これはとある夢のVRMMOの物語。   作:イナモチ

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Hello World_second life

何やら目の前の怪物が俺の本体だの俺が人面疽擬きだの失礼な事を抜かしているが・・・

 

本当かなぁ?

 

俺はこの怪物が両面◯儺である可能性を疑った。

 

勿論不衛生な指など呑み込んだ覚えは無いが。カニバリズム以前に消費期限をぶっちぎっているモノを口にするなんて考えられねぇしな。

 

俺の魂なのかと思っていた時はユニークとか弁護したが、贔屓目に見ても邪神系のナニカだ。人を生贄に喰ってそうな神格でも違和感が働いていなさそうだし。

 

つまり・・・俺は◯杖ポジションだったのではないか、という事だ。

 

縛りなんていう抑止力は無いのでどうこうする事も出来ない。

 

だが、目の前の怪物・・・邪神が本心を隠して会話コマンドを選んだという事は、コイツも俺を警戒しているという証拠。

 

被害を抑えたいというのは本心。しかし俺を殺す算段は既に付いている・・・そんなところだろう。

 

なんせーーー見れば分かる。

 

多分、邪神が言っていた事は正しい。

 

人面疽。“俺の方”が勝手に発生した俺の一部だ。

 

「なんとなく察してたがよ・・・お前は俺なのか?」

 

どう見ても人間の形して無いが・・・日常的にアバターを分裂させてたらこうも歪むのかねぇ・・・?

 

 

 

 

「『・・・・・・。』」

 

返答は、無かった。

 

 

 

俺達は同時に黒い骨槍を手からニュッと生やした。

 

鏡に映る虚像の様に、ほぼ同時だった。やっぱり俺だ。俺らしい。

 

だから。

 

ーーー目障りだから・・・殺そう。

 

俺の形は俺で決める。俺はお前じゃなくて良い・・・!

 

まず、その邪悪な見た目が気に食わねぇ。俺はプレーリードッグになるって決めてンだ。

 

俺の最終形態見た奴が“だよね”みたいなリアクションするだろうが。誰が味方のフリをしたモンスターだ。全く、失礼な奴らだぜ。

 

だからーーーお前が死ね。

 

 

・・・・・

 

ーーー本当は建前はどうでも良かった。

 

どうしてか俺は今、無性に腹が減っていたから。

 

ーーー凶暴な本能が喚き出す。“食い散らかせ!”

 

丁度良い、目の前にあるじゃないか。

 

ーーー思考が乱雑に狂っていく。

 

あぁ、今日はなんて・・・良い日だ。

 

ーーー足りない。

 

ーーー楽しい。

 

ーーー頂きます。

 

ーーー死ね。

 

混沌とした感情を呑み干し、ガチン!と歯を噛み鳴らした。

 

喉奥から熱い何かが込み上げる。

 

口元から垂れて、見透かせぬ闇に消えていく。

 

それは生命の色では無かった。

 

ガソリンの様な異臭を放つ・・・黒い、血。

 

死体でも無く、生命でも無く。

 

いつしか俺の体は黒い機械で出来ていた。

 

カチリ、と黒い歯車は小さく鳴った。

 

カーソンの赤い蛍火の様に・・・黒い金属片が舞う。

 

使い方は、自然と理解出来た。

 

カーソンが蛍火で巨大な鉤爪を形成したように。

 

金属片の正体は自我の“拡張パーツ”だ。

 

学習して、模倣する。その本質はーーー開発。

 

大事なのは認識。出来て当然と思い込む事。

 

膨大な金属片が嵐のように渦巻き、俺が広がっていく。

 

穴を掘る事に適した鉤爪。

 

毛に覆われた丸いボディ。

 

最後に頭部が形成され、俺の生首が齧歯類の額から生えた。

 

心臓が濁流の様に血液を送り出し、体が活火山の様に膨大な熱量を生み出す。

 

このパワー・・・!!

 

プレーリードッグを模した巨大機械獣に変身した俺は、飢餓感が更に酷くなった事を感じた。

 

ただでさえエネルギーが足りないのに無理に自分を拡張したからだろう。

 

人間大から巨大化した所為でガス欠が酷い。

 

食欲のままに邪神に喰らい付く。

 

ノーガードの状態で槍で突かれるが構わず皮膚を食い破り、血肉を貪る。

 

エグみが強いが・・・旨い!?

 

いや、不味かった。一瞬旨く感じたのは気の所為だったらしい。

 

しかしーーー捕食した事でエネルギーが供給された。

 

心臓に燃料が投下されたかのようだ。カッ!と体内の熱量が増した。

 

邪神をガッと掴み、齧歯類のようにゴリゴリと齧っていく。

 

邪神も無数の触手と口を全身に形成して抵抗するが、俺の捕食スピードの方が早い。

 

深く、深く齧り進む。狙うは急所。

 

多分・・・俺なら核がある。それさえ残っていれば必ず生き残るコア。

 

生前の【グデアメール】と融合した事がある俺ならば・・・絶対に弱点を一点に集める筈だ。

 

ーーーそれは弱点だらけの生物から逸脱する思考だから。

 

根拠を上げるとすれば、過去の俺が選んできたジョブは生存に優れた特徴を持っていた。

 

【開拓家】ーーー生命維持困難な環境への耐性。

 

【死兵】ーーー死から蘇生への足掛かり。

 

【斥候】ーーー突発的な死の察知。

 

【死霊王】ーーー人間の限界の克服。

 

どれほど追い詰められようと、生き汚く抗い続ける。

 

大博打に全てを賭け、死から何度も甦る。

 

たとえーーーその結果人間を辞めるとしても。

 

闘争欲求という破滅的な矛盾を抱えたまま・・・不死に至る。

 

 

 

 

血よりも濃く、ドス黒い核。

 

それはグデアメールの様に宝石ではなく、凝血した血塊の様であった。

 

 

 

俺の捕食が弱点である核に至った瞬間、抵抗が激しくなった。

 

核を喰われまいと邪神ーーー嘗ての俺が新しい俺を殺害しようと全力を傾ける。

 

生き汚い男だ。しかし、喰われても仕方ないとも考えている破綻者なのだからイカれている。

 

・・・今から共喰いする俺が言えた事ではないのだろうが。

 

 

ーーーじゃあな・・・俺よ。戦って死んだんだ、満足だったろ?

 

ーーー先に逝った【アガナースタ】によろしく。

 

 

俺はドス黒い核を嘗ての俺から引き摺り出して・・・・・喰った。

 

核を失った魂がガクン!と力を失い、白い花びらとなってホロホロと崩れていく。

 

ガムの様に粘性の高い核を噛み砕いて、核から溢れ出た血ごと破片を飲み下す。

 

莫大なエネルギーが流れ込む。

 

ーーードクン!と俺の心臓が震えた。

 

これはとある男の物語。

其は始まりであり、終わりである。

 

一つの不死は終わりを迎え、旧き不死から産声を上げた新しき不死は継承する。

 

それは生命に在らず。

 

それは死体に在らず。

 

人と人の間で生まれておきながら、人から外れた道を拓き、進むーーー最も新しき人外。

 

後に管理AI四号ジャバウォックは言った。

 

初めてマスターから排出されたーーー〈イレギュラー〉だと。

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