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俺の友達、善逸は面喰いだ。
女の人が大好きで、中でも綺麗で可愛い女の人にはデレデレになる。 本人に言えば否定されそうだけど、綺麗な顔立ちの男の人にも弱い。 確かにかっこいい男の人に歯軋りするけれど、それは女の人が絡む時だけで純粋にイケメンと称される男の人達にはむしろ好印象を抱いている。 そして女の人でも男の人でも自分好みの顔をジッと見詰めるクセがあった。
中高一貫の学園、しかもその校内の食堂になると百人は軽く収容出来る別館だ。 教室や屋上、校庭でも食べられるが大抵は食堂を利用するため昼休みになれば中等部の生徒、高等部の生徒、教職員が一堂にごった返す。 ガヤガヤと賑わう食堂内、焼き魚定食の塩鯖を解す俺の向かい側で伊之助が持参した弁当と大盛ラーメンを頬張り、隣で善逸がランチのオムライスを食べ…いや、スプーンで突いていた。 ふんわりの黄色い卵を掬うでもなくその表面をツルツルと擦る。 お腹が空いたと騒ぎ、競争率の高いオムライスが購入出来たとテンション高く喜んでいたのにそれがもう意識外だ。 伊之助が「紋逸、それいらねえのか!?腹一杯なのか!?なあ!?」なんてキラキラした目で横取りする気満々なのにも気付かず、斜め向かい側のテーブルに視線を向けていた。 ジッと見詰める先にいる人は、 「うまい!うまい!」 力強い声とワシワシ動く手捌きでランチメニューのメンチカツ定食を平らげる煉獄先生の大皿に、自ら食べている大盛天丼の中から多分さつま芋だろう一つを乗せた。 メンチカツを取ろうとした煉獄先生の箸は迷いなく新たに乗せられた天ぷらを掴み、ガブリと頬張る。 そうして「うまい!うまい!」の声が「わっしょい!わっしょい!」に変わるのを聞き届けてテーブルに突っ伏し、盛大に吹き出した。 その向かいにいた冨岡先生の背中も良く見れば細かく震えている。 ついでに被弾した周りの生徒も一斉に吹き出す、ちょっとした地獄絵図が出来上がった。 俺もお茶を飲み込んだ後だったから良かったものの、口に含んだままだったら絶対吹き出すところだった。 腹筋が思わず鍛えられただけで済んだ。 「あははははっ!お前のそれっ!やっぱ派手に最高だわ!」 ガタリと音を立てて椅子を下げ大きな体を折り曲げて笑い倒すのを見て、咀嚼し終えた煉獄先生がその頭を盛大に叩く。 「天誅!」 結構大きな音と共に、結んでいた髪が鳥の巣みたいになる。 「いってえ!強く叩き過ぎだろ馬鹿力が」 反射的に叩かれた頭に手を遣り、乱れたのに気付きヘアゴムを取った。 その途端まるで飴細工みたいな白っぽい銀色の髪がふわりと舞い、その途端「ふぁ…っ!?」なんて声が隣から零れる。 大きい手を全体に使い手櫛で整えた髪を小指以外の指で広げたゴムで素早く纏める動作は慣れたものだった。 どこかしこから噎せて咳き込む音が聞こえる中、 「…はあ、笑ってる顔も良い」 うっとりとした声が隣の席から漏れる。 この一連の流れを映していても、見ているのはただ一人。 「うまい!うまい!」 またワシワシと食事を再開する煉獄先生の隣で、大きな一口で天丼を頬張る人。 パクンパクン頬張る姿は豪快とも言える食べ方だけど下品な感じはしない。 見ていて気持ち良い食べっぷりで大盛のそれを減らしていく。 地毛だという白銀色の髪色に見合う薄い色素の肌に映える石榴色の虹彩。 その左目を彩る奇抜なメイク。 丼ぶりを持つ手の先はカラフルなネイル。 高い身長に筋肉質の体、長い手脚はモデルをしていると言われても十人が十人中信じるだろう。 そして今日着ているTシャツは目がチカチカする原色の赤で、黒地に色とりどりのペンキをぶちまけな様なパーカーを羽織っている。 派手な物、派手な事、とにかく派手を好むその人が我が学園の美術教師、宇髄先生だ。 とてもじゃないが先生に見えない個性的なファッション、芸術だと言ってダイナマイトで教室を爆破させる破天荒さで輩先生と言われているが、恵まれた体躯とメイクでは隠し切れない顔の造りで学園内の女子に大人気だ。 善逸が好きになり告白する女子は必ず「宇髄先生が好きだから」と言って断る。 それで失恋したと泣きに泣いてキーキー言いながら宇髄先生への恨み辛みを口にするのに、いつの間にかいかにかっこいいかを語るのだ。 最初の数回は慰めていたけれど最近は宇髄先生の話をして早々に逸らす事にしている。 そうすれば善逸は、すぐさま失恋を忘れるから。 「あー、めっちゃイケメン…。何あれ。天丼食べてても顔が良いって何あれ。宇髄先生の目って一見怖く見えるけど大きいのに切れ長ですっきりしてるからそう見えるだけでパーツだけ見れば猫の目みたいで綺麗だよね。睫毛も長いしあの目の色ピジョンブラッドみたい。あ、ピジョンブラッドってルビーの最高峰なんだ。宝石だよ、宝石。顔面が宝石箱だよ。俺の目ってどんぐり眼って感じで真ん丸だし、ああいう形が良かったなあ。鼻筋だってめっちゃ通ってるし、彫りが深いだろ?目と眉の間隔が近いほどイケメンなんだって。まあ先生の眉毛は一見ないっぽいから輩に見えるけど、元々の色が肌色に近いからであって近くで見たら綺麗に整えてあるんだよ。唇だって薄いけど形良いし、少し乾燥してる時ペロって舐める仕草がまたかっこいいのなんのって」 目線は先生を捉えたまま出て来る賛辞の数々。 もう目隠しして福笑いさせても正確な位置に各パーツを配置出来るんじゃないかってほどそれはじっくり見詰めていた。 「どんぐり…?お前の目ってどんぐりなのか?」 つやつやのどんぐり集めが趣味の伊之助が反応してまじまじと善逸の目を凝視する。 そんな伊之助の口の周りにはラーメンの汁が盛大に飛んでいたから、立ち上がって手を伸ばしハンカチで拭う。 「お前はかーちゃんか!」なんて嫌がられるけど俺は長男だから無意識にでも手が動いてしまうんだ。 やっぱり嫌々と首を振るのを頭を押さえ付ける事で制して丁寧に拭き取り、満足した俺は席に着き改めて善逸を見る。 善逸の虹彩は地毛の髪色と同じ金色だ。 表情豊かでくるくる変わるし、変わる方向が非常に残念な結果になるから分かり辛いけれど善逸の目は本人が言う通り真ん丸で大きく、パーツだけ見ればぱっちり二重で睫毛は量が多い上に影が出来るほど長い。 鼻は小振りでツンと上を向き唇は意外にぽってりと厚い。 うるさく騒ぐ寸前の半泣きの表情はまるで捨てられた仔犬みたいなほっとけなさを抱く。 禰豆子や伊之助ほどではないし、本人には言えないけれど世の中のアイドルと言われる女の子達よりは可愛いんじゃないかと個人的には思っている。 汚い高音と残念な顔芸がなければ、という縛りがあるけれど。 まあそれがあるからこその善逸なんだけど。 「この間サッカー部に紛れて一試合した後、髪の毛かき上げながらTシャツパタパタしてたんだよね。そしたら腹がチッラチラ見えてさあ、あの人美術の先生のクセになんであんなムキムキしてんだろ?雑誌の表紙飾っててもおかしくない位かっこよかった。ずるくない?顔が良いのに体まで良いとかさ。神様は二物を与えないとか言うけどあの人は寵児だよ、何物与えられてんの?愛され過ぎだよね?はぁー、もう」 吐息みたいな溜め息を吐く様はまるで恋する乙女。 …と、いうか善逸が宇髄先生を見る時漂ってくる匂いは恋する乙女そのもの。 甘くてふわふわしてて、それでいて切ない匂い。 本当は顔だけじゃなく宇髄先生の全部が好きなんだなあって感じる。 先生は見た目がアレだし、自身を祭りの神だとかたまに良く分からない事も言うけど面倒見が良くて、生徒一人一人を良く見て的確なアドバイスをくれたりするんだ。 悩んでいると相談に乗ってくれたり、兄貴肌というのだろうか。 女子人気もすごいけれど何気に男子からも人気がある。 しかも善逸は髪色が派手で良いという理由で先生に一目を置かれたのち、なんやかんやで可愛がられていた。 廊下ですれ違えば揶揄い、資料作りの手伝いに駆り出し掃除をさせたり、朝の服装チェックで絡んだりという迷惑極まりない可愛がり方で。 明らかに他の生徒とは違う扱いを好みの顔を持つかっこいい先生にされたら、善逸だって好きになってしまうのは仕方ないと思う。 「風紀委員の仕事があるのに!」「俺ばっかり不公平だ!」とか文句を言うけど先生から呼ばれるとやっぱり嬉しそうにして、『我妻』から『善逸』と初めて呼ばれた時はそれはそれは甘ったるい匂いを放ち、 「紋逸がメスくせえ…。あ?あいつオスだよな?」 伊之助が怪訝な顔をして呟いたのを覚えている。 けど、そんな匂いをさせていたのは善逸だけじゃなくて…おっと。 「伊之助、駄目だぞ」 伊之助が皿を奪おうとしているのを見遣り、未だに見惚れている善逸の頭を小突く。 「善逸、早く食べないと伊之助に食われるぞ」 「はっ!そうだよ!俺腹減ってたんだよ!もうこんな時間!?」 空腹を今更思い出したのかすっかり冷めてしまったオムライスをようやく食べ始めた。 昼休みの残り時間を気にしつつパクパク忙しくスプーンを運ぶ姿を、頬杖を付いた宇髄先生が見ていた。 オムライスに集中する善逸は気付かない。 キツく見える眦を下げて柔らくも熱い視線で善逸を眺めている。 それはまるで恋しい者を見ている様な、それ。 ジッと見遣る様子は先程の善逸そのものだった。 宇髄先生の視線にお茶を啜っていた煉獄先生も気付いたらしく見開いた目で善逸を見て隣の同僚を見て、「よもや!」と声を上げる。 「宇髄、TPOを弁えろ!」 煉獄はそう言うと立ち上がった。 授業の準備があるのだろう。 冨岡先生が立てば、宇髄先生もへーへーとため息交じりに席を立った。 食器を返して出入り口に向かう煉獄先生と冨岡先生と離れ、宇髄先生が戻って来る。 財布か何かを忘れたのかと思っていると腰掛けていたテーブルを通り越してこっちに足を向け、止まった。 善逸はモグモグと膨らませた頬をそのままで先生を見上げる。 高い背を屈めて宇髄先生は善逸の頬に人差し指を滑らせて、指先に赤色の米粒を乗せた。 俺の反対側の方だったから気が付かなかったけれど付けていたらしい。 「頬っぺたに飯粒付けてんなよ、お子ちゃま」 ニヤリと笑ってその米粒を舐め取り、口に含む。 「―――っ!?」 善逸の頬が一気に上気した。 口の中にオムライスがあるから無言だったけど何も入っていなかったらきっと汚い高音を上げていたと思う。 そうして宇髄先生は素早く米粒が乗っていた側に今度は顔を寄せる。 隣にいた俺には聞こえてしまった。 チュッと小さな音が弾けるのを。 ゴキュンッなんて大きな音で善逸はオムライスを飲み込んでしまったらしい。 「……ア、アンタ、アンタ、なにして…?え?何?え?」 相当パニックに陥っているみたいで善逸はスプーンを持った手で頬に触れながらあわあわと口を開閉するのをさっきの熱い眼差しで見詰めて、 「善逸ゥ、お前本当俺の事好きな?そんなに見たけりゃもっと近くで見せてやるから放課後準備室来いよ。んで俺にもじーっくりお前を見せろ。絶対来いよ?来なけりゃ校内放送でお前を好きだって言ってやるからな」 と囁き、金色の髪を撫で梳いて颯爽と去って行った。 周りには聞こえない位の内緒話。 いや、俺には聞こえてしまったけれど。 「~~~~~~っ!!!!????」 可哀想なほど混乱とか嬉しさとか様々な感情が入り交じった匂いをさせて善逸が声にならない悲鳴を上げる。 驚き過ぎて最早声にならないみたいだ。 きっと善逸には『音』ではっきりと聞こえてしまったんだろう。 複雑な善逸の匂いに絡まる、甘くねっとりとした匂い。 先生の善逸に対する残り香だ。 可愛い、恋しい、離さない。 なんて思いが込もった欲の匂い。 「善逸、放課後までに覚悟を決めておくといいぞ」 俺が言えるのはこの位。 「あ?なんだ?祭りの神も紋逸も発情期なのか?」 善逸がたまに見詰める綺麗な顔を傾げつつ、まだ半分残るオムライスを抱えてしまった伊之助を今度は止めなかった。
もう書ける内に書いておこう精神です。
炭治郎君視点です。
かまぼこ隊がキャッキャッしてるのが好きです。
学園軸です。
ただご飯を食べてる間の話。
キャラ、口調、グダグダです。
文章は上手くないのは仕様です。
何番煎じですすみません。
長髪善逸君と宇髄さんのエチが書きたい気がします。
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