日本大百科全書(ニッポニカ)「ゆで卵」の解説
ゆで卵
ゆでたまご
boiled egg
卵を殻付きのままゆでたもの。加熱温度と時間により、完熟卵と半熟卵がある。卵のゆで上がりの状態は、温度や時間のほか、卵の大きさや鮮度、ゆでる前の卵の温度、ゆで水の温度や卵の量に対する水の量、火力、ゆでたあとの放置の状態などによっても左右される。
完熟卵の作り方は、一般には、卵を水から入れ、沸騰後8~10分ゆでる。長く加熱しすぎると、卵黄の周りが暗緑色になることがある。これは、卵白中の硫黄(いおう)を含んだアミノ酸が、長く加熱されることにより分解して硫化水素を発生し、卵黄に含まれている鉄分と結合して硫化鉄をつくるためで、体に有害ではない。卵が古すぎたり、ゆでて熱いまま放置しても硫化鉄はできやすい。ゆで上がったらすぐ水中で冷ますとよい。半熟卵は、まだ十分に凝固していないゆで卵のことである。普通、半熟卵というと、卵黄は半熟だが卵白は固まったものをさすことが多い。しかし、本当の半熟卵は、卵黄も卵白も均一に火が通り、舌ざわりがとろりとした状態のものである。理想的には、70~75℃の湯で15分ほどゆでたものである。
半熟卵の一種に温泉卵がある。卵黄と卵白では凝固温度にやや差のあるのを利用したゆで卵である。卵白は58℃で固まり始め、62~65℃で流動性を失い、70℃でほぼ固まり、80℃以上で完全に固くなる。卵黄は65~70℃でかなり固くなる。そこで、65~68℃の湯に約30分つけておくと、卵黄はほぼ凝固するが卵白は半熟状のゆで卵ができ、これを温泉卵とよんでいる。
ゆで卵はそのまま食べるほか、完熟卵では梅花卵などの飾り卵や、サラダ、半分に切って卵黄を調味して詰め直したスタッフドエッグなどの料理にも利用される。温泉卵は、薄味のだし汁などを加えて食べることも多い。
[河野友美]