欧州議会は10月20日、Farm to Fork(F2F)戦略を支持する内容である議会環境委員会と農業委員会により執筆された報告書を本会議で賛成452票、反対170票、棄権76票の結果で採択した。
※F2F戦略は、欧州委員会が2020年5月20日に発表した政策に関する基本方針を表明した政策資料(COM(2020) 381final)である。また、欧州議会による同報告書の採択は、同戦略に対する議会の立場を明らかにするだけではなく、次に続く立法過程において、議会から欧州委員会への要望を表明したものとの位置づけとなる。
この採択によって、欧州議会は、欧州グリーンディールの目標を達成するために、持続可能で健康的な食品を生産することの重要性を強調している。
※欧州グリーンディールおよびFarm to Fork戦略の目標については
畜産の情報11月号「EUにおける有機農業の位置付けと生産の現状」を参照
さらに、欧州議会は、欧州委員会が上記で示した目標のほか、
・塩分、糖分、脂肪分を多く含む肉類や加工度の高い食品の過剰摂取を防ぐため、摂取量の上限値の設定
・農薬の承認手続きの改善や、共通農業政策(CAP)戦略プランによる強制力のある農薬の使用量削減目標の設定。また、花粉媒介動物や生物多様性を保護するための監視システムの改善
・EU域外国で生産された畜産製品の域内流通は、EUが定めた動物福祉の基準を満たした製品のみ承認
・農業からの温室効果ガスの排出量について、野心的な目標を設定し、規制を実施
といった新たな内容の追加を欧州委員会に要望している。
また、現地報道によると、不健康とみなされた食品に対する課税の実施も示唆されている。
欧州委員会は今後、欧州グリーンディールやF2F戦略を実現するため、一連の法律案を提出する予定である。なお、欧州議会は、法律案の審査には科学的な影響評価が必要であることを強調しており、欧州委員会がFarm to Forkの影響に関する共同研究センターの報告書を公表するのが遅れたことについて、多くの議員が残念に思っていると述べ、欧州委員会に網羅的な影響評価を行うことを求めている
採択の結果を受けて環境保護団体の1つであるWWFは、20日付で声明を発出し、今回の決議に修正を唱えた農業サイドの働きかけを非難するとともに、今回の採択は、欧州グリーンディールへの支持を表す重要なステップであるとしている。
一方、欧州最大の農業生産者団体である欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(COPA-COGECA)は、同じく20日付のプレスリリースの中で、戦略が目標とすることについては重要であり、その実現に向けて生産者は努力を惜しまないとしている。一方で、欧州議会が欧州委員会に対し広範囲な影響評価の実施を勧告していることは評価するとしつつも、温暖化ガス排出の規制が緩い海外からの農畜産物の輸入増加や、消費者価格の上昇に対する懸念を改めて表明している。