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【2021年1月・4月】派遣法改正で何が変わる?6つのポイントをわかりやすくご紹介します
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ここ数年で大きな改正が続いている「労働者派遣法」。令和3年(2021年)1月、4月にも改正されました。
今回の改正は、2020年9月18日に労働政策審議会における「「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱」等について(諮問)」が公開され、2020年10月9日に官報にて改正が発表されています。
この記事では、派遣法改正のポイントをご紹介いたします。
【目次】
2021年1月1日・4つの改正
まず1月に変わった点からご紹介します。
4月の改正に先駆け、1月から以下4点が変化しています。
教育訓練計画説明の義務付け
・派遣元事業主が実施する「教育訓練」および希望者に対して実施する「キャリアコンサルティング」の内容について、派遣労働者の雇入れ時に教育訓練計画の説明をすることが派遣元事業主に義務付けられます。
・教育訓練計画自体の変更時も同様に説明が義務付けられます。
この改正のポイント
派遣労働者は雇用契約期間に限りがあるため、派遣先の職場で腰を据えてキャリアを積むことができません。そのため、所属元となる派遣会社で教育訓練やキャリアコンサルティングを行い、派遣社員がキャリア形成をしていけるようにする目的があります。
実際、派遣元事業主における教育訓練の体制は整備されてきた一方で、派遣労働者の訓練やキャリアコンサルティングの受講状況は低い水準に止まっている実態があります。
まだ受講している人が少ないながらも、キャリアコンサルティングを受けた派遣労働者からは「効果を感じられた」という意見が多く見られている現状もあるのです。
こうした状況を踏まえ、派遣労働者が自身の希望に沿ったキャリアパスを歩むことができるよう、キャリア形成支援の充実を図ることが重要でありこれらの措置を講じることが適当である、というのが政府の見解です。
派遣契約書の電磁的記録を認める
・派遣元企業と派遣先企業との間で締結される『労働者派遣(個別)契約』は書面記載が必須であり、電子化が認められていませんでしたが、この改正で電磁記録で作成することも認められました。
この改正のポイント
派遣労働者への労働条件・就業条件明示は電子メールやSNSによる送信が認められていましたが、企業間のやりとりでは電子化が認められていませんでした。企業間の契約においても電子化が認められたということです。
派遣先における、派遣労働者からの苦情の処理について
・派遣労働者から、労働関係法上(労働基準法・労働安全衛生法・育児休業・介護休業等)に関する苦情があった場合、派遣先企業も主体的に対応する義務を設ける。
この改正のポイント
派遣労働者の苦情の相談先としては派遣元事業主が大半ですが、派遣先にも相談が多い状況を受け、この改正がなされました。
日雇派遣について
・派遣労働者の責に帰すべき事由以外の事由によって労働者派遣契約の解除が行われた場合について、必要な雇用管理が適切に行われるようにするため、派遣元事業主は、新たな就業機会の確保ができない場合であっても、休業等により雇用の維持を図るとともに、休業手当の支払等の労働基準法等に基づく責任を果たすべきことを明確化する。
この改正のポイント
無断欠勤など派遣労働者の責になる理由の場合は除き、その他の理由で契約解除となった場合、雇用機会の確保のために派遣元企業側で休業手当などの支払いを対応することが必要となります。
2021年4月1日・2つの改正
4月からは以下2点が改正されます。
雇用安定措置について派遣スタッフの希望を聴く
・派遣元事業主は、雇用安定措置を講ずるに当たって、派遣労働者の希望する措置の内容を聴取しなければなりません。またその聴取結果を派遣元管理台帳に記載しなければなりません。
この改正のポイント
派遣スタッフの雇用安定措置は2015年改正から取り入れられていますが、今回の改正では「雇用安定措置がより適切なものになるよう派遣スタッフの意見も取り入れる」というところがポイントです。従来では、派遣元会社が派遣スタッフの就業期間が終了した後に直接雇用に変えるよう派遣先会社に依頼する必要があり、企業間のやりとりになっていました。
派遣期間終了後、派遣スタッフの今後の希望も踏まえて、派遣先でそのまま直接雇用になり働き続けるか、別の派遣先の紹介を希望するか、その他雇用継続をするための何かしらの措置を希望するか、等をすりあわせていく必要があります。
マージン率等のインターネットによる開示の原則化
・派遣法第23条第5項の規定により、派遣元事業主による情報提供の義務がある全ての情報について、インターネットの利用、その他適切な方法により、情報提供が原則となります。
この改正のポイント
上記の派遣法第23条第5項の「派遣元事業主による情報提供の義務があるすべての情報」とは次の4つです。
・労働者派遣の役務の提供を受けた者の数
・派遣料金の額の平均額から派遣労働者の賃金の額の平均額を控除した額を、派遣料金の額の平均額で除して得た割合(マージン率)
・教育訓練に関する事項その他当該労働者派遣事業の業務に関し、あらかじめ関係者に対して知らせることが適当であるものとして厚生労働省令で定める事項
マージンとは、派遣先会社から派遣元会社に支払われる紹介料や派遣手数料です。
従来はマージン率を開示していない派遣元会社がほとんどでしたが、この改正によりマージン率の公開が義務化されました。派遣を依頼しようと考えている企業が参考にするのはもちろん、労働者も派遣会社を選ぶ情報のひとつになります。
「マージン=紹介料や手数料というならば、マージンが低いほうが良いんじゃないか」と思う方も多いのではないでしょうか。
実は、マージンが低いから良い会社、ということにはなりません。
マージンが高くても、その分派遣労働者に還元していたり、教育訓練や、福利厚生に還元している企業もあります。また、マージンが低い=派遣元会社には薄利多売にもなりかねないため、マッチ度の低い派遣スタッフでも就業させてしまうケースもあります。
マージン率の開示はそれらの”判断材料”。各社の教育訓練制度や福利厚生を見て判断する必要があります。
事業主はこの変更点に注意しましょう
2012年、2015年と続いている派遣法改正。今回の派遣法改正ではどのようなところを注意したら良いでしょうか。
今回の改正では、新しい対策が必要となるものではなく、従来あるものの細部が決められていたり、書面が電子化するなどの改正が主なので、特別な対応は必要ありません。
しいて言うならば、次の点を準備しておくと安心です。
説明義務について、教育訓練やキャリア形成への考え方が漏れなく伝えられているか?
すでに取り組んでいる企業も多いかとは思いますが、すべてのスタッフにもれなく実施ができているかオペレーションの確認をしておきましょう。
派遣会社との契約書について、電子化の検討を
電子書面でもOKです!という変更なので、書面でも問題ありません。昨今のテレワーク推奨により電子契約書に切り替え、押印や回覧を省いている企業も増えてきています。一度電子化ができるか?の検討をしてみても良いかもしれません。
派遣労働者から苦情があった場合、主体的に対処する担当者を設置
大きな変化とは言い難いですが、派遣スタッフからの苦情対応に主体的になることが義務化されたのですから、派遣スタッフのマネジメントについて時間を割くことも増えてくるかもしれません。その際、派遣スタッフからの苦情をとりまとめ、処理する責任者を決めておくと安心です。
派遣スタッフからの苦情は大なり小なり様々ですが、派遣先で解決できるものは派遣先で対応しても問題ありません。すぐに解決できるもの(派遣先企業内だけで解決できるもの)もあれば、派遣元企業と協力しながら解決をせねばならないこともあります。この場合は、適切に情報収集を行い、連携して解決にあたることが求められます。いずれも、苦情の内容は派遣元台帳、派遣先台帳に記録をしておきましょう。
マージン率の開示義務化、ホームページへの掲載を
労働者派遣事業では、以下の情報を開示する必要があるとされています。
・派遣労働者数
・派遣先社数
・マージン率
・教育訓練に関する取り組み状況
派遣利用を考える企業、派遣登録を考える労働者いずれも閲覧できるよう、ホームページに掲載するなどして確認できる環境をつくっておきましょう。
<参照> 厚生労働省 派遣元事業主・派遣先の皆様 労働者派遣法が派遣労働者の保護と雇用の安定を図るため改正されました
関連情報:雇用安定措置
雇用安定措置とは、派遣社員が上限とされている期間:3年間を超えて働くことを希望する場合に、派遣元会社の対してとられる措置のことです。無期雇用で働いている場合は対象外となります。
派遣社員が3年働き、今後も同じ職場で働きたいという希望を持っていても、法律上派遣契約は終了となってしまいます。その時がきても継続して勤務ができるよう、派遣契約期間終了後の雇用について考えた措置をとる努力義務があります。
例えば、
・派遣先での直接雇用採用を依頼する
・新しい派遣先を見つける(就業中の職場と居住地・経験・賃金・待遇などが著しく下がらない、同等程度の職場)
・派遣元企業で派遣労働者以外の雇用形態で無期雇用する
・キャリアアップを図るための教育訓練や紹介予定派遣を行う
その他、雇用継続ができるようにできるだけの措置をとらねばなりません。
今回の派遣法改正では「労働者本人の要望を取り入れなければいけない」ことになりました。そのため、労働者本人に上記の措置で希望するものを直接確認する機会をもつ必要があり、どの措置を選ぶかは派遣社員に決定権があります。
関連情報:同一労働同一賃金
パートタイム・有期雇用労働法の改正により「同一労働・同一賃金」が話題になりました。
これは、正社員(無期雇用のフルタイム労働者)とパートタイム労働者、有期雇用労働者の待遇や賃金格差をなくしていこうという考え方です。これは派遣にもあてはまります。
特に派遣の場合、派遣先が変わるごとに賃金水準が変わるため、所得が不安定になりがちです。企業規模や、業務の難易度によっても賃金が変わることが想定できます。
待遇差が禁止されるのは、基本給、賞与、手当、福利厚生など。もし行っている業務に差がなければ、派遣であっても社員と同様の額まで給与を上げる必要があります。また、不合理な待遇差の禁止として、職務内容や配置変更の範囲についても言及されています。
こちらの記事で詳しく記載しています。
最後に
2021年(令和3年)1月・4月の派遣法改正についてご紹介しました。
派遣といえば「必要な業務を遂行するためだけに期間限定で仕事を頼む人」というイメージでしたが、近年の非正規労働者の雇用待遇改善を受け、キャリア形成や雇用安定措置まで求められています。2021年からは高齢者雇用や障害者雇用についても変化があり、人事担当者はこれまで以上に情報のキャッチアップと事前対応が求められるでしょう。
派遣労働者の労務環境を保つための管理や、他社の管理状況を知るためにも外から人を入れることは改善に繋がります。専門家からのアドバイスを求めたり、業務が浮いている部分があればアルバイト・パートなど短時間でも継続して働いてくれる人を採用するという手もあるでしょう。
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