元に戻ってしまうので、中の人が普段、アプローチが思いつかない場合のデフォルトにしているNM法を紹介する。
NM法のメリット
今回の「とにかく問題解決にとりかかる」というテーマから見た、NM法のメリットは、
・手順がほどよく具体化されており、次に何をすればいいのかが各ステップで明確である
・各ステップでの作業時間も短く(ヤングみたいに寝かさない、KJ法みたいに渾沌をして語るのを待たない)、ぐるぐる逡巡に入る暇がない
・すばやくできるので、他の手法の中に取り入れて使うのも簡単
・用途は限定されておらず、どんな問題にも使える
・既知を未知の問題に適用するアナロギー(類比)を基本にした手法で、初めて直面するの問題にも使える
・自由度を上げて発想を広げるのにも、手堅いアイデアを得るのにも使える
時間がない人のためのまとめ
まとめると次の4つの質問に順に答えていく。
1.QK(Question of Keyword)「要するにどうなればいいか」
2.QA(Question of Analogy)「~するもの/~なものといえば、例えば何があるか?」
3.QB(Question of Background)「そこでは何が起きているか?」
4.QC(Question of Concept)「それを何かに活かせないか?」
少し詳しいNM法のやり方
NM法にはいくつかのタイプ(型)がある。詳しいことは、創案者によるNM法のことならなんでも載ってる次の本を参照。
NM法のすべて 増補版―アイデア生成の理論と実践的方法 中山 正和 産能大出版部 売り上げランキング : 228621 Amazonで詳しく見る |
ものづくり・発明を志向したH(ardware)型がその原型であるが、普及しているのは、その前半を取り出して簡略化したT型である。拡散的思考を担当するもので、ブレインストーミングを使うような場面では、これで代替できる。
今回の目的にはぴったりなので、これについて手順を説明しよう。
1.まずお題を決める。つまり何を解決したいのかをお題にする。
2.QK(Question of Keyword)「要するにどうなればいいか」という問いに答えてキーワードを決める。
キーワードは、問題解決の要を一言で言い表したものだが、一旦問題のおかれたコンテキスト(文脈・状況)から離れて思考を広げるために、問題解決を抽象化したものである。
抽象化というのが難しいなら、「要するにどうなればいいか」に文章で答えて、その答えの文章から最重要な動詞(ときに形容詞)をひとつ選ぶとよい。
3.QA(Question of Analogy)「~するもの/~なものといえば、例えば何があるか?」というアナロギーを導く問いにに、具体的な事物をあげて答える。せっかくコンテキスト(文脈・状況)から離れるのだから、取り組んでいる問題とは異分野の事物がよい。たとえば自然現象からアナロギーを選べば、自然が行ってる問題解決から学ぶことになる。
4.QB(Question of Background)「そこでは何が起きているか?」に答えて、アナロギーとして出た事物とそれが活動している状況をイメージする。絵を描くのもいい。絵をいうとおののく人もいるかもしれないが、6歳児が描くような絵がいい。
5.QC(Question of Concept)「それを何かに活かせないか?」という質問に答えて、これまでアナロギーとイメージで広げてきたものを、アイデアとして着地させる。頭の使い方としては、「お題(問題解決のテーマ)とかけまして、(QBで出たイメージ)と解きます、その意(こころ)は?」という謎かけを(ときに無理やりに)とくような感じである。
6.答えるべき4つの質問(QK,QA,QB,QC)には、それぞれ複数の答えがあり得る。これを繰り返して複数のアイデアを得ていく。
7.やり方としてはQAから一つのアナロギーを思いついたら、そいつが温かいうちに、→QB→QCとステップを先に進めていって、アイデアが得られるまでやり切る方がよい。
そしてそこでアイデアが出なくなったら、行き詰ったら一つ前のステップに戻って、次の答えへ進む。いわゆる深さ優先探索/縦型探索と呼ばれるやり方に似ている。
これに対して、まずはQAに答えていってアナロギーをたくさん集めて終えてからQBへ進む、幅優先探索/横型探索風のやり方だと、また元のアナロギーを考える頭に戻らなくてはならず、やりにくい。たくさんのアナロギーやバックグラウンドが一種の〈未解決案件〉として残ったままになるのも、やる気を損ないやすいようだ。
出来はどうあれ先にQCに答えて、どんどんアイデアという成果物を得たほうが、やる気もスピードも上がりやすい。
NM法T型の例
試しに一つやってみよう。
・Theme(お題):「すらすらブログを書く」
↓
QK(Question of Keyword)「要するにどうなればいいか」
・「ページが埋まればいい」→「埋める」
・「何でもいいから記事を出せればいい」→「出す」
Keyword「埋める」から
QA「埋める/埋まる」ものにはどんなものがあるか?
A.ゴミピット
QB「ゴミピットでは何が起きているか?」
B.コンテナが傾けられ溜め込まれたゴミがピットへとすべり落ちていく
QC(Question of Concept)「それを何かに活かせないか?」
C.貯め込んでいたものを一気に投下する→書物をリストを貯めておいて、たまったらブックリスト記事にして一挙放出
B.クレーンで持ち上げられたゴミが水平移動してピットの真上まで来てパカッと開く
QC(Question of Concept)「それを何かに活かせないか?」
C.違うところから持ってきて投下→自分の他のページや過去に書いたものからコピペ
・・・
Keyword「出す」から
QA「出す」ものにはどんなものがあるか?
A.宿題
QB「宿題では何が起きているか?」
B.締切があるので不完全でもとにかく出す
QC(Question of Concept)「それを何かに活かせないか?」
C.締切を設定して完成/未完成を問わずに投下する
C.「未完成である」ことを記事のネタにする
A.名刺
QB「名刺では何が起きているか?」
B.お互いに差し出した名刺を相手から受け取る
QC(Question of Concept)「それを何かに活かせないか?」
C.双方向なブログ記事→非難の応酬?誉め合い?他ブログとの相互投稿?
もうひとつ、たくさん作れる例として、
お題を「アイデアの生産法」とし、キーワード「集める」だけから広げてみた。
なお質問(QA,QB,QC)は省略している。
A:掃除機
B:速い空気の流れとともに細い口から吸い込む
C:高速で大量に集める
→強制連想法,ブレインライティング法
A:掃除機
B:流れを作りフィルターで濾しとる
C:大量のインプットから少数のよいものだけを残す
→要素分解×機械的組合せで数を作ってから、選択する
A:ピンセント
B:細かいものを拡大鏡で見ながら一つ一つを摘み上げる
C:中に含まれる必要だが小さなものを拾い上げる
→既存のアイデアをもう一度詳しく見て,使えるコンポーネントだけピックアップ
A:雨樋
B:予め設置された樋を重力にしたがって雨が流れ落ちていき自然に一箇所に集められる
C:自然にネタがたまる仕組み
→キーワード→アラートでネットから情報を集め、結果を専用メアドへ送付。
A:図書館
B:まとめて買入れ,ひとつひとつにナンバーを割当て,予めすべての本を分類できる体系に従って仕分され,それぞれの位置へ配架される
C:記事の分類を予め決めておき,入ってきたネタをその場で分類する(時間はかかるが,時間が経るごとにライブラリーは自己組織化され充実する)。
A:ラジオ体操のスタンプ
B:一回に付きひとつずつもらえる,これを毎日繰り返す
C:1日1個のアプローチ
→アイデア日記。アイデアだけでなく、アイデア作りに貢献する行動をなんでもいいので記録する。
A:観光地のスタンプ
B:一箇所に付きひとつずつ押せる,これを各箇所で繰り返す
C:定点観測系のネタあつめ
→一定の基準で,いろんな箇所からデータを集める
→(主客を逆転して)他人にいくつかのサイトを回ってもらう仕掛
A:ベルマーク
B:学校などに設置された箱の中に,子供たちがめいめいそれぞれの家出集めたマークを入れにやって来る
C:ソーシャルな手法,ネタを投稿してもらう場所を設ける
C:投稿サイトから掬い取る
→投稿サイト×ピンセットの手法
A:磁石で砂鉄
B:砂の上に磁石を這わせてくっついて来た砂鉄を一箇所で落とす,これを繰り返す
C:選別アプローチ→例えば、玉石混交のソース(資源)から,一定の条件にかかるものだけを引っ張り挙げる(フィルター)
→たとえばランダムネスなソース=辞書のコトバをランダムに拾う
NM法T型がもたらすもの
実は、普通にNM法T型を用いると、最後のQCから出てくる答えは「既存の名案」となりやすい。とくにその分野の問題解決に精通した玄人はそうなりやすい。
原因は、広がったイメージを今解こうとしている問題解決に着地させるQCのステップにある。QKで問題のおかれたコンテキスト(文脈・状況)を離脱し、QA→QBでアナロギーを梃子にして広がった発想が、お題の問題解決に役立てようとすることで引っ張り戻されるのだ。QCという質問が、脳裏から当てはまりそうな解決策をサルベージしてくるのだ、ともいえる。ときどき、うんうん考えるだけでは意識にのぼってこない「既存の解決策」が、QCという質問に促されて出てくることがある。
また、とてもじゃないが活かしようがない(QCに答えようがない)と思える、問題解決からかけ離れたアナロジーやイメージを無理やり引っ張り降ろす場合にこそ、既存のアイデアを超えたものが出る可能性がある。脳裏にある既存の解決策に結びつくものがないからこそ「かけ離れた」「活かしようがない」感じがするのである。そこで感じる抵抗は、つまるところ、頭をいつもとは違う方向に動かすことについての抵抗である。
NM法のプロトタイプであるH型では、QCで出てきた多数の実用的な解決策を、さらに掛け合わせるステップが後続する。ものづくり・発明を志向する以上、パテントが取れない「既存の名案」では困るからだ。
NM法としてはこの後半が重要で、QCまでの前半はむしろ、一つの視点にこだわらず問題を様々な面から眺めるための準備的意味合いが強い。
もっとも日常の問題解決では、「既存の名案」で間に合うことが多い。誰かに売りつけることを考えなければ、新奇で実績のないアイデアよりも、使い古された実績のある「既存の名案」の方がうまくいくことすら少なくない。
そして「とにかく問題解決にとりかかる」というテーマからすれば、ここまでで目標は一応達成されている。
「新しい」と「すぐれた」の両方を満足するアイデアだけを求めていると、頭の働きはギクシャクする。凡庸なアイデアをとにかく数出していけば、次第にどうでもよくなって、頭も随分スムーズに動くようになるのだが、アイデアを求める人や求められる状況は、多くの場合、そうした余裕を欠いている。
NM法は、そこに効く。
Binge Creat ideasのデッドロックを解き、頭をふたたび回転させる。
ありきたり過ぎて見逃しがちなアイデアも含めて、とにかく手順よく数多く生み出す。
「問題をさまざまな観点から見る」「まず多様な解決策を複数作り出す」という、問題解決に不可欠だが、小目標にはなっていても作業手順についてはユーザーに丸投げだった部分(ブレインストーミングにせよ「批判はするな自由にやれ」というだけだった)が、具体化されているところがミソである。
先に書いたが、NM法は自分の頭のなかをサルベージする方法である。
問題の中には、今の自分が知らないだけで、世の中に解き方/取り組み方が既に存在するものも少なくない。そうした場合は、自分の中をごそごそ探るよりも、調べ物をした方が速いことも多い。
また理詰めで一歩一歩分析していけばちゃんと解けるものもある。これらの正攻法はおろそかにすべきではない。
しか調べ物するのを待ってはくれず、正攻法では歯がたたない問題だってある。
NM法は頭の中にあるリソースを使う方法だが、それが役立つのは、リソースをいつもとは(そして蓄えた時予想していたのとは)異なる仕方で呼び出す/異なる角度で読み出すからだ。
このやり方から生まれた多数のアイデアを整理したり、掛け合わせたりするやり方(NM法のA型やS型やD型)や、他のメソッドと組み合わせ方(たとえば手塚治虫がストーリーをつくるのに使ったチャートで、分岐が思いつかない場合にNM法を使うとか)は、また別の機会に。
2013.01.28
問題解決を学ぶことは意志の力を学ぶこと-これは問題解決を知らない人のために書いた文章です
これは問題解決を知らない人のために書いた文章です。
問題解決について、最低限のことだけを説明します。
問題解決とは何をすることなのか? それを知るとどんな得することがあるのか? といった、世の中の問題解決について書かれたいろいろなものよりも、少し手前にある話題についてです。
問題解決って何?
問題解決とは、自分で目標を決めて、それに向かってうまく行動していくことです。
目標とは「こうしたい」とか「こうなりたい」と思うものです。「こんなのはいやだ」も、みがいていくことで目標になります。
決まった目標について〈うまく行動する〉のは、ものによっては機械にもできます。
アリやハチは、集団で協力してすばらしい巣をつくります。
他にも〈うまく行動する〉お手本にできるものは多いです。
ですが、目標を決めるのは人間だけです。
問題解決をするのは人間だけなのです。
問題解決-ない場合、ある場合
問題解決をやらないと、うまくいくかどうかは、いつも運まかせになります。
問題解決をやらないと、困ったことになっても、逃げ出すか、我慢するしかありません。
問題解決をやると、逃げ出す/我慢する以外の、それよりましな行動を選ぶことができます(いつもではないにしても)。
問題解決をやると、チャンスを、自分の知恵と意志の力で生み出すことができます(必ずではないにしても)。
問題解決をやると、ピンチが、自分の知恵と意志の力を試し鍛える機会になります(はじめからうまくいかないにしても)。
問題解決をやると、運命から人生を取り戻すことができます(すべてはないにしても)。
誰もがやっている問題解決
誰でも気付かないうちに問題解決をやっています。
悩む人、考える人は大抵、問題解決の最中です。
また、失敗したという人は問題解決をやった人です。
「こうしたい」と思って行動してはじめて、〈失敗〉することができるからです。
〈あきらめる〉ことさえも、問題解決の一種です。
というか、実際には、最も多く採用される問題解決の方法です。
いろいろやってみるためのエネルギーや時間やお金や材料などが足りないとき、〈何もしない〉ことが一番マシな行動である場合もあるからです。
なぜ問題解決を学ぶのか?
誰でもすでに問題解決をやっているのなら、どうしてわざわざ学ぶ必要があるのでしょうか?
それは自覚してやる方が、問題解決の質が高まるからです。
それに意識してやる方が、問題解決は上達します。
無自覚にやる問題解決は、ワンパターンに陥りがちです。
〈あきらめる〉という問題解決法でうまくいった人は、くりかえしこの方法を使いがちです。
〈怒りを周囲にぶちまけて、我慢できなくなった周囲の誰かに問題解決を丸投げする〉という手で何度か味をしめると、もう他の問題解決のやり方があることを思いつけなくなります。
〈あきらめる〉〈怒りをぶちまける〉という問題解決法は、繰り返しているとやがてその人の性格になり、さらに運命になります。
しかし、ひとつの問題解決は、どんな場合でも、一番よいやり方であるとは限りません。
問題解決を学ぶと、問題解決のやり方はいろいろあることを知ります。
人間は、ワンパターンな問題解決を取りがちなことや、それを避けるためのやり方・考え方についても学びます。
人が問題解決を学ぶのは、すでにやっている問題解決を反省して、その時々に応じた問題解決を探すことができるようになるためです。
また、問題解決を学ぶと、違った人が違った状況で用いた問題解決を、自分の問題に応用することもできるようになります。
つまり他の人から知恵を借りてくることを学ぶことにもなるのです。
さらに、問題解決を学ぶと、〈あきらめる〉〈他人にまかせる〉以外のことが自分にも可能であることを知ることになります。
何かを望んでそれを実現することが、自分にも可能であることを知ることになります。
それは、自分の意志の力を知ることです。
問題解決どんなときに役立つか?
未知や未体験の出来事と遭遇したとき、
知識や能力以上の課題が突き付けられたとき、
やり方や、そもそも何をすればいいか分からないとき、
つまり、どうしようもなくなったときに
問題解決は役に立ちます。
人間はあらゆることについて準備しておくことはできません。
知らないことやできないことは、どうしてもやってきます。
全知でも全能でもない人間に不安や恐怖の種はなくなりません。
しかし問題解決があります。
万能にはほど遠いですが、何もないよりはずっとましです。
問題解決は、やり方を作り出すやり方です。
今はない解決策を生み出すものです。
「できない」「しらない」ことに発する不安や恐怖を消すことはできなくても、受けて立つことはできます。
問題解決は、そのために磨かれてきた武器です。
(問題解決の方法)
問題に気付く/問題を見つける
問題に気付くことから、問題解決は始まります。
「問題解決」と言うように、「解決」はその半分でしかありません。
同じ状況におかれても、そこに問題を見つける人もいれば、そうしない人もいます。
一度、問題として捉えることができれば、いろんな手があります。
他人の手を借りることもできます。
しかし「問題」として取り上げることがなければ、何もはじまりません。
「問題」として捉え直さないうちは、それは単なる〈不幸〉や〈不運〉や〈不都合〉でしかありません。
嘆いたり怒ったりする以外に、できることはありません。
しかし感情は、問題を見つけ出すためのシグナルとしても使えます。
「これはおかしい。もっと何とかなってもいいはずだ」と考えたとき、〈不幸〉や〈不運〉や〈不都合〉を「問題」として捉え直したときから、問題解決は始まります。
運命から人生を取り戻す戦いが始まります。
問題を定義する、問題を設定する
問題を定義することは、解決しようとしている問題がどのようなものかをはっきりさせることです。
学校などで行われる試験の問題は、必ず解けるように作られています。でないと、問題をつくった人がヘマをやったと怒られます。
普通の問題解決では、問題を解決する人が、問題じたいをつくらなくてはなりません。
へたにつくると、解けるものも解けない問題になります。
うまくつくると、あっさり解決策が見つかったりします。あるいはよりよい解決策ができるようになります。
1個のオレンジを取り合う姉妹の小話がよく語られます。
これを〈平等に分けるにはどうすればよいか?〉という問題として定義すると、オレンジを二等分して分けるしかありません。
しかし、〈どちらも満足するにはどう分ければよいか?〉という問題として定義すると、ジャムをつくりたい姉は実の部分を、オレンジピールをつくりたい妹は皮の部分をとればよいことになります。
重さで考えるとこのわけ方は不公平ですが、半分ずつを分け合ったときよりも、姉も妹も、作りたかったものをよりたくさんつくることができます。
問題解決の上手下手は、そして問題解決の経験の差は、問題の定義の差に最もよく現れます。
あざやかに見える解決策は、実はあざやかな問題定義によることが多いです。
うまく解決策がみつからないときは、何度でも戻って問題をつくりなおす(定義しなおす)べきです。
いいえ、本当は解決策を探す前に、幾通りにも問題を定義するべきです。
問題解決が必要な場面は、当事者がひどく困っていたり追い詰められていたりすることも多いので、どうしても視野が狭くなりがちです。
これでは、うまくいかない〈これまでのやり方〉以外の手を思いつくことはできません。
幾通りにも問題を定義することで、問題のいろんな側面に気付きます。
問題がおかれている状況をより広い範囲で、より大きな全体の中で、捉えることもできるようになります。
解決策を考える
解決策は多いほどよいです。
問題解決が下手な人ほど、ひとつの解決策にこだわります。
一つがダメだと「またゼロからだ」と落ち込み、これが数回つづくと、もう問題解決じたいをあきらめます。
問題解決が上手な人は、最初からたくさんの解決策をつくります。これだと、一つがダメでも、すぐに他の解決策を試すことができます。
エジソンは一つの発明に、たくさんの試作品をつくって試しました。
たとえば蓄音機の音を出すラッパですが、何千という試作品(失敗作)が残っているそうです。
複数の解決策を比べてみることで、問題の気付かなかった面を発見したり、思いつかなかった解決策にたどり着いたりすることがあります。
ひとつひとつの解決策について、これを実施したらどうなるだろうと考えることで、問題をより深く理解することができます。
そうすると、もっと別のやり方で問題を定義できるかもしれません(問題の定義に戻りましょう)。
もっと別の解決策が浮かぶかもしれません(さらにもっと多くの解決策を考えましょう)。
大抵の問題には、複数の解決策があります。
どうしてもひとつしか解決策が思いつかない場合は、「なにもしない」「すべてやめる」「現状維持」といった(自覚されないだけで頻出の)問題解決法を付け加えましょう。
「もしも何の制約もなかったできる理想の解決法」も、たくさんの解決策を生み出す呼び水になります。取り除いた制約を少しずつ加えていって、少しだけ現実的な解決法を次々考えるのです。
「もしも~だったら」と考えることは、理想の状態以外でも、問題についての理解を深め、解決策を増やします。たとえば実際よりも制約を増やして、発想に刺激を与えることもよく使われます。
「あべこべにする」「他の解決策の一部を取り替える」のも、複数の解決策をつくるのに、よく使われる手です。
新しいことをする
まだ誰もやっていない〈新しいやり方〉をはじめるのは、問題解決の王道です。
大抵の問題解決の本には、このことばかり書いてあります。
問題解決のプロの人たちも、提案してくるのは〈新しいやり方〉ばかりです。
〈新しく〉ないとお金が取れないからです。
しかし自分で問題解決するときは、別に〈新しく〉なくても、うまく行けば、それで良いのです。
試したこともないのでうまくいくか未知数なところと、うまくいくまで試行錯誤が必要なことを考えれば、〈新しいやり方〉は危険が高く手間もかかります。
同じくらいの効果なら、〈新しく〉ない方が得です。
それでも〈新しいやり方〉が問題解決の王道なのは、わざわざ問題解決のことを考える場合は、今までのやり方ではどうやってもうまくいかなくて行き詰まっていることが多いからです。
このことは〈新しいやり方〉を見つけるのに、これまで探したことがないところを探さなくてはいけないことを教えてくれます。
人に尋ねる
よく知っている人に尋ねたり相談したりするのも、よく使われる問題解決の方法です。
中でも専門家は、専門としている分野について、他の人よりもずっとよく知っています。
自分が取り組もうとしている問題が、どの分野のものか分かるなら(たとえば病気になったら医者という専門家に相談することを大抵の人は知っています)、専門家は役に立ちます。
専門家は、あなたよりよく知っているだけの人ではありません。
あなたとは違う見方をしてくれる人でもあります。
たとえば医者は、ただ人間の体や病気に詳しいだけではなく、あなたの体や病気について、あなたとは違う見方をしてくれる人です。
こう考えておくと、専門家に問題解決を丸投げしたり、責任を押し付けたり、あるいは最初から馬鹿にしたりすることなく、問題解決の大切なパートナーとして専門家と付き合うことができます。
問題解決の必要を強く感じるとき、今までのやり方ではダメなことが多いのですが、自分だけでは古いやり方から抜け出すことは難しいことが多いです。
だからこそ、専門家があなたとは違う見方をしてくれることが役に立ちます。
逆に取り組んでいる問題について、あなたが専門家である場合、そして専門家のあなたがいろいろやってみてもうまくいかない場合は、他の専門家や時にはド素人に尋ねてみることもよいかもしれません。
他の専門家は、あなたが解決しなければならない問題と、別に付き合う義理がないので、あなたとは違う見方で問題を見ることができます。
ド素人は、その問題について、あなたが持っているような知識がないので、あなたとは違う見方で問題を見ることができます。
どちらが正しいかは、あまり重要ではありません。
問題に対して、いろんな見方ができることが重要です。
それに問題解決に、答がたった一つであることは、ほとんどありません。
そして、どのような解決策も、少なくとも部分的には合っています。
これまでに一番の解決策も、もっと駄目な解決策に触れることで、なお良くなっていくことがあります。
似ている問題解決を探す
〈新しいやり方〉ばかりが問題解決ではありません。
また〈新しいやり方〉も、100%完全に新しいことはありません。
似たような問題について、かつて成功した解決法は、そのまま使えなくても、ヒントをくれます。
失敗した解決法さえも、部分的には正しいことがあります。状況が変わって、今のほうが役に立つことすらあるのです。
かつての問題解決を行った人(昔のあなた自身かもしれません)が知らなかったことも、今のあなたは知っているかもしれません。
するとかつての問題解決者と、今のあなたでは、問題の見方が違うかもしれません。
ならばかつての問題解決者の解決法を見直すことで、問題についての違う見方を手に入れることができるかもしれません。
試行錯誤する
思いつきだけでは、問題を解決することはできません。
どんなに良さそうなアイデアも、一流の専門家が立てたプランも、試してみないことには、実際にうまくいくかどうか分かりません。
今までどおりのやり方で大丈夫な場合か、あるいはまぐれ当たりでもするのでなければ、どうしてもこの作業が必要です。
新しいことをやるのに、試行錯誤は絶対に欠かせません。
問題解決がうまくいかない人は、ここのところで手を抜くことが多いです。
試行錯誤と〈行き当りばったり〉の違いは、試すことをマネジメントしているかどうかです。
そのために、試行錯誤するときは、何のために何をやったか、その結果はどうだったか、ちゃんと記録をとります。
1回の試行ごとに記録すべき事項は、少なくとも次の5つです。
(1)事前想定 どうなると予想するか?
(2)試行 何をしたか/何に対して、どのように/いつ、どこで
(3)結果 その結果どうなったか?何が、どのように起こったか?
(4)分かったこと/うまくいったこと
(5)分からなかったこと/うまくいかなかったこと
(5)まで書き終えたら、次の試行を考えて、また(1)から書いていきます。
そして何度も読み直します。
書いたり、読み直したりしているときに思いついたことも、必ず書き残します。
どんなにくだらないことも、当たり前だと思えることも、書いて出します。
本当に大切なアイデアは、こうしたところから生まれてくることが多いのです。
問題解決について、最低限のことだけを説明します。
問題解決とは何をすることなのか? それを知るとどんな得することがあるのか? といった、世の中の問題解決について書かれたいろいろなものよりも、少し手前にある話題についてです。
問題解決って何?
問題解決とは、自分で目標を決めて、それに向かってうまく行動していくことです。
目標とは「こうしたい」とか「こうなりたい」と思うものです。「こんなのはいやだ」も、みがいていくことで目標になります。
決まった目標について〈うまく行動する〉のは、ものによっては機械にもできます。
アリやハチは、集団で協力してすばらしい巣をつくります。
他にも〈うまく行動する〉お手本にできるものは多いです。
ですが、目標を決めるのは人間だけです。
問題解決をするのは人間だけなのです。
問題解決-ない場合、ある場合
問題解決をやらないと、うまくいくかどうかは、いつも運まかせになります。
問題解決をやらないと、困ったことになっても、逃げ出すか、我慢するしかありません。
問題解決をやると、逃げ出す/我慢する以外の、それよりましな行動を選ぶことができます(いつもではないにしても)。
問題解決をやると、チャンスを、自分の知恵と意志の力で生み出すことができます(必ずではないにしても)。
問題解決をやると、ピンチが、自分の知恵と意志の力を試し鍛える機会になります(はじめからうまくいかないにしても)。
問題解決をやると、運命から人生を取り戻すことができます(すべてはないにしても)。
誰もがやっている問題解決
誰でも気付かないうちに問題解決をやっています。
悩む人、考える人は大抵、問題解決の最中です。
また、失敗したという人は問題解決をやった人です。
「こうしたい」と思って行動してはじめて、〈失敗〉することができるからです。
〈あきらめる〉ことさえも、問題解決の一種です。
というか、実際には、最も多く採用される問題解決の方法です。
いろいろやってみるためのエネルギーや時間やお金や材料などが足りないとき、〈何もしない〉ことが一番マシな行動である場合もあるからです。
なぜ問題解決を学ぶのか?
誰でもすでに問題解決をやっているのなら、どうしてわざわざ学ぶ必要があるのでしょうか?
それは自覚してやる方が、問題解決の質が高まるからです。
それに意識してやる方が、問題解決は上達します。
無自覚にやる問題解決は、ワンパターンに陥りがちです。
〈あきらめる〉という問題解決法でうまくいった人は、くりかえしこの方法を使いがちです。
〈怒りを周囲にぶちまけて、我慢できなくなった周囲の誰かに問題解決を丸投げする〉という手で何度か味をしめると、もう他の問題解決のやり方があることを思いつけなくなります。
〈あきらめる〉〈怒りをぶちまける〉という問題解決法は、繰り返しているとやがてその人の性格になり、さらに運命になります。
しかし、ひとつの問題解決は、どんな場合でも、一番よいやり方であるとは限りません。
問題解決を学ぶと、問題解決のやり方はいろいろあることを知ります。
人間は、ワンパターンな問題解決を取りがちなことや、それを避けるためのやり方・考え方についても学びます。
人が問題解決を学ぶのは、すでにやっている問題解決を反省して、その時々に応じた問題解決を探すことができるようになるためです。
また、問題解決を学ぶと、違った人が違った状況で用いた問題解決を、自分の問題に応用することもできるようになります。
つまり他の人から知恵を借りてくることを学ぶことにもなるのです。
さらに、問題解決を学ぶと、〈あきらめる〉〈他人にまかせる〉以外のことが自分にも可能であることを知ることになります。
何かを望んでそれを実現することが、自分にも可能であることを知ることになります。
それは、自分の意志の力を知ることです。
問題解決どんなときに役立つか?
未知や未体験の出来事と遭遇したとき、
知識や能力以上の課題が突き付けられたとき、
やり方や、そもそも何をすればいいか分からないとき、
つまり、どうしようもなくなったときに
問題解決は役に立ちます。
人間はあらゆることについて準備しておくことはできません。
知らないことやできないことは、どうしてもやってきます。
全知でも全能でもない人間に不安や恐怖の種はなくなりません。
しかし問題解決があります。
万能にはほど遠いですが、何もないよりはずっとましです。
問題解決は、やり方を作り出すやり方です。
今はない解決策を生み出すものです。
「できない」「しらない」ことに発する不安や恐怖を消すことはできなくても、受けて立つことはできます。
問題解決は、そのために磨かれてきた武器です。
(問題解決の方法)
問題に気付く/問題を見つける
問題に気付くことから、問題解決は始まります。
「問題解決」と言うように、「解決」はその半分でしかありません。
同じ状況におかれても、そこに問題を見つける人もいれば、そうしない人もいます。
一度、問題として捉えることができれば、いろんな手があります。
他人の手を借りることもできます。
しかし「問題」として取り上げることがなければ、何もはじまりません。
「問題」として捉え直さないうちは、それは単なる〈不幸〉や〈不運〉や〈不都合〉でしかありません。
嘆いたり怒ったりする以外に、できることはありません。
しかし感情は、問題を見つけ出すためのシグナルとしても使えます。
「これはおかしい。もっと何とかなってもいいはずだ」と考えたとき、〈不幸〉や〈不運〉や〈不都合〉を「問題」として捉え直したときから、問題解決は始まります。
運命から人生を取り戻す戦いが始まります。
問題を定義する、問題を設定する
問題を定義することは、解決しようとしている問題がどのようなものかをはっきりさせることです。
学校などで行われる試験の問題は、必ず解けるように作られています。でないと、問題をつくった人がヘマをやったと怒られます。
普通の問題解決では、問題を解決する人が、問題じたいをつくらなくてはなりません。
へたにつくると、解けるものも解けない問題になります。
うまくつくると、あっさり解決策が見つかったりします。あるいはよりよい解決策ができるようになります。
1個のオレンジを取り合う姉妹の小話がよく語られます。
これを〈平等に分けるにはどうすればよいか?〉という問題として定義すると、オレンジを二等分して分けるしかありません。
しかし、〈どちらも満足するにはどう分ければよいか?〉という問題として定義すると、ジャムをつくりたい姉は実の部分を、オレンジピールをつくりたい妹は皮の部分をとればよいことになります。
重さで考えるとこのわけ方は不公平ですが、半分ずつを分け合ったときよりも、姉も妹も、作りたかったものをよりたくさんつくることができます。
問題解決の上手下手は、そして問題解決の経験の差は、問題の定義の差に最もよく現れます。
あざやかに見える解決策は、実はあざやかな問題定義によることが多いです。
うまく解決策がみつからないときは、何度でも戻って問題をつくりなおす(定義しなおす)べきです。
いいえ、本当は解決策を探す前に、幾通りにも問題を定義するべきです。
問題解決が必要な場面は、当事者がひどく困っていたり追い詰められていたりすることも多いので、どうしても視野が狭くなりがちです。
これでは、うまくいかない〈これまでのやり方〉以外の手を思いつくことはできません。
幾通りにも問題を定義することで、問題のいろんな側面に気付きます。
問題がおかれている状況をより広い範囲で、より大きな全体の中で、捉えることもできるようになります。
解決策を考える
解決策は多いほどよいです。
問題解決が下手な人ほど、ひとつの解決策にこだわります。
一つがダメだと「またゼロからだ」と落ち込み、これが数回つづくと、もう問題解決じたいをあきらめます。
問題解決が上手な人は、最初からたくさんの解決策をつくります。これだと、一つがダメでも、すぐに他の解決策を試すことができます。
エジソンは一つの発明に、たくさんの試作品をつくって試しました。
たとえば蓄音機の音を出すラッパですが、何千という試作品(失敗作)が残っているそうです。
複数の解決策を比べてみることで、問題の気付かなかった面を発見したり、思いつかなかった解決策にたどり着いたりすることがあります。
ひとつひとつの解決策について、これを実施したらどうなるだろうと考えることで、問題をより深く理解することができます。
そうすると、もっと別のやり方で問題を定義できるかもしれません(問題の定義に戻りましょう)。
もっと別の解決策が浮かぶかもしれません(さらにもっと多くの解決策を考えましょう)。
大抵の問題には、複数の解決策があります。
どうしてもひとつしか解決策が思いつかない場合は、「なにもしない」「すべてやめる」「現状維持」といった(自覚されないだけで頻出の)問題解決法を付け加えましょう。
「もしも何の制約もなかったできる理想の解決法」も、たくさんの解決策を生み出す呼び水になります。取り除いた制約を少しずつ加えていって、少しだけ現実的な解決法を次々考えるのです。
「もしも~だったら」と考えることは、理想の状態以外でも、問題についての理解を深め、解決策を増やします。たとえば実際よりも制約を増やして、発想に刺激を与えることもよく使われます。
「あべこべにする」「他の解決策の一部を取り替える」のも、複数の解決策をつくるのに、よく使われる手です。
新しいことをする
まだ誰もやっていない〈新しいやり方〉をはじめるのは、問題解決の王道です。
大抵の問題解決の本には、このことばかり書いてあります。
問題解決のプロの人たちも、提案してくるのは〈新しいやり方〉ばかりです。
〈新しく〉ないとお金が取れないからです。
しかし自分で問題解決するときは、別に〈新しく〉なくても、うまく行けば、それで良いのです。
試したこともないのでうまくいくか未知数なところと、うまくいくまで試行錯誤が必要なことを考えれば、〈新しいやり方〉は危険が高く手間もかかります。
同じくらいの効果なら、〈新しく〉ない方が得です。
それでも〈新しいやり方〉が問題解決の王道なのは、わざわざ問題解決のことを考える場合は、今までのやり方ではどうやってもうまくいかなくて行き詰まっていることが多いからです。
このことは〈新しいやり方〉を見つけるのに、これまで探したことがないところを探さなくてはいけないことを教えてくれます。
人に尋ねる
よく知っている人に尋ねたり相談したりするのも、よく使われる問題解決の方法です。
中でも専門家は、専門としている分野について、他の人よりもずっとよく知っています。
自分が取り組もうとしている問題が、どの分野のものか分かるなら(たとえば病気になったら医者という専門家に相談することを大抵の人は知っています)、専門家は役に立ちます。
専門家は、あなたよりよく知っているだけの人ではありません。
あなたとは違う見方をしてくれる人でもあります。
たとえば医者は、ただ人間の体や病気に詳しいだけではなく、あなたの体や病気について、あなたとは違う見方をしてくれる人です。
こう考えておくと、専門家に問題解決を丸投げしたり、責任を押し付けたり、あるいは最初から馬鹿にしたりすることなく、問題解決の大切なパートナーとして専門家と付き合うことができます。
問題解決の必要を強く感じるとき、今までのやり方ではダメなことが多いのですが、自分だけでは古いやり方から抜け出すことは難しいことが多いです。
だからこそ、専門家があなたとは違う見方をしてくれることが役に立ちます。
逆に取り組んでいる問題について、あなたが専門家である場合、そして専門家のあなたがいろいろやってみてもうまくいかない場合は、他の専門家や時にはド素人に尋ねてみることもよいかもしれません。
他の専門家は、あなたが解決しなければならない問題と、別に付き合う義理がないので、あなたとは違う見方で問題を見ることができます。
ド素人は、その問題について、あなたが持っているような知識がないので、あなたとは違う見方で問題を見ることができます。
どちらが正しいかは、あまり重要ではありません。
問題に対して、いろんな見方ができることが重要です。
それに問題解決に、答がたった一つであることは、ほとんどありません。
そして、どのような解決策も、少なくとも部分的には合っています。
これまでに一番の解決策も、もっと駄目な解決策に触れることで、なお良くなっていくことがあります。
似ている問題解決を探す
〈新しいやり方〉ばかりが問題解決ではありません。
また〈新しいやり方〉も、100%完全に新しいことはありません。
似たような問題について、かつて成功した解決法は、そのまま使えなくても、ヒントをくれます。
失敗した解決法さえも、部分的には正しいことがあります。状況が変わって、今のほうが役に立つことすらあるのです。
かつての問題解決を行った人(昔のあなた自身かもしれません)が知らなかったことも、今のあなたは知っているかもしれません。
するとかつての問題解決者と、今のあなたでは、問題の見方が違うかもしれません。
ならばかつての問題解決者の解決法を見直すことで、問題についての違う見方を手に入れることができるかもしれません。
試行錯誤する
思いつきだけでは、問題を解決することはできません。
どんなに良さそうなアイデアも、一流の専門家が立てたプランも、試してみないことには、実際にうまくいくかどうか分かりません。
今までどおりのやり方で大丈夫な場合か、あるいはまぐれ当たりでもするのでなければ、どうしてもこの作業が必要です。
新しいことをやるのに、試行錯誤は絶対に欠かせません。
問題解決がうまくいかない人は、ここのところで手を抜くことが多いです。
試行錯誤と〈行き当りばったり〉の違いは、試すことをマネジメントしているかどうかです。
そのために、試行錯誤するときは、何のために何をやったか、その結果はどうだったか、ちゃんと記録をとります。
1回の試行ごとに記録すべき事項は、少なくとも次の5つです。
(1)事前想定 どうなると予想するか?
(2)試行 何をしたか/何に対して、どのように/いつ、どこで
(3)結果 その結果どうなったか?何が、どのように起こったか?
(4)分かったこと/うまくいったこと
(5)分からなかったこと/うまくいかなかったこと
(5)まで書き終えたら、次の試行を考えて、また(1)から書いていきます。
そして何度も読み直します。
書いたり、読み直したりしているときに思いついたことも、必ず書き残します。
どんなにくだらないことも、当たり前だと思えることも、書いて出します。
本当に大切なアイデアは、こうしたところから生まれてくることが多いのです。
世界一やさしい問題解決の授業―自分で考え、行動する力が身につく 渡辺 健介,matsu(マツモト ナオコ) ダイヤモンド社 売り上げランキング : 666 Amazonで詳しく見る |
問題解決の心理学―人間の時代への発想 (中公新書 (757)) 安西 祐一郎 中央公論社 売り上げランキング : 105362 Amazonで詳しく見る |
いかにして問題をとくか G. ポリア,柿内 賢信 丸善 売り上げランキング : 3865 Amazonで詳しく見る |
2013.01.20
アイデアが降りてこないあなたを神様に助けさせる7つの道具
アイデアは何もないところからは生まれない。
殺風景な会議室、変わり映えしない窓の外の風景、無機質な壁紙、顔を突き合わせ飽きたいつもメンバー、どちらを向いても見るべきものは何もない。そんなところで行われるブレインストーミングから、ろくなアイデアが生まれるはずがない。
インプットのないまま「創造的」なことを考えようと努力すればするほど、脳は決まりきった処理をただ繰り返すだけとなる。
本当の暴風雨(ストーム)が降るには、雨滴(レインドロップ)の核になるものが必要なように、知恵の粒(ブレインドロップ)ができるのにも何か(塵や埃みたいなのでよい)が要る。
エピクロスは、デモクリトスの完璧な原子論に、ほんの少しの《ずらし》、クリナメン=偏奇する運動変化を付け加え、過去から未来永劫にいたるまでドミノ倒しのような必然性に閉じ込められていた宇宙から、自由を救い出した。
ゼロではダメだ。プラス1が望めないなら、マイナス1でもいい。
素材が見つけられないなら、せめて制約を増やそう。片目をつぶれ。利き手をしばれ。
思考の袋小路を抜けるのも必要なのは、ほんの少しの(意味のないノイズで足りることすらある)インプットである。
ずらし=ノイズは、たとえば、コイン・トスでもサイコロを振ることでも手に入る。
辞書のページをランダムに開いたり、ウィキペディアの項目をランダムに表示する〈おまかせ表示〉なんてものもある。
しかし、間をおかずそのまま思考や連想に入るには、我々が待ち望むアイデアにもう少しだけ近い形でインプットが得られたほうがいい。
以下に紹介するのはノイズ発生器より、ほんの少しだけ、ましなツールたちである。
Oblique Strategies
今述べたような目的のためにつくられた〈創造性デッキ〉の中では最も有名なもの。
1975年、音楽家ブライアン・イーノと画家ペーター・シュミットが考案した113枚のカードからなるデッキで、その後改訂が繰り返されている。
カードの1枚1枚には、たとえば次のようなフレーズが書かれている。
・Honor thy error as a hidden intention
(汝の過ちを、隠れた意図として尊重せよ)
・A very small object. Its center
(とても小さなもの、その真ん中)
・Reverse
(裏返せ)
・Only a part, not the whole
(単なる一部だ、全体じゃない)
副題(?)には、Over one hundred worthwhile dilemmas(100を超える価値あるジレンマ)とあり、ある人はクリエーターのための(禅でいうところの)公案、あるいは創造性と問題解決のための易(あるいは、おみくじ?)と呼んでいる。
ネットで試せるところだけでも相当な数があるが、以下のサイトがシンプルでオススメ。
http://oblicard.com/
iPhoneで試せるアプリにも、無料のものがある。
Oblique Strategies Cards
カテゴリ: 仕事効率化
価格: 無料
Androidアプリはこちら。
Creative Whack Pack
"A Whack on the Side of the Head"(邦訳:『頭にガツンと一撃』 (新潮文庫))のロジャー・フォン・イークが、開発した64枚のカードからなる創造性デッキ。
各カードは下のように、"A whack:on the side of the head"から採られた、フレーズとイラストと解説からできている。
もっと深く掘れ
エミール・シャルティエ("アラン"というペンネームで知られる哲学者)曰く、「 アイディアがたった一つしかない時ほど危険なことはない」。最初に見つけた正解で足を止めるな。もっと深く掘れ、別のものを探せ。 魚が臭わないようにするにはどうする?できるだけ速やかに料理しろ。猫をそばにおけ。香を焚け。鼻を切り落とせ。 次のことを心に留めること:良いアイデアを得る最もよい方法は、たくさんのアイデアを得ることだ。表面をめくれば、その下にどんなよいアイデアがあるか? 第二の正解は何か?
よくわかる丁寧な説明だ(Oblique Strategiesだったら“Is it finished?”(それでおしまい)とだけ言って済ましているところだ)。
Oblique Strategiesと比べると、含蓄深さとかっこ良さの点で負けるが、分かりやすさと日常的実用性では優っている。Oblique Strategiesが、アーティストの創造性/問題解決のツールならば、Creative Whack Packの方はビジネス向けだと言えるかもしれない。
iPhoneアプリもある。
Creative Whack Pack
カテゴリ: ビジネス
価格: ¥170
Method Cards(IDEO)
(本家サイト)http://www.ideo.com/work/method-cards/
アメリカのデザイン会社IDEO(アイディオ)では、デザインの発想とコミュニケーションを支援するために「メソッド・カード」という51枚組のカードを開発した。
カードは「Learn学ぶ」「Look観察する」「Ask尋ねる」「Tryやってみる」という4つのカテゴリーに分類されている。それぞれのカードには、デザインを生み出すための発想手法や行動指針が配され、IDEOが経験してきたデザイン・プロセスの一場面を切り取った写真が使われている。
チームやクライエントのコミュニケーションには、プロセスの各段階をビジュアルで伝えたり、並べ替えてプロセスの検討するのに用いる。
かように本来的にはコミュニケーション・ツールだが、個人の発想の際にも(自分相手のコミュニケーションと見なすこどできる)、ランダムにカードを引いたり、また複数のカードを並べ替えたりして用いる事ができる。
これまたiPhoneアプリがある。
IDEO Method Cards
カテゴリ: 教育
価格: 無料
同種のものは多いが、ここではSocial Inovation for Kentが開発したThe SILK method deckを紹介しておこう。
http://socialinnovation.typepad.com/silk/silk-method-deck.html
The Observation Deck
Observation Deckは、筆が進まなくなった物書きのためのカード・デッキである。
Literary escort (取材旅行中の作家やジャーナリストに同行する)の仕事をしていたNaomi Epel が、その経験から開発したもので、3×5インチ大の50枚のカードと付属本1冊から構成されている。
原稿を書いていて行き詰まったら、5カードを1枚を引き、付属本の該当ページを読んで、その指示に従う。
カードに書かれている言葉は、他のカードデッキと同様、シンプルなものだ。
・Zoom In and Out
(ズームインとズームアウト)
・Visit Dictionary
(辞書を訪ねよ)
・Make a List
(リストをつくれ)
・Feed Your Senses
(感覚にエサをやれ)
該当ページには、それぞれのカードに書かれたアプローチで、有名作家がどんな風に切り抜けたかといった逸話も紹介されている。例えば、
Consult the News
(ニュースに聞け)
というカードの解説には、ご想像の通り、トルーマン・カポーティの『冷血』の逸話が登場する。
易 経
需、有孚。光亨。貞吉。利渉大川。
需はまことあり。おおいに亨(とお)る。貞にして吉。大川を渡るに利あり。
Hsu intimates that, with the sincerity which is declared in it, there will be brilliant sucess.
With firmness there will be good fortune; and it will be advantageous to cross the great stream.
Oblique Strategiesがクリエイターのための易経なら、本家の易経Yì Jīng、I Chingは、共同体の存亡に関わる課題を扱う、帝王の問題解決ツールである。
まず八卦を伏羲がつくり、それを組み合わせ六十四卦としたのが神農、六十四卦の全体的な意味について記述する卦辞は周の文王、卦を構成している6本の爻位(こうい)の意味を説明する爻辞は周公、注釈である十翼(易伝)は孔子による、とされる。豪華さではイーノ&シュミットにも負けてない。っていうか余裕で勝ってる。
大きな話をしたが、易経自体にサイズ指定はない。(牛刀をもって鶏を割く感は否めないが)大事から小事まで取り扱えるし、問い掛け(Query)自体はコイントスで足りる。有名かつ歴史があるのにシンプルなので、ネット上でもいくらでもサイトがある。これらを使えばクリックひとつで済む。
適当に象徴的かつ抽象的で、途方に暮れそうなほどに、意味をどうとでもとれるところも、見ようによっては長所である。
原文は理解し難い、占い的に噛み砕かれたものは下世話すぎる、というなら欧米語版もある。平易な単語で深いことを言おうとする翻訳が、却って妄想のタネとなる。たとえば次のサイト
http://www.ichingonline.net/index.php
iPhoneアプリは売るほどある。たとえば
I Ching 2
カテゴリ: ライフスタイル
価格: ¥170
Androidも。
アイデアトランプ
舶来品ばかりが並んだ。
ランダムネスをつかった発想法、創造性支援は、原理はシンプルだし、いくらでもバリエーションが作れそうなのに、KJ法やMN法を生んだ日本にしては、寡聞にしてこの方面での貢献をあまり知らない。
アイデアプラント代表の石井力重氏が、ビジネスマン向きの「SCAMPER」と技術者向けの「TRIZ」を元に開発した「アイデアトランプ」がある。
発想法かるた
カードにはなっていないのだが、純和製で、創造性デッキに近いものに、板倉聖宣が作った『発想法かるた』がある。科学史家、仮説実験授業の提唱者である板倉の思考のエッセンスで滋味深いが、惜しむらくは名より実をとる板倉らしく、フレーズの語呂はよくない。だが、他にないものがある。
・理想なければ妥協なし
・真理は十年にして勝つ
・吹聴してわかるたのしい知識
・まねの限界が独自性
・アンプをいじれるのはただ一人(先駆者効果)
他のセットを、クリエイター向き、ビジネス向き……との紹介してきたが、これは思索者や研究者のための創造性ツールかもしれない。
(関連記事)
・物書きが悪魔と契約する前に試すべき7つの魔道具 読書猿Classic: between / beyond readers
殺風景な会議室、変わり映えしない窓の外の風景、無機質な壁紙、顔を突き合わせ飽きたいつもメンバー、どちらを向いても見るべきものは何もない。そんなところで行われるブレインストーミングから、ろくなアイデアが生まれるはずがない。
インプットのないまま「創造的」なことを考えようと努力すればするほど、脳は決まりきった処理をただ繰り返すだけとなる。
本当の暴風雨(ストーム)が降るには、雨滴(レインドロップ)の核になるものが必要なように、知恵の粒(ブレインドロップ)ができるのにも何か(塵や埃みたいなのでよい)が要る。
エピクロスは、デモクリトスの完璧な原子論に、ほんの少しの《ずらし》、クリナメン=偏奇する運動変化を付け加え、過去から未来永劫にいたるまでドミノ倒しのような必然性に閉じ込められていた宇宙から、自由を救い出した。
ゼロではダメだ。プラス1が望めないなら、マイナス1でもいい。
素材が見つけられないなら、せめて制約を増やそう。片目をつぶれ。利き手をしばれ。
思考の袋小路を抜けるのも必要なのは、ほんの少しの(意味のないノイズで足りることすらある)インプットである。
ずらし=ノイズは、たとえば、コイン・トスでもサイコロを振ることでも手に入る。
辞書のページをランダムに開いたり、ウィキペディアの項目をランダムに表示する〈おまかせ表示〉なんてものもある。
しかし、間をおかずそのまま思考や連想に入るには、我々が待ち望むアイデアにもう少しだけ近い形でインプットが得られたほうがいい。
以下に紹介するのはノイズ発生器より、ほんの少しだけ、ましなツールたちである。
Oblique Strategies
今述べたような目的のためにつくられた〈創造性デッキ〉の中では最も有名なもの。
1975年、音楽家ブライアン・イーノと画家ペーター・シュミットが考案した113枚のカードからなるデッキで、その後改訂が繰り返されている。
カードの1枚1枚には、たとえば次のようなフレーズが書かれている。
・Honor thy error as a hidden intention
(汝の過ちを、隠れた意図として尊重せよ)
・A very small object. Its center
(とても小さなもの、その真ん中)
・Reverse
(裏返せ)
・Only a part, not the whole
(単なる一部だ、全体じゃない)
副題(?)には、Over one hundred worthwhile dilemmas(100を超える価値あるジレンマ)とあり、ある人はクリエーターのための(禅でいうところの)公案、あるいは創造性と問題解決のための易(あるいは、おみくじ?)と呼んでいる。
ネットで試せるところだけでも相当な数があるが、以下のサイトがシンプルでオススメ。
http://oblicard.com/
iPhoneで試せるアプリにも、無料のものがある。
Oblique Strategies Cards
カテゴリ: 仕事効率化
価格: 無料
Androidアプリはこちら。
Creative Whack Pack
Creative Whack Pack Roger Von Oech United States Games Systems 売り上げランキング : 122349 Amazonで詳しく見る |
"A Whack on the Side of the Head"(邦訳:『頭にガツンと一撃』 (新潮文庫))のロジャー・フォン・イークが、開発した64枚のカードからなる創造性デッキ。
各カードは下のように、"A whack:on the side of the head"から採られた、フレーズとイラストと解説からできている。
もっと深く掘れ
エミール・シャルティエ("アラン"というペンネームで知られる哲学者)曰く、「 アイディアがたった一つしかない時ほど危険なことはない」。最初に見つけた正解で足を止めるな。もっと深く掘れ、別のものを探せ。 魚が臭わないようにするにはどうする?できるだけ速やかに料理しろ。猫をそばにおけ。香を焚け。鼻を切り落とせ。 次のことを心に留めること:良いアイデアを得る最もよい方法は、たくさんのアイデアを得ることだ。表面をめくれば、その下にどんなよいアイデアがあるか? 第二の正解は何か?
よくわかる丁寧な説明だ(Oblique Strategiesだったら“Is it finished?”(それでおしまい)とだけ言って済ましているところだ)。
Oblique Strategiesと比べると、含蓄深さとかっこ良さの点で負けるが、分かりやすさと日常的実用性では優っている。Oblique Strategiesが、アーティストの創造性/問題解決のツールならば、Creative Whack Packの方はビジネス向けだと言えるかもしれない。
iPhoneアプリもある。
Creative Whack Pack
カテゴリ: ビジネス
価格: ¥170
Method Cards(IDEO)
IDEO Method Cards: 51 Ways to Inspire Design William Stout 売り上げランキング : 18482 Amazonで詳しく見る |
(本家サイト)http://www.ideo.com/work/method-cards/
アメリカのデザイン会社IDEO(アイディオ)では、デザインの発想とコミュニケーションを支援するために「メソッド・カード」という51枚組のカードを開発した。
カードは「Learn学ぶ」「Look観察する」「Ask尋ねる」「Tryやってみる」という4つのカテゴリーに分類されている。それぞれのカードには、デザインを生み出すための発想手法や行動指針が配され、IDEOが経験してきたデザイン・プロセスの一場面を切り取った写真が使われている。
チームやクライエントのコミュニケーションには、プロセスの各段階をビジュアルで伝えたり、並べ替えてプロセスの検討するのに用いる。
かように本来的にはコミュニケーション・ツールだが、個人の発想の際にも(自分相手のコミュニケーションと見なすこどできる)、ランダムにカードを引いたり、また複数のカードを並べ替えたりして用いる事ができる。
これまたiPhoneアプリがある。
IDEO Method Cards
カテゴリ: 教育
価格: 無料
同種のものは多いが、ここではSocial Inovation for Kentが開発したThe SILK method deckを紹介しておこう。
http://socialinnovation.typepad.com/silk/silk-method-deck.html
The Observation Deck
The Observation Deck: A Tool Kit for Writers (Past & Present) Naomi Epel Chronicle Books 売り上げランキング : 4212 Amazonで詳しく見る |
Observation Deckは、筆が進まなくなった物書きのためのカード・デッキである。
Literary escort (取材旅行中の作家やジャーナリストに同行する)の仕事をしていたNaomi Epel が、その経験から開発したもので、3×5インチ大の50枚のカードと付属本1冊から構成されている。
原稿を書いていて行き詰まったら、5カードを1枚を引き、付属本の該当ページを読んで、その指示に従う。
カードに書かれている言葉は、他のカードデッキと同様、シンプルなものだ。
・Zoom In and Out
(ズームインとズームアウト)
・Visit Dictionary
(辞書を訪ねよ)
・Make a List
(リストをつくれ)
・Feed Your Senses
(感覚にエサをやれ)
該当ページには、それぞれのカードに書かれたアプローチで、有名作家がどんな風に切り抜けたかといった逸話も紹介されている。例えば、
Consult the News
(ニュースに聞け)
というカードの解説には、ご想像の通り、トルーマン・カポーティの『冷血』の逸話が登場する。
易 経
需、有孚。光亨。貞吉。利渉大川。
需はまことあり。おおいに亨(とお)る。貞にして吉。大川を渡るに利あり。
Hsu intimates that, with the sincerity which is declared in it, there will be brilliant sucess.
With firmness there will be good fortune; and it will be advantageous to cross the great stream.
Oblique Strategiesがクリエイターのための易経なら、本家の易経Yì Jīng、I Chingは、共同体の存亡に関わる課題を扱う、帝王の問題解決ツールである。
まず八卦を伏羲がつくり、それを組み合わせ六十四卦としたのが神農、六十四卦の全体的な意味について記述する卦辞は周の文王、卦を構成している6本の爻位(こうい)の意味を説明する爻辞は周公、注釈である十翼(易伝)は孔子による、とされる。豪華さではイーノ&シュミットにも負けてない。っていうか余裕で勝ってる。
大きな話をしたが、易経自体にサイズ指定はない。(牛刀をもって鶏を割く感は否めないが)大事から小事まで取り扱えるし、問い掛け(Query)自体はコイントスで足りる。有名かつ歴史があるのにシンプルなので、ネット上でもいくらでもサイトがある。これらを使えばクリックひとつで済む。
適当に象徴的かつ抽象的で、途方に暮れそうなほどに、意味をどうとでもとれるところも、見ようによっては長所である。
原文は理解し難い、占い的に噛み砕かれたものは下世話すぎる、というなら欧米語版もある。平易な単語で深いことを言おうとする翻訳が、却って妄想のタネとなる。たとえば次のサイト
http://www.ichingonline.net/index.php
iPhoneアプリは売るほどある。たとえば
I Ching 2
カテゴリ: ライフスタイル
価格: ¥170
Androidも。
アイデアトランプ
アイデアトランプ 株式会社マグネットデザイン 売り上げランキング : 14012 Amazonで詳しく見る |
舶来品ばかりが並んだ。
ランダムネスをつかった発想法、創造性支援は、原理はシンプルだし、いくらでもバリエーションが作れそうなのに、KJ法やMN法を生んだ日本にしては、寡聞にしてこの方面での貢献をあまり知らない。
アイデアプラント代表の石井力重氏が、ビジネスマン向きの「SCAMPER」と技術者向けの「TRIZ」を元に開発した「アイデアトランプ」がある。
発想法かるた
発想法かるた (ものの見方考え方シリーズ 2) 板倉 聖宣 仮説社 売り上げランキング : 288175 Amazonで詳しく見る |
カードにはなっていないのだが、純和製で、創造性デッキに近いものに、板倉聖宣が作った『発想法かるた』がある。科学史家、仮説実験授業の提唱者である板倉の思考のエッセンスで滋味深いが、惜しむらくは名より実をとる板倉らしく、フレーズの語呂はよくない。だが、他にないものがある。
・理想なければ妥協なし
・真理は十年にして勝つ
・吹聴してわかるたのしい知識
・まねの限界が独自性
・アンプをいじれるのはただ一人(先駆者効果)
他のセットを、クリエイター向き、ビジネス向き……との紹介してきたが、これは思索者や研究者のための創造性ツールかもしれない。
(関連記事)
・物書きが悪魔と契約する前に試すべき7つの魔道具 読書猿Classic: between / beyond readers