自滅まで半永久的にループするプログラムを停止させ、自壊寸前まで損耗した魂魄の修復に取り掛かる。
心臓部から微細な金属片を全身に供給し、まずは大きな損傷部に修復機能を集中させる。
俺の場合心臓が本体なので心臓さえ無事ならば全身を修復するのはそう難しい事ではないが、今は魂魄の総量が不足している。
今の現状はスキルはあっても材料が足りていない感覚に近い。
侵食した【ドリーム・ベトレイド】の魂魄が有れば不足分など余裕で埋める事は簡単だが、
流石に遺跡規模の超大型魂魄を圧縮しただけあって【ドリーム・ベトレイド】の魂魄を俺に馴染ませるのには時間がかかる。
俺が金属片を扱える様になったのは侵食・同化したのが【ドリーム・ベトレイド】の魂の極僅かだったからに過ぎない。歯車一個分の魂など全体の1%にも満たないだろう。
俺と【ドリーム・ベトレイド】だと逆に俺が“希釈”されかねない程に総合魂魄情報量の差がある。
今は仮称自滅誘導強制開発プログラム《Dyrition Ego Machina》諸共【ドリーム・ベトレイド】の全機能を強制停止させただけに過ぎない。
希釈されたら最低でも二重人格になる程度で済むだろうが、最悪の場合第二の【ドリーム・ベトレイド】に成りかねないのだ。
そうならない為には原材料から俺に馴染む様に加工段階を踏み、俺と同化させていくしかない。スクラップアンドリビルド、つまりは破壊と再構成だ。
実行可能な修復を済ませて現実世界への復帰を即急に行い、最適化は少しづつ進めていく程度にするとしよう・・・
・・・・・
起きたら目の前には無駄にデカくて白い鯨が居た。
「?」
どうやら白鯨はUBMらしく【双胴白鯨 モビーディック・ツイン】と独自の銘を頭上に浮かべており、ゼタ先生と妙に見覚えのある人が戦っていた。
『おお!起きたか!主様!』
『無事だったか。済まないが今はマスターの説明を聞いていられる時間が無い状況だ。』
体が俺の意思決定無しに動いて白鯨の戦艦装甲を打ち抜き、真っ赤な血を浴びる。
しかも此処、現実世界じゃないな?これ。
思いっきり【ヘイワン】の夢幻世界の中じゃんね。
『今現在SUBMという化身が蒐集した試練装置の処理中だ。本来ならタンクの役を受け持つ予定だったが我が再生能力の源である海水が無いこの空間に隔離し、討伐する事になった。』
成る程?
『【大提督】とマスターのアバターを操作しているカーソンが攻撃、【盗賊王】が夢幻世界内の大気をコントロールしている。再生出来ない以上、推測だがあと少しで傷痍系状態異常で死ぬか【窒息】で死ぬだろう。』
つまり?
「死んで償え!!!クソ野郎ッッ!!」
見覚えのある男が瀕死の白鯨の脳を爆破した。あれ、アイツ俺の隣で死んでた奴じゃね?
『終わりだ。』
えぇ・・・??
脳を完全に破壊された白鯨が全身を痙攣させて、電池が切れた玩具の様に動きを停止した。
白鯨が白い光に包まれて解けていく。今ので完全にHPが0になった。
オゥ・・・ジーザス・・・
なにがなんだかよく分からん内に終わっちまったぜ・・・
・・・・・
「終わった、な。」
「・・・肯定。対象の傷痍系状態異常による即死を確認。」
「・・・・・。」
とても気まずい。寧ろ場違い感すらある。
完全に空気が戦勝ムードじゃねェんだよな。惜しい人逝ったお通夜じゃん。
スペリオル付いたUBM倒したじゃん。喜べよ。
一体お前らに何があったんだ・・・?
償え発言からしてSUBM討伐は仇討ちな面もあったと思われるが・・・俺は全く面識が無い部外者でしか無い。
しかもあっさりと終わってたし。まさに陸に打ち上げられた鯨だった。
海水で再生するとかあれ?相性的にもう俺だけで良くね?な感じじゃんね。
死人が既に出ている以上戦犯扱いされても可笑しくないのではなかろうか。
お前が倒してりゃ死人は出なかったとか言われてもね?ハッキリ言って困る。
いや、全くもってそうなんだが。
俺だったらパーフェクトスコアで倒せてたかもしれないが俺は24時間対応のスーパーヒーローでもないわけで・・・俺は悪く無いよな?
よくよく考えたら俺、全く関係無かったわ。
俺は開き直った。
ーーーもしかしたらMVPに選ばれるかな?神話級以上が棚から牡丹餅とか最高じゃね?
勿論内心に留めて口にはしなかった。今口にすると余計な感情が再燃しそうだし。
実際に戦っていたカーソンと完全なメタを貼った【ヘイワン】がMVPをとった様なものだが、両者とも俺の所属なので実質MVPは俺。
そう、MVPはーーーん?
「・・・なんか、可笑しくね?」
ふと溢れた疑問。
それを切片に、その場にいる全員が気付いた。
ーーー未だに<UBM>討伐のアナウンスが流れる気配が無い事を。
まだ終わっていない事を察知した三人の視線の先ではーーー
白鯨が解けて光の塵になり
ーーー光の塵は空中で二つに分かれて、巨大なナニカの形に姿を変えていく。
一つは怨敵を模倣した白氷の戦艦に。
それは禍根。どれだけ再生しようと、畸形の鯨はその傷痕と痛みを忘れる事は無い。
幾千の時が経とうとも、モビーディックの時間はあの時からずっとーーー“凍り付いていた”。
《白き禍痕》
一つは触れた全てを無に還す霧海に。
それは虚無。生き残った鯨は群れを作らず、ただ復讐のみを目標に時を経て成体となった。
何も生み出さず、只々鏖殺の限りを尽す。彼がその生涯の中で残したものはーーー“何もない”。
《白の虚霧》
凍結の戦艦と消滅の霧海。
それが白鯨討滅戦 第二ラウンドの敵だった。
【双胴白鯨 モビーディック・ツイン】
第二形態 Lost Trinity
種族 エレメンタル
ルンバとカーソンの子供は何人欲しいかアンケート
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一人(抗菌と同じく特典化)
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双子
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五つ子(五等分の花嫁√(嘘))