TRIZとは
TRIZ(トゥリーズ)はソ連が開発してアメリカが発展させたクリエイティブシンキングです。問題解決や全体の最適化、新しい発明やシステム思考など様々なことに応用できるフレームワークで、英語では Theory of solving inventive problems(発明課題解決の理論)と呼ばれています。
TRIZは世の中にいくつもある「誘導語/ガイドワード」を用いて思考を補助するタイプの理論で、TRIZの場合は40のワードを使って新しい発想や違った見方を探すことができます。ソ連の研究者アルトシューラや発展させたアメリカの研究者は大量の特許を調べてその共通点を探し、それを40のワードに落とし込みました。発明に関することから始まったため最初は設計者や技術者に浸透しましたが、誘導語を用いるやり方自体が簡単なため今ではマネジメントや能力開発など様々な分野でも転用されています。
40の発明原理
少し長くなりますが40のワードを引用してみましょう。日本語訳は手間なのでWikipediaさんからいただきました。
- Segmentation (分けよ)
- Taking out (離せ)
- Local quality (一部を変えよ)
- Asymmetry (バランスを崩させよ)
- Merging (2つを併せよ)
- Universality (ほかにも使えるようにせよ)
- "Nested Doll" (内部に入り込ませよ)
- Anti-Weight (バランスを作り出せ)
- Preliminary Anti-Action (反動を先につけよ)
- Preliminary Action (予測し仕掛けておけ)
- Beforehand Cushioning (重要なところに保護を施せ)
- Equipotentiality (同じ高さを利用せよ)
- 'The Other Way Round' (逆にせよ)
- Spheroidality – Curvature (回転の動きを作り出せ)
- Dynamics (環境に合わせて変えられるようにせよ)
- Partial or Excessive Actions (大ざっぱに解決せよ、一部だけ解決せよ)
- Another Dimension (活用している方向の垂直方向を利用せよ)
- Mechanical vibration (振動を加えよ)
- Periodic Action (繰り返しを取り入れよ)
- Continuity of Useful Action (よい状況を続けさせよ)
- Skipping (短時間で終えよ)
- "Blessing in Disguise" or "Turn Lemons into Lemonade" (よくない状況から何かを引き出し利用せよ)
- Feedback (状況を入り口に知らしめよ)
- 'Intermediary' (接するところに強いものを使え)
- Self-service (自ら行うように仕向けよ)
- Copying (同じものを作れ)
- Cheap Short-Living Objects (すぐダメになるものを大量に使え)
- Mechanics Substitution (触らずに動かせ)
- Pneumatics and Hydraulics (水と空気の圧を利用せよ)
- Flexible Shells and Thin Films (望む形にできる強い覆いを使え)
- Porous Materials (吸いつく素材を加えよ)
- Color Changes (色を変えよ)
- Homogeneity (質を合わせよ)
- Discarding and Recovering (出なくさせるか、出たものを戻させよ)
- Parameter Changes (温度や柔軟性を変えよ)
- Phase Transitions (物質の相を変えよ)
- Thermal Expansion (熱で膨らませよ)
- Strong Oxidants (「そこを満たしているもの」のずっと濃いものを使え)
- Inert Atmosphere (反応の起きにくいものでそこを満たせ)
- Composite Structures (組み合わせたものを使え)
日々世の中に現れる新商品にはこれらのワードに当てはまる特徴があることが分かります。例えばかつて世の中を席巻したソニーのウォークマンは音楽を持ち歩けるようにするために録音機能やスピーカーを分けたことで(Segmentation)大当たりしました。スマートフォンは携帯電話と携帯情報端末(PDA)、そしてウォークマンを合わせた(Merging)ものです。
もっと身近な例で考えてみましょう。クイックルワイパーは使い捨てられる掃除道具としてTaking out (離せ)とCheap Short-Living Objects (すぐダメになるものを大量に使え)の考えが用いられています。激落ちくんなども同じコンセプトですね。濃縮缶のような飲料品はSelf-service (自ら行うように仕向けよ)ですし、粉の飲料や飲む〇〇はPhase Transitions (物質の相を変えよ)です。
日常を楽しくするスパイス
問題というのは仕事に限らず日常生活においても日々発生します。それらは大抵面倒で手間ですが、TRIZのワードが頭に入っていると発想の転換が容易になり解決が楽になります。
そしてなによりも問題を解決するのが楽しくなります。誰だって人に言われたり状況に強制されて物事をやるのは楽しくありませんが、能動的に自ら決めてやることは楽しく感じるものです。TRIZのワードを知っていれば、これをやってみよう、こうしたらどうだろう、逆にすればもしかしたら、と自ら積極的に考えて行動しやすくなり、問題を解決する時もちょっと楽しく進めることができますよ。
余談
個人的な趣味として'The Other Way Round' (逆にせよ)を日々考えています。実に頭が悪くて楽しいです。
「飲むヨーグルトがあるなら飲まないヨーグルトがあっても・・・いやそれ普通のヨーグルトだな」
「食べるラー油があるなら食べられないラー油があっても・・・売れないな」
「社内ニートが居るなら社外ニートが居ても・・・ただのニートだ!」
馬鹿なことばかり考えてニヤニヤしている変人ですが、いつか私もヒット商品を考えつく・・・かもしれません。まあ夢を見るのは自由ですよね。