もともと、タロンは8mmのライフルになるはずでした。
それがちょっとした手違いから10mmのライフルになり、圧倒的な破壊を見せつけ私の中で大口径主義が花開きました。この時代が2011年の秋から今日まで3年半続きました。
長かった。
3年半という道のりはとても長い。
しかしそれも今日で終わり。さらなる初速を求めてタロンを8mmに戻します。
Model12A3 Talon4
全長 136cm
重量 3kg
口径 8mm
ゴム #40平ゴム4本(オーバンド)
プリテンション0%
引き伸ばし率 5.31倍
加速距離 72cm
前部連結プレートにはL字ステーではなく、後部連結プレートと同じ2.4mm厚の鉄板を使用。ヨークは角パイプの上面をギリギリ削らない場所に配置しヨークの中点と弾の軸を一致させています。これにより、弾受けがレールを擦ることによる減速、弾をレールに押し付けることによる減速を少なくしています。また、プリテンション0%、つまり#40平ゴムが自然長でピンと張る位置に弾受け止めを配置し、ゴムの張力がなくなった後の負圧による減速を少なくしています。負圧による減速が実際にあるかどうかは実験を行わないとハッキリわかりませんが、私はあってもおかしくないと思います。
で、前回書いた初速向上理論を基に今回の改修を行ったので、成果と精度を確かめてみますよ。
こちらの都合でちょっと構成を替えて、弾受けを5mmクレモナ金剛打、弾を8mmケルダボでやっています。
また、引き伸ばし率を5.4倍にすると弾受けの結び目が上フレームに擦れるので、最大よりちょっと低くしています。
前回の式を使って計算し直すと、この弾+弾受けの重量と気温25℃で83.96ps出るはずです。
※この二つのグラフの式を使って弾+弾受けの重量と気温から初速を出せるんじゃないかという事で、算出した値を理論値としています。
弾の重量 4.67g(8mmケルダボ)
弾受け重量 3.72g
弾受け直径 5mm(クレモナ金剛打)
弾+弾受け 8.39g
気温 25℃
初速 71.16mps
理論値 83.95pms
理論値との差 12.79mps -15.24%
……低い。ちょっとまずいレベルで低いです。
比較として、同じ時間に行ったブラッククイーンの測定結果です。
気温 25℃
弾の重量 9.84g
弾受け直径 6mm
弾受け重量 5.56g
引き伸ばし率 5.14倍
加速距離 70㎝
初速 69.95mps
理論値 69.79mps
理論値との差 +0.16mps +0.23%
こっちは温度変化のグラフから求められる数値とほぼ変わらない値ですね。
ってことは、前回の温度変化グラフはおおむね正しいわけです。今回の数字も入れて精度上げます。
※なお、この式は私のタロンやブラッククイーンとほぼ同じ構成のライフルでしか使えないと思うので、気温による初速変化が知りたいときはときはご自身のライフルで気温差の大きい日に最低気温と最高気温の二点を測定して算出してくださいね。
温度変化グラフが正しいという事は、弾+弾受けの重量変化のグラフが間違っているのでしょうか?
それとも本体側の原因でしょうか?
発射時にゴムが切れたからでしょうか?
とりあえずタロンのゴムを交換してもう一回実験やります。
2回目
弾受け 前回と同じ
気温 24℃
初速 70.61mps
理論値 83.95mps
理論値との差 -12.34mps -15.89%
初速伸びね…… むしろちょっと落ちた……
弾受けを本来使う予定だった3mmナイロンロープにしてみます。
3回目
気温24℃
弾受け直径 3mm(ナイロン)
弾受け重量 2.02g(なぜか前回は1g重く考えていました。すまぬ)
弾+弾受け 6.69g
初速 68.95mps
理論値 85.54mps
理論値との差 -16.59mps -19.39%
軽い弾受け使ったのに初速落ちました。
ってことはもしかして……
4回目
気温24℃
弾受け直径 6mm(クレモナ金剛打)
弾受け重量 5.45g
弾+弾受け 10.12g
初速 76.03mps
理論値 79.76mps
理論値との差 -3.73mps -4.67%
一番重い弾受けが一番速い。
一見ワケわからん現象ですが、ゴムと弾の関係その2でやった実験を思い出してください。
今実験の初速低下の原因は弾受けの太さにあると考えます。もっと言うと「効率的に弾受けが弾を押せているか否か」でしょう。けっして、「#40平ゴムの最大伸縮速度が76mpsだから」ではないはずです。
エネルギー伝達効率低下の原因として考えられる事が一つあります。
恥ずかしながら今作の下フレームは急いでいたこともあって、ちょっと雑な部分があるのです。
それがここ。
装填されているのは8mmケルダボではありません。9mmケルダボです。
フレーム後端のクリアランスが大きすぎました。1mmって。いつもの10倍です。
弾受けが細すぎると初速が落ちるのと同じように、弾受けの径が適切でもクリアランスが大きすぎると初速が落ちるという事でしょう。弾がフレーム内で上下に動いて中心に弾受けが掛かって無いのでしょう。中心に掛からないと効率的に弾を押せなくなります。
弾受けの適正値は「弾の半径+1mm」、つまりタロン4では5mmと思っているのですが、今回は6mmの方が速かったですね。
これはレール間の隙間より6mm弾受けの方がほんの少し大きいため、弾のクリアランスとか中心とか関係なしに押せるためでしょう。しかし、ほんの少し大きいという事は弾受けとフレームの摩擦があるという事で、これが理論値との差でありましょう。
今実験の結論は、「負圧とか押し付けとか重量とかよりも、弾受け直径の方が初速への影響が大きい」です。
まいったね。
ゴールデンウィーク中に上フレームを交換してクリアランスを適正にします。