8月 12, 2011
ミニマムインカムの試算

みんなの党では、社会保障のあり方として年金や生活保護を統合した「ミニマムインカム」を提唱しています。ミニマムインカムを日本語にすれば「最低生活保障」となります。

このミニマムインカムを実現するためには「最低限度の生活」を具体的に定義する必要があります。最低限度の生活を送るために必要な物資等をリストアップして、それに単価を掛けて金額を算出するという方法で、ミニマムインカムの具体的な水準を考えてみたいと思います。

※本稿は、あくまでも私個人の考えに基づくミニマムインカムの「ざっくりとしたの試算」です。


まず最初に、日本国憲法第25条に「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」とあります。よって「最低限度の生活」は「健康」で「文化的」でなければなりません。

「健康」という点は比較的定義しやすいと思います。衣食住に関わる物資等をリストアップすればある程度の計算が出来ます。一方「文化的」な部分はやや難しい部分がありますが「社会の一員として何かしらの情報を受け取ることが出来ること」と定義します。


以下、項目毎に必要な物資等をリストアップして、必要なコストを算出します。

【衣】1人に1年間に必要だと考えられる枚数で計算します。単価はユニクロの価格を中心に、一般的に販売されていそうな価格を参考に算出します。

下着×6枚          3000円 男性
下着×6セット       10000円 女性。女性の下着って高いんですね。。。
靴下×6枚          2000円
アンダーシャツ×6枚     6000円
シャツ・ブラウス×6枚   18000円
ズボン・スカート×6本   24000円
ジャケット×2着      10000円
コート×1着        10000円
ベルト×2本         4000円
革靴×2足         10000円
ハンカチ×6枚        3000円
合計           100000円

市販品購入を想定して算出していますが、これを「現物支給」にすれば、原価率を30%とすれば、3万円くらいになるでしょう。


【食】1人に1ヶ月で必要とされる量を元に計算します。また食品ではありませんが消耗品となる生活雑貨も含めます。

玄米5キロ(33合)    2000円
小麦粉1キロ         300円
大豆1キロ          300円
塩1キロ           200円
砂糖1キロ          300円
食用油1キロ         400円
全粉乳1キロ        1800円 ※現物支給を想定して、生乳ではなく全粉乳
緑茶200g        1000円
          小計  6300円

石けん1個           50円
ハブラシ1本          50円
トイレットペーパー4巻    300円
エタノール500cc    1000円
クエン酸500g       800円 
重曹500g         500円
次亜塩素酸500g      800円
単三乾電池4本        200円
          小計  3700円
          合計 10000円

年間にすると12万円となります。これらも市販品の購入を想定していますので、現物支給をすれば、原価率を50%とすれば年間6万円くらいになるでしょう。現物支給は有事の際の備蓄という側面も兼ねています。


【住】 千葉県松戸市の常盤平団地で、一番安いタイプで月額約35000円、年間にすれば42万円となります。一方で、島根県松江市の市営住宅では月額約6000円、年間約7万円という物件もあります。

このように住居費は地域差が大きいため、政策的な意味を込めた一定金額をミニマムインカムに含めることとなるでしょう。「大都市圏に住むには足りないが、地方都市ならお釣りがくる」という金額を設定すれば、大都市圏への人口集中を緩和して人口の分散が可能となるでしょう。ここでは仮に大都市圏の人口を5割として、42万円×50%+7万円×50%=約24.5万円としておきます。また平均の世帯数を2人と考えれば、1人あたり年間12万円、毎月約10000円。

住居費の補助は、クーポンを発行するか、貸主から自治体に請求する形にするか等、他に流用できないようにする必要があるでしょう。


【水道光熱費】 水道光熱費は世帯の構成人数によって変わりますが、仮に1人1ヶ月2500円として、年間3万円とします。現実的には、住民登録のある世帯に限定して基本料金を廃して、人数に応じて一定量まで無料にして、無料分は各電力会社・水道会社等が自治体に請求する形で対応できると思います。


【医療費】 医療費は、70歳未満の低所得者の自己負担限度額をベースに算出します。月額35400円×3ヶ月+月額24600円×9ヶ月=約33万円。

ただし医療費全体に言えることですが、若年世代よりも高齢世代の方が医療費がかかります。「ミニマムインカムで給付される医療費自己負担分を若いうちに貯めておいて、歳を取ってから使う」というのであれば、全然ミニマムではありません。医療費自己負担分はミニマムインカムに含めることは難しいでしょう。

無理矢理金額を算出するなら、人生90年として、20歳までは年間12万円、50歳までは年間6万円、70歳までは年間24万円、90歳までを年間33万円として、年間約15万円。

これは私案ですが、医療費自己負担に関しては、他に流用できないようミニマムインカムとは別の「ポイント制」にして、毎月一定のポイントを給付して、そのポイントを生涯に渡って貯めたり使ったり出来るようにすれば良いと思います。現実にはそのポイントに相当する現金が特別会計に積み立てられるのですが、自分が使えるポイントの総量が見えるので、健康的な生活を送るインセンティブが個々人に働き、医療費全体の抑制効果も期待できると思います。


【文化】 情報の入手は、対面の他に、紙媒体(広報、新聞、雑誌)、放送(テレビ、ラジオ)、通信(電話、インターネット)などがあります。紙媒体は図書館等が利用できますし、放送もラジオであれば無料です。しかし通信だけはどうしても有料となるため、ソフトバンクのホワイトプラン(月額980円)をコストと見なして年間約1万円として計算します。

話は少しそれますが、携帯を持っていない人に安いSIMフリー携帯電話とプリペイドSIMカードを配って、自治体が緊急情報をSMSで送信できる仕組みを作れば、防災無線よりもよっぽど効果的なツールになると思います。安否確認のツールとしても使えます。


以上のような試算でざっくりとミニマムインカムの具体的な金額を算出すると、衣3万円+食6万円+住12万円+水道光熱費3万円+医療費15万円+通信1万円=40万円。

1億2000万人分となると約48兆円。確かに今の税収よりも多いのですが、ミニマムインカムには行政コストの削減効果も期待できます。もっと言えば、20年前は税収で約60兆円あったのですから、決して実現不可能な数字ではないように思います。