シロワニ、待望の繁殖に期待 ライブカメラに貴重な映像
外洋大水槽ダイバー便り①
西日本新聞meライブカメラで配信されている「マリンワールド海の中道」の外洋大水槽。1995年に設置され、深さ7メートル、横幅24メートル、奥行きは10メートル。水の量は約1400トンあります。約40種類、2万匹の魚が中におり、私は飼育メンバーの1人でダイバーとして水槽に潜り、世話をしています。水槽内で特に存在感のある「シロワニ」についてご紹介します。
名前にワニとありますがサメの仲間です。世界中の温帯、亜熱帯に生息し、日本では小笠原諸島のみで確認。世界的に減少傾向にあり、絶滅危惧種に登録されています。95年、日本の水族館で初めて当館が飼育と展示を始め、今はオス3匹、メス2匹がいます。飼育を始めてすぐの頃、私は水槽に潜って、手から直接餌を渡しました。シロワニは比較的臆病で、食べるのは魚。餌として認識していない人間を襲うことはないだろうと聞いていたのですが、見た目の凶暴さもありますし、最初は少し怖かったですね。
飼育を始めて以降、何とか繁殖ができないかと試行錯誤を続けています。水族館で魚たちを飼育するのは、お客様に楽しんでもらうだけでなく、生態調査や自然保護の研究など多くの目的があります。シロワニの繁殖は、国内では今年6月にアクアワールド茨城県大洗水族館で成功したのみ。大変難しいのですが、当館でもいずれ成功させて展示に生かしていきたい。
最近、そのシロワニの繁殖を巡って館内が盛り上がっています。交尾の様子を確認できたのです。シロワニは、雄が雌のむなびれにかみついて、体を固定した上で、交尾をします。12月初旬、この様子をスタッフが目撃しました。そしてmeライブカメラの映像にも映っていたんです。秋口から12月初旬は繁殖期で、雌のむなびれに傷が多くあったため、兆候があるなとは思っていました。
交尾は敵に襲われないように、夜中に行うことが多いため、なかなか見ることができません。確認は当館ではたぶん20年以上ぶり。うまくいけば来年の夏にも、待望の出産をするかもしれません。
ちなみに普段、コバンザメは自分の身を守るための魚としてシロワニに引っ付くのですが、シロワニの発情期は体の大きなエイに付きます。交尾の時に、身に危険があると感じているからでしょう。
次回は、繁殖へ向けて当館がこれまで行ってきた取り組みをお話します。(マリンワールド海の中道魚類課係長・鈴木泰也さん)