スリングライフルのオープン式・レール式の定義付け

スリングライフルは大別すると2種類の方式がある。

オープン式スリングライフルとレール式スリングライフルである。

スリングライフル人口は日本でも数十人数百人規模の小さな集団であるため、これまで体系化や標準化などが進められずこの分類も各ブログやSNSなどでなんとなく広まって大雑把に区分されたものであるから、キッチリとした定義は決まっておらず、個々人の分類基準もまちまちになっている。オープン式・レール式という方式の命名すらこれまでの慣習によるものなのだ。

ここでは一般的なオープン式とレール式のスリングライフルを挙げ、明確な分類基準を定めたいと思っている。

 

これまでの個人によるまちまちな解釈では議論すらままならないし、(個人的な見解だが)オープン式とレール式では開発の出発点となる思想すら変わってくるからだ。

 

結論から述べると、私は両者を区分する基準は「弾道の安定化に弾もしくは弾受けとレールの接触を用いる構造であるか」という一点のみだと考えている。

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オープン式

 

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レール式

上に挙げたのは一般的なオープン式とレール式のスリングライフルである。

 

ぱっと見たときの大きな違いは色々あるが、注目していただきたいのは発射時に弾の通り道となる部分で、オープン式はその名の通り、発射時の弾は弾受け(ポウチ)以外の何にも触れず、弾受けも空中に浮かんだオープンな状態で加速される。

 

レール式はすぐ上の画像のように、弾と弾受け両方もしくは片方は必ずレールに接触しており、レール上を滑る形で加速される。レールは弾道を安定化させ、レールに沿って弾を真っ直ぐ加速させる意図で取り付けられている。

 

レールに沿わせて加速させるか、何にも触れずに空中で加速するかという一点のみが両者の決定的な差異である。なぜなら、レール式にはレールとの摩擦による速度減衰が生じるからだ。

例として、パチンコ玉を弾体に用いるスリングライフルでは、レール式がオープン式と同じ初速を出すのにはおよそ2倍のゴムが必要となる。レール式ではおよそ半分のエネルギーがレールとの摩擦で消費されているのだ。(あくまで私のスリングライフルの場合だが)

使用するゴムが多い分レール式のほうが強力だと思われがちだが、レールとの摩擦の影響はこれほどまでに大きなものなのである。

 

また、精度を上げるのにもレール式はオープン式よりも複雑な要素を加味しなければならなくなる。例えば弾とレールのクリアランスが広すぎれば弾がレール内で不均一に接触し弾道が乱れ、弾受けからのエネルギー伝達もベクトルがずれて不均一なものとなり初速も乱れる。逆にクリアランスが無ければ摩擦によって大きく初速低下が起こる。

 

この二点は、はむ氏の4号機のような「弾とレールは接触していないが弾受けとレールが接触している」タイプのレール式スリングライフルにも起こるものなのだ。

そして、オープン式ではこの二点は全く起こらない。接触するレールが存在しないからだ。

 

上記の二点、レールとの摩擦によるエネルギー消費とレール間クリアランスによる精度変化がオープン式とレール式の大きな差異であり、両者の分類を「弾道の安定化に弾もしくは弾受けとレールの接触を用いる構造であるか」で行う根拠である。

 

というわけで、オープン式とレール式を分類するのは「弾道の安定化に弾もしくは弾受けとレールの接触を用いる構造であるか」でいいんじゃないでしょうか?だめ?

 

 

 

 

 

 

おまけ

この分類法に不備がないかを考えるため、分類に当てはまらない構造を考えてみることにする。まずポケットショットにロック機構を備えたものをパイプに差し込むタイプのスリングライフルは何に分類されるだろうか。

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ポケットショットライフル

外観上はクローズな環境に見えるが、これは私の分類方法に沿えばオープン式であると言える。パイプが弾道を安定化させる意図で配置されていないからだ。

 

ここから更にパーツを追加してみる。

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ポケットショットライフル改

こちらは加速終了後の弾を弾の外径とほぼ同じ内径のインナーバレルに撃ち込んで弾道を矯正する構造だ。リボルバーのフォーシングコーンに構造が近いが、リボルバーと違ってインナーバレル内では弾の加速は行われない。エネルギーソースが固体のゴムであるからだ。推測だが、インナーバレルに撃ち込む際の衝突とインナーバレルと弾の摩擦とで大幅な初速低下が予想される。

しかし、「弾道を矯正するレールはあるのに加速中の弾も弾受けもレールと接触しない」構造であることは間違いない。全く不合理に思えるが。

分類に新たな項目を追加するか、分類法を再考すべきか、読者の皆様の忌憚なき意見を聴きたい。

 

 

 

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