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せつな。
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【宇善】こじ開けないで、マイハート。 - せつな。の小説 - pixiv
【宇善】こじ開けないで、マイハート。 - せつな。の小説 - pixiv
8,990文字
【宇善】こじ開けないで、マイハート。
まだお付き合い前の教師な宇髄先生と生徒な善逸くん。
善逸くんが具合悪くて煉獄先生に心配されてたら宇髄先生がいきなり現れた!というお話です(笑)
煉獄先生と宇髄先生が少しもめますので苦手な方は回避お願いいたします。
煉炭好きが書いてるので煉善要素はありません。
何でも許せる方向けになります。
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2021年12月29日 09:57

***



(……なんか、)

かなり調子悪いな、と思ったのは体育の授業後。 朝起きた時に、目眩がするような気はしたけれども。 朝一で風紀の仕事もあったし、見ないふりして登校したのがよくなかったのか、段々雲行きの怪しくなった体調が、今は完璧に崩れて、めちゃくちゃ具合悪い。 風邪、と、考えて、ちょっと違う意がする。 目眩がするのは自分自身に熱があるから、というよりは、血の気が引いているから、というような気がしている。 つまりは、貧血かもしれない。 (……心当たりが、) ないというには、少し無理がある感じに、思い当ることが浮かんでしまい、はあ、と小さく息を吐き出した。 最近、夜、寝付きがかなり悪い。 だから、貧血気味になってしまったのだろう。 まあ、それが分かったところで、眠れないものをどうしたらいいのかわからないのだけれども。 眠いのに、眠れないのだから、自分でどうにかできるわけない。 出来るならとっくにしているのだ。 眠れないのって、地味に焦って苛々してくるし。 そんなの嫌だから、眠りたい。 けれども、眠れない。 悪循環が続いて、気が付けば朝方になっている。 そんなのを毎日繰り返していれば、身体が限界になるのは当たり前。 (……わかってるけど、) どうしようもないんだから、しょうがないじゃないか。 自分じゃ、もう、どうしたらいいかわかんないんだから。

「……はぁぁ、」

少し重ための息が口から零れ落ちた。 具合悪くても早退する気は起きないし、保健室に行ったところで眠れる気もしない。 夜になっても眠れないのに、昼間なんて、ことさら眠れない。 そう考えると、憂鬱な気持ちしか浮かばないから、ため息も止まらないわけで。 もう一度息を吐きだそうとしたら。

「黄色い少年!!」

はきはきとした声に呼ばれ、びくん、と反射的に俺の身体が跳ねあがった。 しかも。

「うひゃいっ!!」

変な返事まで漏れてしまう。 恥ずかしい。 けれども、そんなにいきなり、そんな元気な声で呼ばれたらびっくりするのは仕方ないというか。 俺は不意打ちとかにものすごく弱いのだから。 驚きやすい体質というか。 繊細なのだから、もっと、優しく扱ってくれないと。 なんて、ことを考えつつ、自分の恥ずかしさを紛らわせていると、そんなおかしな返事などまるで気にした様子のない相手が、俺を覗き込んできた。 大きな瞳をぱちぱちと瞬かせているのは、声と同様にはつらつとした表情の歴史教師の煉獄先生だ。

「顔色があまり良くないようだが!大丈夫だろうか??」 「う、え?あ、はい、だいじょうぶです」

本当はあんまり大丈夫ではないけれども、口が勝手にそう答えていた。 当然、煉獄先生は納得のいかない、というか、不思議そうな顔になるわけで。 体調不良を隠す必要はないのに、俺はなんで、そんなことを言ってしまったのか。 これは別に知られても平気なことのはずなのに。

「そうは見えないな!無理はよくないぞ!」

言いながら、煉獄先生の手の平が俺の頭に、ぽすん、と乗った。 大きい手だな、と思う。 俺なんかとは全然違う。 それに前に炭治郎が言ってた通りに、あったかい。 (……けど、) それだけなんだよな、と思う。 普通は、こうなった場合に思うのなんて、それくらい。 他にあるとすれば、やっぱり煉獄先生は、炭治郎が熱く語る通りに、優しくて面倒見のいい先生だな、と感じるくらいで。

「は、い。……すみません」 「謝ることはない!体調不良であれば、教師の俺に頼ってくれて構わない!ということだ!」

はっはっはっ、と元気に笑う煉獄先生に、本当に、この先生は教師の鑑みたいな人だな、と思う。 他の先生たちも見習うべきなのではないだろうか、と、思い当る先生たちを頭の中に浮かべ、無理か、と思った。 それぞれ個性が強すぎて、煉獄先生を見習う姿がまったく想像できない。 というか、違和感しかないかもしれない。 そんなことを考えながらも、こくり、と頷けば、煉獄先生が俺の頭に乗ったままの手の平をぽんぽんと弾ませた。 優しい感じに。 そして。

「悩み事でもあるのではないか?竈門少年も、最近、君の元気がないと心配していた。何かあるのなら、良ければ、聞くが?」 「っ、……ふ、ぅ、」

そんなことを、やはり優しく言ってくれるものだから、うっかり、じわ、と視界が滲んでしまった。 だって、そんな、炭治郎の名前とかまで出てしまえばダメだった。 ぶっちゃけ、炭治郎に心配をかけてるのに気付いてたし。 気付いてて、何も言えなかった。 何をいえばいいのか分からなくて。 優しい炭治郎の瞳を見ないふりして、俺は黙ってしまっていた。 やっぱり、すごく心配をかけていたのだろう。 煉獄先生から聞こえる音で分かる。 (……ごめん、) と、ここにはいない友達に向けて、心の中で呟いた。 後で、ちゃんと謝らなきゃ、と。 それにしても、本当に炭治郎と煉獄先生は仲がいいんだな、とつくづく思う。 二人で話してる時の音とかもそうだけど。 今、煉獄先生が、炭治郎も、といった時の声と音がすごい優しかった。 俺は聞いたことのない音。 きっと、炭治郎にだけの音なのだろう。 (……なんか、いいな、) とか、二人に思うのは違うって分かるのに、そう考えてしまうのはどういうことだ。

「泣くほどの想いなら、一度口に出した方が楽になるかもしれない。話してみたらどうだろうか?俺には無理だということなら、炭治郎にでも、」

ああ、やっぱり、炭治郎って呼んでるんだ、とか、頭の片隅でぼんやり思っていたら、俺の頭を撫でていた煉獄先生の手が離れ、目元に伸びてきた。 おそらくは、みっともなくも泣いてしまった俺の涙を拭ってくれようとしたのだと思う。 けれども、その手が再び俺に触れることはなかった。

「なーにしてんだぁ?」

とんでもなく低すぎる声を出した人物が参入してきたかと思えば、その人が煉獄先生の手首をかっしりと掴み、もう片方の手で俺を抱き寄せたからだ。 (……なんで、) このタイミングでこの人がここにいるんだ、と驚いた身体は動きを止めたが、心臓はバクバクと爆発でもしそうな感じに脈打ちはじめた。 けれども、それ以上に、あまりに低い声と、その人から聞こえる重低音に、震えがおきた。 聞いたことのないものだったから。 こんな本気で怒ってるみたいな分かりやすい音、初めて聞いた。 ぴりぴり、どころじゃなう、びりびりする。 鼓膜も、肌も、殺気立った音に、すくんでしまう。

「黄色い少年の具合が悪そうだったので、介抱しようとしていただけだが?君こそ急に何だろうか?宇髄」

煉獄先生は、いつもと変わらずに答えていると思うのに、聞いた相手の音がまた低くなった気がして、びく、と俺の身体が勝手にびくついた。 そうだ、煉獄先生のいうとおり、急に現れたのは美術教師の宇髄先生。 煉獄先生の腕を掴み上げたかと思えば、俺を抱き寄せた。 ぎゅうっと逃げられないように、みたいな感じで。 なんだ、これは。 意味が分からない。 急に入ってきて。 しかも、声と音からして、確実に怒ってるみたいだし。 一体、何に怒ってるっていうんだ。

「ぐあい?確かに、顔色悪いが、……それだけで、泣くのかよ?」

抱きしめたまま俺の顔を器用に上げさせた宇髄先生が、視線にとらえた俺の涙を見ながら、納得がいかないようにいう。 しかも、苛立ったような舌打ち付きで。 というか、何がいいたいのか。 煉獄先生は、本当のことを説明しただけなのに。 自分は聞かれたことに答えてないし。 そもそも、俺の涙なんて、どうでもいいじゃないか。 何を、そんなにイライラしてるんだよ。 怖いんだよ、アンタから響きっぱなしの音が。 普段、そんな風に怒りを露わにしたりしないくせに。

「黄色い少年が泣いていたことは確かだが。それは俺たちの間でのことで、君には関係ないだろう?」 「ああ゛?」 「む?なんだ?関係あるのか?」 「教師が生徒を泣かすのはどうなんだよ?」 「例え、俺が泣かせたのだとしても、いつもこの少年に意地悪をして、からかっている君には言われたくないんだが?」 「……煉獄、お前、俺に喧嘩売ってんのか?」

二人のやりとりに、俺もそう思う、と思った。 煉獄先生がいつもと違って、挑発的というか。 らしくない感じがするのだけど。 宇髄先生が掴んだ腕にも力入りまくってるし。 お互いに引かない感じが、ビシビシ伝わってくる。

「そう思うなら、買ってくれて構わないが?それより先に黄色い少年を返してくれ。彼は具合が悪いんだ」 「返せって、お前のじゃねえだろうが」 「当然、俺のものでは無いが、君のものでもあるまい?」 「……」

すみません、この会話なに? 何の話ししてるのですか、この先生たちは。 意味不明なやりとりに貧血のせいだけじゃなく、クラクラしてきたのですが。 俺のこと完全に置いてけぼりだし。 なので、一応止めに入ろうと試みるが、失敗に終わった。 だって。

「今は俺のじゃなくても、先のことはわかんねえだろ?」

訳の分からないことを低く告げた宇髄先生に担がれてしまったからだ。 (……は?) この人マジ何言ってんだ?? 本当に意味がわからない。

「宇髄!」 「こいつが具合悪いのは俺のせいなんだよ。だから、俺が責任持って介抱するから、お前は、二度と善逸に構うな、よるな、さわるな、いいな?」 「……宇髄、君は子供か」 「はっ!お前には言われたくねえな。いいからお前は竈門にだけ構ってろ!じゃあな」

言い放つと、宇髄先生は俺を担いだまま歩き出した。 何が起こったかついていけてない俺は、ただただ、呆然とすることしか出来なかったわけで。

「そんなに大切なら素直に優しくすればいいものを」

煉獄先生の呆れたような、けれども、優しい声は耳に届かなかったのだった。



   **



「具合は?平気なのかよ?吐き気は?熱は?」 「ちょ、ちょっと、待ってください!なんで美術室に来てんですか?普通は保健室でしょ?」 「なんでって、ここなら二人きりになれるからな」 「なっ!!」

ソファーにあまりにも丁寧に降ろされ、宇髄先生からの矢継ぎ早の問いかけに、ハッと我にかえり、問い返すが、当然だというように返ってきた答えに、俺は言葉を失った。 何を言ってるんだ、この人は、と。 さっきもだけど。 今は自分のものじゃなくても、とか。 なんなんだ。 さっきだけじゃなく、最近の宇髄先生は変だ。 俺なんかに。

「お前のことが好きだっつったんだから、当たり前だろ」

そう、そんなことを言われた、先日。 意味不明だ。 そんなこというのは、何なんだ。 最初はいつものからかいか何かだと思ったのに、そうだと告げられた日から、態度が全然違うし。 からかわれたり、イジワルされるのはいつも通りなのに、雰囲気というか、音が全然違うんだ。 今までほとんど聞かせてくれなかったのに、あれから、あからさまな音を俺に聞かせてくる。 今も、ずっと。

ーー好きだ。

そう、甘ったるく囁かれてるみたいな音がする。 言葉で伝えられた日からずっと。 宇髄先生から、この音がするから。 一緒にいると、どうしようもなく落ち着かないし。 一緒にいなくても、ドキドキするし。 宇髄先生のことばかり考えて、よる、ねむれない。 貧血になるほどに。 本当にどうしてくれるんだ。 そんな爆弾を俺なんかに投げ込んで、どうしたいんだよ。 わけがわからない。

「んで?ぐあい、どうなんだよ?」 「っ、……ちょ、ほん、と、」

何してるんですか、と、言いたい俺よりさきに、顔を寄せてきた宇髄先生の額が俺のおでこに重なる。 瞬間に、ぶわ、と、顔に熱が集まったのがわかった。 それまでは、全然だったのに。 むしろ、熱が引いていたくらいなのに。 わずかな接触に、あっという間に熱くなる。 なんだこれ。 なんなんだ、これは。 宇髄先生に過剰反応してしまう自分自身が、一番よくわからない。 ありえないと思ってるはずなのに。 どうして、こんなにも簡単に宇髄先生に反応するんだ、俺は。 それもこれも、宇髄先生が変なことを言い出すから。

「熱はねえみたいだが、……すっげえ赤くはなってるな。お前、真っ赤な顔、可愛すぎかよ」 「な、に、……いってん、です、か」

もうこれ以上爆弾を投げてこないで欲しいのに、どうしてそんなに追い詰めてくるんだ。 何がしたいのか意図がわからないけど、そんなのずるいだろ。 こんな至近距離で。

「だって、可愛いもんは可愛いし?」 「っ、や、め、」

すりすり、と、重なったおでこをすり合わせながら、男前の顔がいってくるとか反則過ぎだと思うんだ。 そんなの平凡な人間の思考が上手く働かなくなってもしょうがないというか。 心臓がうるさすぎるよ。 俺は繊細なのに。 どっくん、どっくん、脈打ちすぎて、呼吸までくるしいし。 だから、この爆弾投下の数々をやめて欲しいと思っているのに。

「やめねえぜ?お前が諦めるまでな」 「……へ?」

拒否されたばかりか、変なことまで言われて、ポカンとした。 しかも、俺声に出してないのに、なぜわかったのだろうか。 いや、というか、あきらめるって、なにを? 俺は何も諦めなきゃいけないことなんてないし。 この人は何をいってくれてるのか。 この間から、頭おかしくなったんじゃないだろうか。 そうだ、そうに決まってる。 芸術は爆発だ、とかいって爆発させまくってるから、おかしくなっているとしか思えない。 だから、俺に好きだとかいいだしたんだろうし。 正気に戻るべきなんだ。 宇髄先生には、他にちゃんと綺麗で、大好きなど派手な感じの人が似合うと思うし。 俺みたいな髪の毛以外は地味なとこしかないやつは合わない。 全然合わないのだから。

「お前さ?俺も耳がいいってこと、忘れてねえか?」 「ふ、ぇ?」

耳がいい? 確かに、俺ほどじゃないらしいけど、宇髄先生が耳がいいのは知ってる。 聞いたから。 でも、だから、なんだというんだ。 耳がいいことと、俺が諦めるとか、そういうのの何がどう繋がるのか。 意味が分からない、と、眉を顰めれば、ふは、と、笑みをこぼした宇髄先生が、ようやく俺から顔を離してくれたかと安堵すれば、今度は、とん、と俺の胸のあたりに指先をあてた。 その行動の意味は何なのか、どうせ分からないだろうけど、一応数秒考えて。

(……!!!!!!!)

思い当ってしまったことに投げ込まれていた爆弾がどっかーん、どっかーんと、と脳内で大きな音を立てて爆発しまくった。

「……ふ、ひゃぁ!!はな、……はなれろぉぉぉぉ!!!」

それと同時に上がった自分の声というか言葉がおかしなものになったのは、もはや気にしてはいられないので、とりあえず、宇髄先生と距離を取りたくて、ジタバタもがいて必死に逃げ出そうとした。 けれども、逃げられなかった。 結構必死に暴れたつもりなのに。 伸びてきた宇髄先生の手に、あっという間につかまり、何故か、ソファーの上に押し倒されてしまったからだ。 どういうことだ。 顔が男前だと、こんなことも、こんなにもあっさりと出来てしまうものなのか。 なんて、今考える必要のないことが浮かぶ。 この場から逃げられないなら、せめて現実から逃げ出したくて。

「お前、自分がどんだけ分かりやすい、ど派手な音出してたか、マジで気付いてなかったのかよ?」 「う、うるっさいな!!きくな!へんたい!!えっち!!えっちぃぃぃ!!」 「えっちって、今のこの状況で言われると、ムカつくより興奮するから、やめた方が、お前の為だけど?」 「ふ、え?……こう、ふん?」 「そ。なんなら、このままエッチなことしてやろうか?」 「ふっ、にゃぅ」

ふう、と、耳に息を吹きかけられて、へんてこすぎる声が出てしまった。 はずかしい、を超えて、もはや情けない。 にゃうってなんだ。 いつから、俺は猫になったんだ。

「ふは。善逸、おまえ、ほんと可愛いな。俺好み過ぎて、おかしくなりそうだぜ」 「なっ、そ、……この、」

そんなの嘘だ、好みとか、と言葉に全くならなかったのに、宇髄先生には何故か伝わったらしく、嘘じゃねえよ、と返されてしまった。 (……うう、) なんでわかるんだよ、と、思う。 いくら耳がよくたって、今のはまったく言葉にならなかったのに。 そんなのやっぱり、言葉じゃないものが伝わっていると教えられているようで。

「隠してねえな、とは思ってたが、まさか俺に駄々もれなことに気付いてなかったとはな?」 「……う、……あ、」 「ちゃんと届いてたぜ?お前の音。だから、諦めろ。全部分かってんだよ。お前が何考えてるかなんて」

諦めろの意味がなんなのか、と思ってはいたけれども、まさかこんな形で知ることになるとは。 これなら、知らないままの方がよかった気がしてくる。 だって、こんなの、どうしたらいいんだ。 俺は、諦めるもなにもなかったはずなのに。 だから、否定しなければいけないのに、口から出てくれるのは、あ、とか、う、とか、まったく言葉にならないものばかりで。 そんなものが否定の言葉に成りうるわけもなく。 意味をなさない声は、かぷ、とかぶさってきた宇髄先生の口の中に食べられてしまった。 いきなり何してくれてんだ、と、いってやりたくても、ぺろっと、そのまま舐められてしまえば、じんじんとした初めて感じる疼きが、唇から下肢まで広がって、俺の自由を奪う。 なんだ、これ。

「……ぅぅ、おれの、はじめて、」

唇が解放されたので、何とか口と喉をこじ開けて、懸命に恨めし気にいうが、まったく悪気のない感じの宇髄先生は、むしろ心底嬉しそうに笑っている。 人のファーストキスを奪っておいて、なんだその態度は!とは、今は声になりそうにないのだけれども。

「お前の初めては全部俺のもんだから、気にすんな」 「……どこのガキ大将」 「つうか、お前もそんな意地張って、胸の奥に閉じ込めてねえで、言葉にしてみろって。具合悪いのも治るし、楽になるぜ?」 「……な、なんで、」 「んー?」 「……おれ、なんだよ」 「お前がいいから」

当然のことのように返されて、ぶわ、とそうでなくても熱い顔が、全身の体温を何度も上げる。 他に、アンタならいっぱい、選びたい放題だろうに、どうして、俺なんかに、そんな音を聞かせてくるんだ。 おかしくなる。 そんなはずないと、懸命に否定し続けたものががらがらと崩れてしまう。 考えないようにすればするほど、考えてしまって。 こんな夜眠れなくて、体調まで崩して。 一生懸命、俺にしてはかなり頑張って、自分の音は聞かないようにしてたのに。 まさか、本人に聞こえていたなんて、酷い話じゃないか。 神さまに恨み言の一つでも言いたくなるのに。

「善逸、好きだぜ。お前も言えよ。お前の音が俺のこと好きでたまんないって素直に鳴ってんだから、その口で言えよ、聞きたい。善逸の声で聞かせろよ」

そんなことを甘い音を響かせていってくるから、バカになるじゃないか。 必死に閉じ込めていたものがこじ開けられて、生まれたての赤子同然の想いを、すぐに声に乗せるなんて俺にはあまりにもハードルが高すぎるのに。 善逸、と、あまりにも甘い声で何度も呼ぶから、どうしようもない気持ちになる。 しかも、そんな見たことない切ない表情でみつめるとか、本当にずるすぎる。 そうでなくても、ドキドキしっぱなしの心臓が、ぎゅーっと締め付けられるじゃないか。 呼吸がうまくできなくて、くるしいし。 胸の奥から甘ったるいものがせり上がる。 だから、だめ、と、思っても、もはや遅い。

「………すき、で、たまんないって、わけじゃないけど、すき、は、すき、ですよ、たぶん」

想いが言葉にのって、ついに俺の口から零れ落ちた。 これが、今の俺の精一杯。 我ながら全然素直じゃなくて、可愛げの欠片もない言葉だとは思うけれども。 それでも。 俺に覆いかぶさっている人には筒抜けなのだ。 だって、音が返ってくるから。 俺のうらはらな想いを、しっかりとその耳に受けた宇髄先生から、嬉しいと音に乗って伝わってくる。

「ほんと、可愛いな、お前」

俺が可愛いとか、そんなこと絶対にあるわけないと思うのに。

――かわいい。 ――好きだ。 ――愛してる。

甘すぎる音と一緒に、あまったるく囁かれながら、優しく何度も何度もキスされたら、頭の中がどうしようもなく、ぐずぐずに溶かされて、わけが分からなくなる。 こんなの、おかしくなる。 だから。

「……おれ、も、すきぃ、……うずい、せん、せ、すき、」

そう、つい、うっかり、ばかになった俺の口から零れるのは仕方のない話で。 それを聞いた宇髄先生の余裕が消えて、キスが、それまでの優しいものじゃなく、強引で噛みつくような荒々しいものになったのは、俺の自業自得なのかもしれない。

当然、すべてが初めてだったので、ついていけるはずのない俺が、途中で気を失ったのは言うまでもないことである。











「ねえ、もしかして煉獄先生に嫉妬した?」 「……」 「音が今まで聞いたことないくらいこわかったんだけど」 「……」 「けど、煉獄先生は本当に俺のぐあい、」 「俺の前で他の男の話すんな」 「ふえ?」 「つうか、次勝手に触らせたら、お仕置きだからな」 「は??り、りふじん!」 「うるせえ。お前は俺にだけ頼ればいいんだよ」 「な、……に、それ、」 「わかったな?」 「……」 「善逸」 「……」 「お前、……嬉しいって音がど派手に漏れてるぜ?」 「か、勝手に、きくなー!!えっちぃ!」 「あー、はいはい。えっちえっち」



後に歴史教師は語る。

「宇髄がそばにいることは最初から知っていたぞ!」



***

【宇善】こじ開けないで、マイハート。
まだお付き合い前の教師な宇髄先生と生徒な善逸くん。
善逸くんが具合悪くて煉獄先生に心配されてたら宇髄先生がいきなり現れた!というお話です(笑)
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煉炭好きが書いてるので煉善要素はありません。
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