③比較優位説とTPP

 

 比較優位説の描く世界観は、アメリカが自由競争の体制を守ろうとして、デトロイトを犠牲にした話と良く似ています。

 そして、日本が率先して、農業や社会保障を犠牲にして、自動車や工作機械を外国に売り込もうとしているTPPと良く似ています。

 要するに、比較優位論の趣旨は、他人の犠牲を顧みずに、自由競争を認めるべきだと言いたいだけなのです。

 関税や非関税障壁を撤廃し、自由貿易を行えば、自然な競争が起こり、勝つ企業と負ける企業が生まれるが、それはあくまで効率を求める国際的な「分業」にすぎないので我慢すべきであると、負け組を説得しています。

 TPPはこのようなリカードの比較優位説というインチキ理論を実行しようとするものです。

 日本のTPPにおける農産物の関税や補助金の撤廃は、比較劣位の農業を捨て去り、比較優位の自動車に特化しようとする試みです。

 TPPの最も熱心な推進者はトヨタ自動車です。事実、先進各国は農産物に関税を課し、補助金を与えていますが、TPPは日本の農業者に対して、こうした関税や非関税障壁を取り除き、負けを受け入れるよう主張しています。

 トヨタ自動車は日本国民の誇りとする企業であり、そのトヨタ自動車が日本国民の幸福を望まないはずがないと思っているでしょうが、トヨタ自動車が日本の企業であったことなど遠い過去の話です。

 今は、日本がどうなろうとも、つまり、日本国民がどうなろうとも、自分の会社さえ生き残れば良いと考えている多国籍企業の一つにすぎません。

 自由貿易を究極まで推進し、互いの国で貿易に強い企業だけが残り、貿易に弱い産業が廃れて行けば、リカードの比較優位の世界観に近づき、独占的な資本主義となり、商品価格も労働者の賃金も独占企業の株主の思いのままとなり、消費者および労働者に対する搾取が自由に行えるようになります。

 今はまだ、他国に競争相手がいるから目立ちませんが、独占状態になってしまうと何が起こるか判らないと言われています。おそらく、どこの国民も、国際的な独占資本によって支配され、貧乏な、みすぼらしい存在になるでしょう。

 国民が尊厳を保つためには、自由貿易を制限し、頑固に保護貿易を貫かなければなりません。

 リカードの比較優位説の恐ろしさはさらにもう一つあります。それは、安全保障に関わる問題です。

 国際的投資家または多国籍企業が国の利益を代表するようになれば、政府の政策も、国際的投資家と多国籍企業の利益を優先するようになります。

 今、ちょうど、これと重なることが起こっています。中国に進出した企業が、中国政府に人質に取られているような状況となり、日本政府は中国にものが言いにくくなっています。

 しかし、日本国民は、中国に進出した日本企業を守ろうと考える必要はありません。これらの日本企業は、中国で生産された安い商品を日本に輸出し、日本国内の同業者企業を潰しているからです。

 これらの日本企業は、すでに、日本国内の産業そして社会に共感を持たない多国籍企業になっています。

 そして、これらの多国籍企業が日本で発言力を持っているのは、日本国内に彼らの言うことを聞く自民党やマスコミなどの売国奴がいるからです。

 日本国民は勘違いしているかも知れませんが、私たち日本国民は、多国籍企業の利益を、国民の利益より優先する意思決定をしたことはありません。ところが、自民党が国民のための政治・「強欲なウォールストリートの資本主義ではなく、日本らしい瑞穂の国の資本主義」を行うと嘘を言って、国民は騙されて投票し、嘘つき自民党が政権を取り、政権を取った自民党やマスコミが手の平を返して多国籍企業の利益を優先し、国民世論を無視して、多国籍企業の利益のためのプロパガンダを繰り返しているにすぎないのです。

 多国籍企業や、その株主である国際的投資家が国の利益を代表するようになれば、彼らは国家や国民のことはどうでも良いと考えていますから、自分の商売のために、日本の領土も領海も、日本国内の資産や産業も、アメリカと中国に差し出すでしょう。そして、アメリカや中国で儲けの出る商売をさせてもらいたいのです。

 自民党やマスコミもそのほうが儲かるので、多国籍企業や国際的投資家の思い通りになります。

 竹中平蔵はこう言うでしょう。日本は他国に対して優位な輸出産業を守り、農業などを他国に任せれば、日本も、最も経済発展することが出来るし、世界も、地域解格差が無い理想的な世界に生まれ変わることが出来ると。

 しかし、よほどの売国奴でもない限り、同胞意識を共有していない他国(アメリカや中国)をそれほどまでに信じることは出来ません。

 他国に農業を任せてしまえば、欠陥の有る食料しか入らなくなった時に、あるいは、侵略が始まり餓死の危険に晒された時に、日本国民は死ぬほど後悔することになるでしょう。

 

 

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