このブログでも一度はっきり書くべきだと思ったので。
まずスリングショット、スリングライフルの製造・所持によって抵触すると思われている法律は以下の通りです。
スリングショットを用いた狩猟に関しては長くなりすぎるので書きません。
※2014/10/05追記 気体を使った金属性弾の発射について少々間違いがあったので訂正しました。
・銃砲刀剣類所持等取締法(いわゆる銃刀法)
第二条
この法律において「銃砲」とは、けん銃、小銃、機関銃、砲、猟銃その他金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲及び空気銃(圧縮した気体を使用して弾丸を発射する機能を有する銃のうち、内閣府令で定めるところにより測定した弾丸の運動エネルギーの値が、人の生命に危険を及ぼし得るものとして内閣府令で定める値以上となるものをいう。以下同じ。)をいう。
第二十二条の二 何人も、模造けん銃(金属で作られ、かつ、けん銃に著しく類似する形態を有する物で内閣府令で定めるものをいう。以下この項において同じ。)を所持してはならない。ただし、事業場の所在地を管轄する都道府県公安委員会に届け出て輸出のための模造けん銃の製造又は輸出を業とする者(使用人を含む。)が、その製造又は輸出に係るものを業務のため所持する場合は、この限りでない。
2 前項ただし書の届出に関し必要な細目は、内閣府令で定める。
(販売目的の模擬銃器の所持の禁止)
第二十二条の三 何人も、販売の目的で、模擬銃器(金属で作られ、かつ、けん銃、小銃、機関銃又は猟銃に類似する形態及び撃発装置に相当する装置を有する物で、銃砲に改造することが著しく困難なものとして内閣府令で定めるもの以外のものをいう。次項において同じ。)を所持してはならない。 2 前条第一項ただし書及び第二項の規定は、模擬銃器の所持について準用する。
・武器等製造法
第二条 この法律において「武器」とは、次に掲げる物をいう。
一 銃砲(産業、娯楽、スポーツ又は救命の用に供するものを除く。以下同じ。) 二 銃砲弾(銃砲用のものをいい、発光又は発煙のために使用されるものを含み、クラスター弾等の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律 (平成二十一年法律第八十五号)第二条第一項 に規定するクラスター弾等(次号において「クラスター弾等」という。)を除く。以下同じ。)
三 爆発物(破壊、燃焼若しくは殺傷又は発光若しくは発煙のために使用され、かつ、信管により作用する物であつて、産業、娯楽、スポーツ又は救命の用に供するもの以外のものをいい、銃砲弾、対人地雷の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律 (平成十年法律第百十六号)第二条 に規定する対人地雷及びクラスター弾等を除く。以下同じ。)
四 爆発物を投下し、又は発射する機械器具であつて、政令で定めるもの
五 前各号に掲げる物に類する機械器具であつて、政令で定めるもの
六 専ら前各号に掲げる物に使用される部品であつて、政令で定めるもの
2 この法律において「猟銃等」とは、左に掲げる物をいう。
一 猟銃
二 捕鯨砲
三 もり銃
四 と殺銃
五 空気銃(金属性弾丸を発射するものをいい、圧縮ガスを使用するものを含む。)
・軽犯罪法
第一条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
二 正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者
十 相当の注意をしないで、銃砲又は火薬類、ボイラーその他の爆発する物を使用し、又はもてあそんだ者 十一 相当の注意をしないで、他人の身体又は物件に害を及ぼす虞のある場所に物を投げ、注ぎ、又は発射した者
長いですが、抵触する恐れがある、抵触していると思われているのはこれらの部分ですね。
スリングショットはこれらに本当に抵触しているのか?
まず銃刀法
この法律で規制されているのは気体の膨張圧力をもちいて飛翔体を加速するものです。すなわち、装薬銃(実銃)・空気銃ですね。玩具のエアガン・ガスガンは気体の圧力で弾をとばしているので、運動エネルギーが人を傷害しえる威力(銃口から1mの地点で3.5J/cm^2)を超えると準空気銃、人の生命に危険を及ぼしえる威力(20J)を超えると空気銃と分類されるのです。玩具なのに人に危害を加えることができるのはおかしいという事です。また、気体を使うものは金属性(金属のような性質をもった素材)の弾を飛ばすと銃刀法に抵触する恐れが強くなります。なぜなら重い金属を「飛ぶ」というレベルまで加速するとそれだけでエネルギーの規定値を超えてしまうからです。
(6mmの鉛球が大体1gなのでこれで計算すると、45mps程度で3.5J/cm^2を超えてしまう)
スリングショットのほかにもクロスボウ・レールガン・コイルガン・弓(アーチェリー・弓道)など、これらのエネルギー以上のものが存在し、一般に流通しています。(レールガン・コイルガンは自作しかありませんが)
それは気体の膨張圧力を用いて弾を飛ばしていないし、玩具でもないからです。銃刀法に関しては一点の曇りもなく完全に合法なのです。もちろんこれらを使って傷害事件などを犯した場合は厳しく処罰されます。
運動エネルギーに関してまとめると、
気体を使って金属性弾を飛ばす→運動エネルギーが上記の値を越えていれば違反
気体を使ってプラスチックなどの弾を飛ばす→運動エネルギーが上記の値を越えていれば違反
張力・磁力・ローレンツ力など気体以外を使って金属性弾を飛ばす→エネルギーに関係なくOK
張力・磁力・ローレンツ力など気体以外を使ってプラスチックなどの弾を飛ばす→エネルギーに関係なくOK
製造物そのものが銃でなくとも、構造によって銃弾を発射する機能があると認定(機構や材質の強度などで判定)されれば銃刀法違反となります。(第二十二条の二および三)
タナカのカシオペアモデルやアサヒのM40、コクサイのM29 、3Dプリンター製のモデルガンや改造モデルガンの類がこれに当たります。
「スリングライフルもこれに当たるのではないか?」という懸念がありますが、同様の構造で鋼をふんだんに使っているクロスボウがこれに類せず合法であるため、スリングライフルも同様に合法だと判断できます。しかし、ハンマーや銃身などを作って実銃に構造を近づける(銃弾の激発機構に類するものを取り付ける)とこれに抵触する危険があります。スリングライフルはあくまでスリングライフルとして作らねばならないという事です。
次に武器等製造法
スリングショットは鉄砲ではないので規制を受けません。(上記銃刀法部分参照)
最後に軽犯罪法
「正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者」
スリングショットは不名誉ながら「人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具」になると考えられますが「携帯」というのは持ち歩くことで、単純所持(住居に置いておくこと)や製造は禁止されていません。また、正当な理由があれば持ち歩いてもよいということになります。包丁もって町をぶらついてはいけないのと同じことです。
正当な理由とは、「同号所定の器具を隠匿携帯することが、職務上又は日常生活上の必要性から、社会通念上、相当と認められる場合」です。例えば「包丁を買って家に持ち帰る」とか、「弓道場に弓を持っていく」といった場合は正当な理由とみなされます。
スリングショットを持ち歩く理由として考えられるのは、「射場への運搬」「猟場への運搬」「護身用」などが考えられますが
射場への運搬→スリングショットの保管場所と射場が離れている場合は運搬する必要があります。スリングショットには正式な射撃場がないので許可を得た土地や自分の土地で撃つことになると思いますが、正式な射撃場ではないためグレーではないかと思われます。
猟場への運搬→スリングショットを用いた狩猟は合法ですが一般的でなく必要性もどうかと思うので、このために山や川に運搬するのはグレーではないかと。
護身用→認められません。絶対にやめて下さい。ナイフなどを護身用と言って持ち歩いてはいけないのと同じです。
「相当の注意をしないで、他人の身体又は物件に害を及ぼす虞のある場所に物を投げ、注ぎ、又は発射した者」というのは、
つまり矢先の確認をせずに(空とか見通しの悪い場所)に撃ってはいけないという事です。危険ですからね。
ということで、抵触する恐れがあるのは軽犯罪法のみでしょうが、それでも単純所持や製造は禁止されていません
軽犯罪法によって規定されているのは運用、使用の注意点程度のことについてですから所持や製造については問題ないという事になります。
しかしそれでも危険な道具であることにはかわりありませんから、相当の注意とモラル・マナーが求められます。
参考
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S33/S33HO006.html
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S28/S28HO145.html
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S28/S28F03801000043.html
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO039.html