本講義でご紹介するのは、20世紀初めのシカゴで多く見られた、タクシーに乗るような手軽さで女性とダンスができるダンスホールのモノグラフです。そしてこのモノグラフは、都市社会学という学問ジャンルを確立したシカゴ大学の研究者によって調査、執筆され学位論文として提出されたものです。
本講義では、当時急成長を遂げていた都市シカゴの当時の姿や、シカゴ学派の都市社会学の概要、彼らが行った調査の方法などを解説しながら読み進めることで、タクシーダンス・ホールの世界を楽しんでいただきます。その際、シカゴ学派の視点に力を借りて「夜の街」問題など、現代社会の様々な現象と接続をさせながら考えてみましょう。
現代社会では様々な人々の、様々な世界が重なり合っています。本講義を通して、皆さんが社会構造と接続しながら、未知の小世界に接近する際の一助となればと思っています。Slackでは、本書の読解に関する内容はもちろんのこと、皆さんの普段の生活や、興味を持つ社会的世界を議題に、一緒に理解を深めていきましょう。
第1回(11月04日(水):20:00-21:30)
第一章〜第三章を中心に取り上げます。まずは本講義の全体的な流れ、本書を読み解く上で重要な当時のシカゴの歴史やシカゴ大学の設立、及びシカゴ学派の都市社会学の成立について簡単に取り上げた上で「タクシーダンス・ホール」の活動を覗いてみましょう。
第2回(11月11日(水):20:00-21:30)
第四章〜第七章を中心に取り上げます。第二回では、著者クレッシーがタクシーダンス・ホールの内実を明らかにするために、主に使用した調査方法を一緒に覗いてみましょう。現代の社会学では様々な調査方法が開拓されていますが、当時のシカゴ学派が用いた調査方法は、現代の社会学でも使用される方法の一つです。この回では、社会学における調査方法に関して概観したうえで、シカゴ学派がその中でいかなる調査法を用いたのか、そしてそれが何を明らかにできたのかを確認しましょう。
第3回(11月18日(水):20:00-21:30)
第四部「タクシーダンス・ホールの自然史と生態学的特性」(第八章〜十一章)を中心に取り上げます。第三回ではシカゴモノグラフの根底にあるいくつかの概念を紹介します。当時のシカゴ学派の都市社会学者たちが様々な小世界をまなざしたとき、現象を分析するために用いた視点がありました。「社会的世界」「都市」「人間生態学」など本書にも頻出するキーワードを改めて確認することで、本書の読解をより深めていきましょう。
第4回(11月25日(水):20:00-21:30)
第五部「タクシーダンス・ホールの問題」(第十二章〜第十三章)を中心に取り上げます。これまで読んできたタクシーダンス・ホールの内容をおさらいしながら、現代の問題との接続を考えてみましょう。例えば、現在都市の盛り場には、性風俗店や、私の研究する「オーセンティック」バーなど様々な輪郭を持った社会的世界があります。タクシーダンス・ホールを読み解いていくと、私たちには馴染みがなくても彼ら/彼女らには特有の「理屈」があることに気づくと思います。彼ら/彼女らはいかなる論理で日々活動し、そしてそれは現代の社会構造といかなる関係にあるのでしょうか?シカゴ学派の都市社会学者たちが、当時の都市に溢れる小世界を読み解いたように、私たちも彼らの力を借りていくつかの考察を行ってみましょう。