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（和子）はい。
（るい）ありがとうございます。頂きます。
（平助）こないな上品なお嬢さんを面接で落としよるとはなあ。
あの新しい　でっかいホテルやろ？見る目あらへんわあ。
絶対　泊まらんとこ。泊まりとうても泊まれるか。
それも　そやな。（笑い声）
あっ　笑た。笑たんちゃうねん　笑われとんねん。
あほがしゃべっとる思て。フフフフ…。
あんた　笑たら　かいらしいなあ。
あんたみたいな子がうちで働いてくれたらええねんけど。
えっ…。（平助）あほう。こないに育ちのよさそうなお嬢さんが何が悲しゅうて人の汚れもん洗濯せなあかんねん。
これが　ホンマの職業センタクの自由や。（笑い声）
あの～。うん？
本当に　ここで働かせてもらうわけにゃあいかんじゃろうか。
あっ？えっ？
♪～
♪「君と私は仲良くなれるかな」
♪「この世界が終わるその前に」
♪「きっといつか儚く枯れる花」
♪「今、　私の出来うる全てを」
♪「笑って笑って」
♪「愛しい人」
♪「不穏な未来に　手を叩いて」
♪「君と君の大切な人が幸せである」
♪「そのために」
♪「祈りながら　ｓｉｎｇ　ａ　ｓｏｎｇ」
♪～
雉真るいちゃん。　岡山の子かいな。はい。
岡山で雉真いうたら　学生服の雉真か？えっ。
はい…。　親戚です。
あの大きい会社！やっぱり育ちがええんやねえ。
そないな　ええとこの子が何で　また　うちみたいな店で。
ホンマやわ。　こんなむさ苦しいおっさんとやかましいおばはんしかおらんお給金は　すずめの涙の吹けば飛ぶようなクリーニング屋。
言い過ぎや。お父さんとお母さんはどない言うてはんの？
もう　おりません。　父も…母も…。
（平助）あっ　そうか…。
（和子）堪忍やで。いえ。
あんた。うん？
うん。
お嬢さんみたいな子が来てくれたらうちは大助かりや。
ありがとうございます！うん。　ハハハハッ。
よろしくね　るいちゃん。
よろしくお願いします！
こないな狭い部屋で　堪忍やで。とんでもない。　ありがたいです。
お布団は　ここな。はい。
何かあったら　すぐ呼んでな。
あの～。はい。
お店に立つ時…前髪　上げんといけんでしょうか？
へっ？
いや～　分からんなあ。
ほかに　なんぼでもええ就職先ありそうやけどなあ。
あんた。うん？
大事にしたげよな。　あの子のこと。
うん。
♪～
あ…　おはようございます。
おはようさん。おはよう　るいちゃん。
よう眠れたか？おかげさまで…。
すみません。　お手伝いもせんと。
ああ　ええから。　顔洗って来ぃ。あっ　はい。
（平助）よっしゃ　食おうか。（和子）食べや。
頂きます。（２人）頂きます。
♪～
はあ～。
どや　うまいか？おいしいです。
うん。　よっしゃ。
ヘヘッ。
♪～
ほれ。　一丁上がり。
何か　気持ちがええ。
こりょう受け取るお客さんのうれしそうな顔が見える気がします。
そない思えるんやったらあんたは　この仕事でけるわ。
（西山）おう！おう。貼らしてもらうで。
新しいのん　来たか。ああ。
よいしょ。
何や　宇宙活劇か。うん　うん。
おっ？　そっちも新しい子か？そうや。
そこの映画館の西山さんや。あっ　初めまして。　雉真るいといいます。
こら　ご丁寧に。　ヘヘヘヘッ。割引券あげようか？
…んな　けったいな宇宙人が出てくるような映画若い女の子が見るかいな。
かに～！
見つけたぞ！
お～！　とう！
とう！　とう！かに～。
ほな　モモケンはどうや。
それも　今どきの若い女の子見いひんやろ。
お茶いれましょうか？ええ　ええ　ええ。　ほっといたら　ええねん。
何でやねん。
さっき捨てたお茶っ葉　拾て　いれ。
そやから　何でやねん。（笑い声）
お客さんのお名前とご住所を必ずこれ　書いてもらう。はい。
で　あったら…あったら　電話番号を　ここにね。
あったらね。こんにちは。
お越しやす。いらっしゃいませ。
これ　お願いします。はい。
え～　ブラウスやね。
ここに　染みがついてしもうて…。
あらあら。　ああ　うんうん。
絹やね？すいませんけど明日の昼までにお願いできますやろか。
任しとき。おおきに　助かります。ほなね　ここにお名前とご住所。　あったら電話番号。
ほなね　はい　おおきに。
そしたら　お願いします。はい。
赤ちゃん抱えて大変やなあ。
いつも来とられる人ですか？いや　初めてや。
えっ　しゃあけど…。この胸の染みなこれ　赤ちゃんが吐いたもんや。
見たところ職業婦人や。
これは大事な仕事のために買うたブラウス。
鏡の前で合わせとったら赤ちゃんが泣きだしてだっこした途端に…　ウワ～ッや。
いらっしゃいませ。お越しやす。
これ　お願いします。はい。
え～　背広…。
　心の声　礼服いうこたあ結婚式にでも行っとったんじゃろうか。何で　こねえに泥だらけに…。あっ　結婚式で　ぎょうさん飲んで帰りに田んぼに落ちたんかも。
え～っと　子供さんの…あら　オーバーコート。
そしたらね　こちらに…。
　心の声　この人あ　双子のお母さんなんじゃろうか。
　心の声　何じゃろう？　これ。どっちのコートにも　ちいとる。あっ　犬の毛じゃあ。犬う飼ようる家なんじゃなあ。どねえな犬じゃろう。コリーじゃろうか？きっと双子ちゃんと一緒にお散歩したりころころ転げ回ったりしよんじゃろうなあ。
（和子）おおきに。
すいません。（和子）お越しやす。いらっしゃいませ。
クリーニングはな売ったらしまいの商いとは違うてお預かりした服をきれいにしてで　また返さんないかん。
そやから　どこの誰か　ちゃ～んと尋ねてこないしてな　名前を縫い付けとくんや。
大変な作業ですねえ。うん。　せやけど一回やったら　あとは楽や。常連さんは　また出してくれはるから。
あっ　そうか。うん。
よっしゃ…。
ほれ。ふ～ん…。
やってみるか？
はい！はい。
これな。　はい。
よいしょ…。　指　刺したら服が汚れてしまうさかい　気ぃ付けや。
はい。うん。
ほな　おばちゃんは銀行やら用事済ましてくるわな。
あっ　行ってらっしゃいませ。
行ってらっしゃいます！フフフフフフ…。
すいません。
すいません。
は…！
洗濯お願いします。あっ　はい。　どうぞ。
　心の声　何じゃあ　この人？
え～っと…背広の上下ですね。
こりゃあ　綿のワイシャツ…。
　心の声　え～っと　この数家族の分まとめて持ってきたんじゃろうか…。せえでも　男もんしかねえが…。男ばあでぎょうさんで暮らしょるんじゃろうか。集団就職で　どっかの工場の寮に…いや　それじゃったら寮母さんが洗うはずじゃあ。それに　工場の人が着る服じゃねえ。
　心の声　わ…　分からん…。この人の日常が　まるで見えてこん。
あっ。えっ。
これも　洗ってください。
あ…。
　心の声　血ぃ！？　どういうことでえ？魚屋さん？　いや　違う…。もしかして　返り血？えっ　ほんなら　この山のような服は証拠隠滅…。
ひっ…！これも…。
　心の声　何じゃあ　ケチャップか。ややこしい。じゃけど　やっぱり分からん。一体この人あ　何もんじゃろう？
ほんなら　お願いします。
あっ　お客様　お名前…。
お客様！　お名前！
はあ…　やってしもうたわ…。
♪～
＜その男は　何者なのか。どこで　どんな暮らしをしているのか。るいには　全く想像がつきませんでした＞
＜Ｒｕｉ　ｈａｄ　ｎｏ　ｉｄｅａ　ｗｈｏ　ｔｈｅ　ｍａｎ　ｗａｓ，ｗｈｅｒｅ　ｈｅ　ｌｉｖｅｄ，ｏｒ　ｗｈａｔ　ｈｅ　ｄｉｄ　ｆｏｒ　ａ　ｌｉｖｉｎｇ＞