この記事は、過去投稿した「ミニマムインカムの試算」という記事を一般的な表現である「ベーシックインカム」に変更して、一部改訂して再掲したものです。当時、私が在籍していたみんなの党では、ベーシックインカムではなくミニマムインカムと表現していましたが、内容的にはほぼ同じものです。
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2011年当時は、まだ「ベーシックインカム、なにそれ美味いの?」といった状況でしたが、最近になってようやく注目され、海外では社会実験も行われるようになってきました。
一方、日本国内では地方自治体の職員が生活保護受給者を見下す文言を記載したユニフォームを作るなど、一部の不正受給者によって日本国憲法25条に基づく社会保障制度に対する批判が高まっています。
(参考)日本国憲法第25条
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
私は、ベーシックインカムという仕組みが、日本国憲法第25条を実現し、かつ一部の不正受給者によって「不公平感」が生じる現行の生活保護制度の問題点を解決するものだと確信しています。
そのためにも2011年当時はやや早すぎた感のあるベーシックインカムの試算をここに改訂・再掲します。
ベーシックインカムを実現するためには日本国憲法第25条にある「最低限度の生活」を具体的に定義する必要があります。
その方法として、最低限度の生活を送るために必要な物資等をリストアップして、それに単価を掛けて金額を算出する形でベーシックインカムの具体的な水準を考えてみたいと思います。(※本稿は、あくまでも私個人の考えに基づくベーシックインカムの「ざっくりとしたの試算」です。)
日本国憲法第25条では「最低限度の生活」に「健康」で「文化的」という要件が定義されています。「健康」という点は比較的定義しやすいと思います。衣食住に関わる物資等をリストアップすればある程度の計算が出来ます。一方「文化的」な部分はやや難しい部分がありますが、ここでは「社会の一員として何かしらの情報を受け取ることが出来ること」と定義します。
以下、項目毎に必要な物資等をリストアップして、必要なコストを算出します。
【衣】1人に1年間に必要だと考えられる枚数で計算します。単価はユニクロの価格を中心に、一般的に販売されていそうな価格を参考に算出します。
下着×6枚 3000円 男性
下着×6セット 10000円 女性。女性の下着って高いんですね。。。
靴下×6枚 2000円
アンダーシャツ×6枚 6000円
シャツ・ブラウス×6枚 18000円
ズボン・スカート×6本 24000円
ジャケット×2着 10000円
コート×1着 10000円
ベルト×2本 4000円
革靴×2足 10000円
ハンカチ×6枚 3000円
合計 100000円
市販品購入を想定して算出していますが、これを「現物支給」にすれば、原価率を30%とすれば、3万円くらいになるでしょう。
【食】1人に1ヶ月で必要とされる量を元に計算します。また食品ではありませんが消耗品となる生活雑貨も含めます。
玄米5キロ(33合) 2000円
小麦粉1キロ 300円
大豆1キロ 300円
塩1キロ 200円
砂糖1キロ 300円
食用油1キロ 400円
全粉乳1キロ 1800円 ※現物支給を想定して、生乳ではなく全粉乳
緑茶200g 1000円
小計 6300円
石けん1個 50円
ハブラシ1本 50円
トイレットペーパー4巻 300円
エタノール500cc 1000円
クエン酸500g 800円
重曹500g 500円
次亜塩素酸500g 800円
単三乾電池4本 200円
小計 3700円
合計 10000円
年間にすると12万円となります。これらも市販品の購入を想定していますので、現物支給をすれば、原価率を50%とすれば年間6万円くらいになるでしょう。現物支給は有事の際の備蓄という側面も兼ねています。
【住】 千葉県松戸市の常盤平団地で、一番安いタイプで月額約35000円、年間にすれば42万円となります。一方で、島根県松江市の市営住宅では月額約6000円、年間約7万円という物件もあります。
このように住居費は地域差が大きいため、政策的な意味を込めた一定金額をベーシックインカムに含めることとなるでしょう。「大都市圏に住むには足りないが、地方都市ならお釣りがくる」という金額を設定すれば、大都市圏への人口集中を緩和して人口の分散が可能となるでしょう。ここでは仮に大都市圏の人口を5割として、42万円×50%+7万円×50%=約24.5万円としておきます。また平均の世帯数を2人と考えれば、1人あたり年間12万円、毎月約10000円。
住居費の補助は、クーポンを発行するか、貸主から自治体に請求する形にするか等、他に流用できないようにする必要があるでしょう。
【水道光熱費】 水道光熱費は世帯の構成人数によって変わりますが、仮に1人1ヶ月2500円として、年間3万円とします。現実的には、住民登録のある世帯に限定して基本料金を廃して、人数に応じて一定量まで無料にして、無料分は各電力会社・水道会社等が自治体に請求する形で対応できると思います。
【医療費】 医療費は、70歳未満の低所得者の自己負担限度額をベースに算出します。月額35400円×3ヶ月+月額24600円×9ヶ月=約33万円。
ただし医療費全体に言えることですが、若年世代よりも高齢世代の方が医療費がかかります。「ベーシックインカムで給付される医療費自己負担分を若いうちに貯めておいて、歳を取ってから使う」というのであれば、全然ミニマムではありません。医療費自己負担分はベーシックインカムに含めることは難しいでしょう。
無理矢理金額を算出するなら、人生90年として、20歳までは年間12万円、50歳までは年間6万円、70歳までは年間24万円、90歳までを年間33万円として、年間約15万円。
これは私案ですが、医療費自己負担に関しては、他に流用できないようベーシックインカムとは別の「ポイント制」にして、毎月一定のポイントを給付して、そのポイントを生涯に渡って貯めたり使ったり出来るようにすれば良いと思います。現実にはそのポイントに相当する現金が特別会計に積み立てられるのですが、自分が使えるポイントの総量が見えるので、健康的な生活を送るインセンティブが個々人に働き、医療費全体の抑制効果も期待できると思います。
【文化】 情報の入手は、対面の他に、紙媒体(広報、新聞、雑誌)、放送(テレビ、ラジオ)、通信(電話、インターネット)などがあります。紙媒体は図書館等が利用できますし、放送もラジオであれば無料です。しかし通信だけはどうしても有料となるため、ソフトバンクのホワイトプラン(月額980円)をコストと見なして年間約1万円として計算します。
話は少しそれますが、携帯を持っていない人に安いSIMフリー携帯電話とプリペイドSIMカードを配って、自治体が緊急情報をSMSで送信できる仕組みを作れば、防災無線よりもよっぽど効果的なツールになると思います。安否確認のツールとしても使えます。
以上のような試算でざっくりとベーシックインカムの具体的な金額を算出すると、衣3万円+食6万円+住12万円+水道光熱費3万円+医療費15万円+通信1万円=40万円。
1億2000万人分となると約48兆円。確かに今の税収よりも多いのですが、ベーシックインカムには行政コストの削減効果も期待できます。もっと言えば、20年前は税収で約60兆円あったのですから、決して実現不可能な数字ではないように思います。
2月 10, 2017
ベーシックインカム試算