独りの創作家さんが行った加速中のゴムの物理演算によってこの方式は生まれました。演算によってフックから弾けたゴムは加速距離の2/3ほどでほとんどの加速を終え、あとはごくわずかな加速しかしないという結果が得られたのです。そこで、フックから加速距離の2/3の部分に弾受け止めを配置してごくわずかな加速を犠牲にすることで、ゴムの稼動距離およびコッキング時間の大幅な短縮・フレーム強度の向上といった効果を得るのが「プリテンション式」です。
なぜゴムの加速がそのようなことになるのかという理論については私から多くを語る必要はないでしょう。しかし、何も書かないというのもいけないので、プリテンション式に対する私なりの解釈を書いていきます。
直感的には加速距離を1/3も削ると初速もそのぐらい落ちてしまう気がします。しかし加速距離を1/3短くするのと、プリテンションで加速距離を1/3残してゴムを止めてしまうのは初速に大きな違いがあります。これはなぜか?
簡単に言えば、ゴムの質・長さ・引き伸ばし率というのは実銃でいう火薬の量や燃焼速度に相当し、加速距離はバレル長に相当するのです。
こう考えれば加速距離の1/3を削っても初速にさほど影響がないことがすっと理解できると思います。
ゴムの引き伸ばし率を変えずにゴムの長さと加速距離を短くするというのは、弾の火薬を少なくして銃身も短くするようなものです。当然、もとのライフルに比べて初速低下は大きいです。
プリテンション式はゴムの長さと引き伸ばし率を変えずに加速距離を変えます。これは火薬量を変えずに銃身を切り詰めるようなものです。これは実銃でもよくあることですね。プリテンション式への改造はM16アサルトライフルをM4カービンにするのと同じなのです。両銃の銃身長は28%ほど違いますが、初速にはそんなに差がないことはみなさんご存じと思われます。そして、実銃でバレルを短くしても取り回しが多少良くなるだけですが、レール式スリングライフルをプリテンションにすればそれ以上の恩恵を得られるのです。
ここまで読まれて「プリテンション式は机上の空論ではないの? 本当に効果あるの?」という疑問を持たれた方がほとんどでしょう。私もそうです。なので実証実験をします。幸いなことに必要な機材はそろっているので、パッパとやります。足りないのは時間だけです。
使用スリングライフル Model19RA2 Bengal
弾の重量 9.84g
弾受けの重量 5.79g
コッキングしてから発射までの時間 おおよそ25秒
ゴム #40平ゴム4本
引き伸ばし率 5.14倍
加速距離72cm
1回目 気温12℃
プリテンションなし
初速 55.42mps
コッキング時間(弾受けをつかんでからフックに掛けるまで) 4.1s
プリテンション33%(フックからの距離48cm)
初速 56.70mps
コッキング時間 2.1s
2回目
気温18℃
プリテンションなし
初速 58.36mps
コッキング時間 5.6s
プリテンション33%
初速 61.83mps
コッキング時間 3.7s
どういうことなの……?
加速距離の短縮と加速後のレールからの摩擦増加があるのでプリテンションのほうが速いというのはわけわからんのですが。
そんなことがあったら夢の技術すぎます。
加速後のゴムが弾に接触することで弾の初速が落ちているのでは? と考えたのですが、実験順が プリテンション→なし→プリテンション→なしというものであり弾受けは交換したばかりだと結び目が伸びるので、それが原因で引き伸ばし率が変わった可能性が高いです。なので、2回目の比較より一回目の比較のほうが信憑性高いです。三回目は実験順を逆にしてやろうとしましたがコッキング中に結び目が解けてしまったので、後日弾受けを結び直して なし→プリテンション→なし→プリテンションという実験順でやってみます。やり直す時間なかったのです。近日中に追加実験を行うのでちょっと待っていてください。
しかし、ちょっと弾受けが伸びた程度でなくなってしまう初速低下なんて無視してもかまわんのではないか? と思ってしまいますね。やっぱり夢の技術といってしまっても過言ではないのでは?