大阪市阿倍野区 リウマチ科・膠原病(西田辺駅前)
横田クリニックにおいては、最新ガイドラインを基本とした患者様それぞれの病態に最適な専門医療を提供することを目指しています。
関節リウマチ(RA)・膠原病の治療は日進月歩しています。何よりも希望を持って明るく毎日を過ごすことが、症状の緩和や病気の進行を抑える上にいい結果を及ぼします。
アットホームな雰囲気の中で皆様方をバックアップいたします。
多くの関節リウマチ(RA)患者様においては、図1に示すような従来からの抗リウマチ剤(DMARS)や、場合によっては少量のステロイド剤で良好に治療できるようになってきています。 エビデンスや院長私見に基づいて作用の強い順に並べてみました。
RA治療の要のくすり(アンカードラッグ)と位置付けられるMTXが、2011年3月にようやく世界標準に近い高用量(16mg/ 週)まで国内でも使えるようになったこともあり、患者さんのほぼ3人に2人は、 これら従来からの内服薬でほぼ良好にコントロールできるようになりました。
しかし残念ながら一部の重症関節リウマチ(RA)患者様においては治療がうまくいかず、骨関節破壊が進行して行動範囲が徐々に制限されてゆきます。
現在、そのような重症関節リウマチ(RA)の治療のパラダイムが革命的に変わりつつあります。
このパラダイムシフトは、2003年より順次導入された「炎症性サイトカイン」を治療標的とした生物学的製剤の導入によるものです。
生物学的製剤とは、最新のバイオテクノロジーを駆使して開発された、関節の炎症を引き起こす活性物質にターゲットを絞って作用する関節リウマチの新しいタイプの薬です。生物学的製剤の登場により関節破壊の防止が可能となり、完全寛解への誘導が夢ではなくなりました。
1980年頃からの免疫学の進歩により、1990年代には関節リウマチ関節炎の病態が分子レベルで解析されるようになりました。関節リウマチ発症の最初のステップと考えられる抗原特異的な免疫反応の成立に関しては未だほとんど解明されていませんが、それに続く抗原非特異的な免疫反応に関してはある程度の解析が進みました。その中にあって、IL6やTNFαなどのサイトカインと呼ばれる可溶性分子や、CD28などのTリンパ球上に発現する分子は、関節リウマチ滑膜炎の病態を形成する中心的な分子であることがわかってきました。
このような分子の働きを選択的に阻害する生物学的製剤が関節リウマチに対する新薬として開発され、わが国では2003年8月にレミケード(インフリキシマブ)が、2005年3月にエンブレル(エタネルセプト)がようやく承認・発売され、2008年7月にはアクテムラ(トシリズマブ)、ヒュミラ(アダリムマブ)がつぎつぎと承認されました。なおアクテムラは唯一のmade in Japanの生物学的製剤で、大阪大学(旧)第3内科・細胞工学センター岸本忠三先生のもとで、IL6の発見から数々の基礎的、生物学的解析をへて開発されたものです。さらに2010年9月にはオレンシア(アバタセプト)が、2011年11月にはシンポニー(ゴリムマブ)が、2013年3月にはシムジア(セルトリズマブペゴル)が承認され、関節リウマチ治療に使われる生物学的製剤の選択肢がまた増えています。
病態形成機序に基づいた治療薬だけあって、これらいずれの薬剤も重症関節リウマチ患者様に対して良好な治療成績をあげています。横田クリニックでは、患者様のライフスタイルにあった各薬剤の投与方法も考慮してレミケード、エンブレル、アクテムラ、ヒュミラ、オレンシア、シンポニー、シムジアのどれを使うかを患者様に選んでもらいます。
Cost effectiveかどうかの医療経済学的解析なども含めて、早期より積極的に生物学的製剤を開始することがはたして有用かどうか検討されてきました。生物学的製剤+MTX(メトレート、リウマトレックス)による早期からの適切な治療によって十分に炎症をコントロールすることが後の自然経過を大きく左右することが明らかになってきています。
罹患年数が長く病状の進行した患者様ではもちろん、発症早期でも従来の治療法ではコントロールできない患者様では生物学的製剤の適応となります。横田クリニックにおいても、寝たきりにならずにすんだ、復職できたなどの声が多く、適応となる患者様には発症早期からでも積極的にすすめています。
従来までの重症関節リウマチの治療目標は、疼痛の緩和、関節機能の維持・改善といったところでした。しかし、生物学的製剤の登場により関節破壊の防止が可能となり、完全寛解への誘導が夢ではなくなりました。
副作用としては感染症、アレルギーなどがあります。横田クリニックでは最新のガイドラインにそって抗結核薬や抗アレルギー薬などを用いて副作用対策を臨機応変におこなっており、あまり問題になっていません。生物学的製剤がよく効けばステロイド剤が減量できるため、感染症のリスクはむしろ低くなっているかもしれません。
無効(1次無効)や中途での無効化(2次無効)は経験するところですが、7種の生物学的製剤が出そろった今では、薬剤をスイッチしてゆくことで有効薬剤にたどりつくことがほとんどの場合可能です。
生物学的製剤の一番の問題点は、高薬価であるために、必要とするにもかかわらず使用できない患者様が非常に多いことです。一度は開始したものの金銭的負担のため中断し、病気が悪化した患者様もおられます。患者様の社会的事情や病態に応じて個々の患者様にとって最適な治療法を選択してゆくことが重要であり、従来からのMTXを中心とした抗リウマチ薬もまた生物学的製剤と同様に重要であることは言うまでもありません。 (私が前勤務先の大病院から横田クリニックに移ってあらためて実感したことですが、世間には生物学的製剤どころか従来からのMTXなどの抗リウマチ薬が一度も投与されていない長年経過した高活動性で進行した関節リウマチ患者様が依然多いのが実情です。そのような場合、まずは従来からの抗リウマチ薬で治療してゆく必要があります。)
従来からの内服抗リウマチ薬が効かないために長期間ステロイド剤が投与されてきた重症患者様は、生物学的製剤のよい適応です。多くの場合にステロイド剤の減量や中止が可能です。
しかし一方で、ステロイド剤の長期使用が原因で、あるいは関節リウマチの炎症がコントロールできていないことが原因で、肺や尿路などに慢性的な感染症を引き起こしてしまっている患者様がおられます。そのような患者様では生物学的製剤の投与によって感染症が悪化する危険があるため、薬剤添付文書でもリウマチ学会ガイドラインでも生物学的製剤の適応外とされています。
実はこのような合併症を持つ高疾患活動性の患者様に対して治療の手を緩めることのデメリットは極めて大きく、リスク承知で生物学的製剤を選択するケースもあります。リスク・ベネフィットを十分理解していただいた上で患者様やご家族に意思決定していただきます。
想定されるリスクに対し最大限の対策を講じながら生物学的製剤を使用したところ効果が認められてステロイド剤が減量できた結果、慢性化していた感染症が改善するケースを横田クリニックにおいても少なからず経験しています。最近の文献的な知見としても、生物学的製剤よりむしろステロイド剤が感染症のリスクを増強させるのではないかと言われています。
※グラフをクリックすると拡大表示(PDF)されます。
生物学的製剤は高薬価であるため、必要とするにもかかわらず使用できていない患者様が多数おられるのが現状です。当クリニックではRA生物学的製剤の治験を行っています。
新しい医薬品の開発に伴い、多くの患者様がその恩恵を受けています。
新しい薬を実際に医薬品として使用するためには、倫理性と科学性が十分に検討された計画に沿って健康な方や患者様にご協力いただき、薬の有効性や安全性を調べるための試験が行われます。
そしてその結果をもとに厚生労働省などの審査を受け、承認を得る工程が必要です。このような医薬品の開発段階での試験を「治験」といいます。