一体何度ボールが自分の上を横を足下を通過しただろう。
たった2メートル程度の枠に向かってくるボールを止めるだけ。
これがゴーリーの主な仕事だ。
ATのように味方や敵の位置を確認してプレーをする必要もない。
MFのように全力でコートを駆け巡ることもない。
LGのように自分の後ろを通る敵に注意する必要もない。
ただ、ゴールに向かってくるボールを止めるだけ。
ボールを見ていれば自然とボールが向かってきてくれる。
非常に単純なポジションだ。
でも、それがとてつもなく難しかった。
針の穴を通すかのように僕とゴールの間をボールがすり抜けていく。
あと数センチクロスを伸ばすのが早ければ、あと一歩足が出せればゴールを防げた場面は数え切れない。
ボールが体に当たり涙が出るほど痛い思いをしたこともあるし、今でもボールが体に当たると痛いし辛い。
また、僕のせいで負けた試合もいくつもある。
初めてゴーリーをした試合では一つもセーブできずに終わったし、僕が出てから失点を積み重ねてしまう試合が幾度もあった。そのたびにチームに迷惑もかけた。
それでも僕はゴーリーがやめられなかった。
自分のクロスに向かってボールが飛んできてセーブしただけでも褒められるし、たまたまボールが胴体に飛んできてセーブできたり、足の指先に当たるだけでヒーローになれた。
それがたとえ運であろうとも嬉しかった。
残す試合もわずかとなった。
僕が試合でショットを受ける本数も数少ない。
僕にゴーリーというポジションの楽しさや難しさを教えてくれたコーチさんや、多くの失点で迷惑をかけた先輩や同期や後輩に京大のゴーリーとして恥じないセーブを見せたい。
多くの人にゴーリーはかっこいいんだぞって言ってもらいたい。
だから僕はKULの砦としてゴールの前に立ち続ける。
WRITER:鎌森元吾