シロワニ繁殖へダイバーも懸命 泳がせながら採血、注射針を刺す
外洋大水槽ダイバー便り②
前回に続き、シロワニを中心にお話をします。絶滅危惧種であるシロワニの繁殖を成功させるため、当館では飼育を始めた1995年以降、数々の取り組みをしてきました。例えば餌にビタミン剤を加えたり、水槽内の水温や照明時間を季節に合わせて変化させたり。シロワニを深く知るため小笠原諸島周辺で野生の生態調査もしました。
水槽内では、雄に比べて食欲が旺盛な雌が大きく育ち、パワフルになっています。交尾をスムーズに行えるよう「ダイエット」に挑戦してもらうこともありました。餌の量を調整するのですが、リバウンドをすることもしばしばでした。
また、雄と雌の発情時期を合わせることができたら繁殖への可能性を高められるのではないかと、血液中のホルモン値の計測を5年以上前から、実施しています。採取した血液は九州大の研究者に送り、分析してもらっています。シロワニが泳いでいる状態で採血をしている施設は世界でも当館のみ。現在、月に1回のペースで実施しています。慣れるまでは30分以上かかることもありました。
まず、背びれに注射針を刺すのですが、逃げられることも多いです。シロワニがぱっとひれを動かして泳ぎだすと、私の泳ぎでは追いつくことはできません。そういう時は根気強く、落ち着くまで待ちます。刺す針が狙ったところから数ミリでもずれると、うまく血液が採取できません。水中での作業は大きな集中力が必要となります。血液に海水が混入しないよう、2段階の弁が付いた注射器を使う工夫もしています。
2014年には当館の呼び掛けをきっかけに、シロワニ繁殖協議会を設立しました。国内で飼育している施設が、繁殖に向けた活動の情報を共有しています。国内では今年6月にアクアワールド茨城県大洗水族館で成功したのみですが、知見を積み重ね、成功例を増やしていきたいです。前回お話ししたように12月上旬に当館で交尾が確認できました。シロワニは子どもを産む種類のサメなので、来夏、赤ちゃんの誕生があるよう願っています。
ダイバーは鍛錬が必要
私たちの紹介も少し。現在、当館では私を含め、約10人がダイバーとして活動しています。魚たちが優雅に泳ぐ中、バタバタしていたら格好悪いので、しっかり潜水の訓練をした上で、姿勢なども崩れないように心掛けています。
シロワニはもちろん、2万匹のイワシに餌付けしたり、水中カメラで撮影したりするショーなどに出演しています。12月は赤い衣装を着て「サンタダイバー」として登場。たくさんのお客さまに喜んでいただきました。
マリンワールド海の中道では2022年も、外洋大水槽をはじめ魅力的な展示を予定しています。ぜひ当館へお越しくださいね。(マリンワールド海の中道魚類課係長・鈴木泰也さん)