「政治・宗教活動の禁止」に抗議する 農学部自治会の立て看板 |
■学生が学生の政治・宗教活動を禁止
北大祭は、北大の各学部等の祭実行委員会が参加する全学組織です。このうち一年生とサークルを中心としたイベントを統括する楡陵祭実行委員会では、以前から政治・宗教活動の禁止を規約に盛り込んでいました。しかし今年の春、全学組織の北大祭実委が禁止規則を作ったことで、北大祭を構成するすべての学部等のイベントで一律に政治・宗教活動が禁止されることになりました。
【2009年度北大祭規則】これに対して農学部自治会が反発。信教の自由や思想・信条の自由の侵害だとして、北大祭実委を批判する立て看板を学内に設置しビラをまき、講演会開催や反対署名活動を展開しました。結局、規則は撤回されないまま、6月に北大祭は開催されました。それでも楡陵祭では幸福の科学が「ハッピーサイエンス」という団体名でブースを出しビラをまくなどして、実委から注意を受けていたそうです。
第2章
第8条 各祭には以下の義務が生じる。
1) 全学実委の議決や事務局の指示に従い、全学実委および北大祭の円滑な運営に協力する。
2) 各祭代表者は原則すべての全学実委に出席する。
3) 北大祭において、公序良俗に反する活動は行なわない。
4) 北大祭において、政治・宗教に関する活動は行なわない。
5) 北大祭プライバシーポリシーに同意し個人情報の守秘義務を守る。
しかし北大祭終了後に実行委員長が交代すると、一転して政治・宗教活動の禁止規則を撤回。政治・宗教に限定しない形で「違法・強引な勧誘」「思想の自由を妨げる強要行為」を禁止する内容の規則に改めたと北海道新聞が報じました。
■北大宗教学者は規約を「問題ない」と判断
JSCPR公開講座のチラシ |
「北大では例年、学祭を勧誘の場に使う団体がある。そこで学生たちが、正体を隠した勧誘等はしないという誓約書を出展団体に配った。宗教活動を禁止するということではなく、情報を隠して勧誘するとか、個人情報を入手してほかのことに使ってはいけないという内容。ところが農学部自治会が『信教の自由の侵害だ』という立て看板を作って、北海道新聞が報じて、2,3の新聞がそれを流した。山口二郎先生という有名な先生の『大学は言論の自由を守らなきゃいかん』という記事が載った(笑)。学生たちが何を問題にしてどういう対策をとったのかをマスメディアにも認識してもらわなければいけない。いわゆる信教の自由や思想信条の自由と、どう違うのかを明確に示さないと、誤解を生んでしまう」
この説明は事実と異なります。北大祭規則にはハッキリと「北大祭において、政治・宗教に関する活動は行なわない」と書かれていました。誓約書によって「正体を隠した勧誘」等の具体的問題行為を禁じただけなら問題はなかったと思いますが、実際には規約レベルで政治・宗教活動すべてを一律に禁じていました。藤倉は櫻井氏に対して、その場で以下のように指摘しました。
「北大祭では実行委員会が政治・宗教活動を禁じる規約を作り、そのことに自治会やメディアが反発した。実際、夏過ぎに実行委員会は規約を撤廃する改正をしています。事実と違う説明はまずいと思います」
これに対する櫻井氏の回答は、以下のようなものでした。
「規約については私も相談して最初に見て、問題ないということで最初の見解を出しました。ここで議論すると誤解が生じますので取り上げないことにしたいと思います」
北大祭の政治・宗教活動禁止規則は、単に無知な学生が暴走してやりすぎてしまったということではなく、JSCPR理事であり宗教研究者でもある櫻井氏が条文の文言を確認して「問題ない」と判断していたそうです。それが本当なら、櫻井氏は、北大祭規則の具体的な文言を知った上で、公開講座において事実と異なる説明をしていたことになります。
■北大はカルト対策失敗のモデルケース
北海道大学農学部 |
今回、JSCPR公開講座の会場となった大阪大学は、全国でも抜きんでて先進的なカルト対策を行っている大学です。公開講座では、カルト関連サークルの公認取り消し、学生に注意を促す授業の実施、カルト脱会者や学外専門家との連携など、大阪大学のさまざまな取り組みが報告されました。これらは学生の宗教活動を一律に禁じるものではありません。また今年7月には関西学院大学が「キャンパス内における勧誘と信教の自由」というタイトルで山口貴士弁護士の講演会を企画しました。カルト対策を真剣に検討しようとしている大学では、一般学生の「自由」に気を配った上でのカルト対策を模索しているように見えます。
逆に北大祭における事例は、一般学生の自由を全否定することでカルトの活動を抑制しようという発想に立ったものです。これは大阪大学はじめ他大学が取り組んでいるまっとうなカルト対策とはまったく違う、極めて軽率で低次元な対応です。思慮を欠いた失策が大々的な批判を浴びると、他大学の真摯な取り組みに対する社会の印象までも歪みかねません。
また、こうしたほころびによって、カルト側に「カルト対策」批判の口実を与えてしまう危険もあります。カルト側が批判者に対して「信教の自由」を盾に反論することはよくあります。しかし正体を隠した勧誘などによって人々の信教の自由を奪っているのは、カルトの方です。通常、カルト批判者のほとんどは、カルトに勧誘される人々の信教の自由を守るという論理に立っています。信教の自由を否定してはいません。それは櫻井氏が理事を務めるJSCPRも同様です。JSCPRはこれまで、思想・信条・信教の自由を否定するカルト対策を推奨したことはありません。しかし今回の北大のケースのように、カルトを批判する側が本当に信教の自由を否定してしまうと、「カルト側の言うことが正しい」ということになってしまいます。
北大農学部自治会は左翼セクト「革マル派」とかかわりがあるとの情報もあります。それが事実かどうかはわかりませんが、仮に事実だとしたら、「政治・宗教活動の禁止」という愚かしい規則は、実際に「革マル派」に正論を吐かせメディアを巻き込む口実を与えたことになります。
このお粗末な事例にJSCPRの理事が関与していたというのは、非常に残念です。また、当の北大の教授が自身の大学の出来事について事実に反する説明をし、そのことを指摘されても訂正しないことが、どうにも理解できません。北大の事例は、失敗事例として事実をしっかり認識する(させる)ことで、「こういうカルト対策は失敗する」という参考事例として大いに活用すべきではないかと思います。
【追記】
12月24日、一部表現の修正・追加を行いました。
4 コメント:
個人攻撃をする意図はありませんが、この教授は、カルト問題に関わった人からは信用されていないですよ。(知識が無い方には、北海道教授・JSCPRという肩書きが有効のようですが)学内では、この問題に関わる別の意図についての噂が絶えません。過去において、この大学の対応はなぜかカルト側に都合の良い結果をもたらしています。それが、多くのカルトにとって札幌での布教拠点となっている一つの理由だと思われています。
北大は、最近まで基本的にカルト対策は何もしてなかったんじゃないですかね。統一協会系サークルの公認は、ぼくが在学していた頃(10年前以上前)より前に取り消していたけど。90年代から2000年前後にはメディオスという自己啓発セミナーが大流行して、地元メディアでも報じられていたし、ぼくの入学前年には学内で麻原彰晃の講演会もあったし。最近でも、北大准教授が大学内で「神世界」の勧誘をしていた問題もありました。いろいろ問題の多い大学です。
ただ、それは櫻井氏のせいというより、「よりによってJSCPR理事のお膝元が、こんな問題大学とは……」という皮肉的偶然なんじゃないでしょうか。教授一人で大学のカルト対策を自由に進められるとも思えませんし。
でも櫻井氏の「この問題に関わる別の意図」って、どんなものなのか気になります。よかったら教えていただけますか。今回の「政治・宗教活動禁止」については、「カルト宗教だけではなく、学内の政治セクトの動きもついでに制限したかったんでしょ」くらいの想像はしていますが。
そう言えば、統一協会の"拠点校"でもある筑波大って、政治活動・宗教活動一切禁止って規則なんですよね。
JSCPR・北大=トロイの木馬 感染
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