地域の話題

シャッター開いた!街に彩り 上土シネマに懐かしの手描き看板お目見え

昔懐かしい手描き看板が再び姿を現した上土シネマ

 松本市の上土通りで90年にわたって親しまれ、平成20(2008)年に惜しまれつつ閉館した老舗映画館「上土シネマ」(大手4)のシャッターが今月、十数年ぶりに開いた。娯楽の町としてにぎわった往時の面影を取り戻し、通りの彩りにつなげようと、地元の住民組織「大正ロマンのまちづくり協議会」がファサード(正面)を"見える化"した。時が戻ったかのように昔懐かしい手描き看板がお目見えし、足を止める市民が後を絶たない。

 シャッターの奥から姿を現したのは、13年前の閉館特別上映会の看板やスケジュールなど。映画文化の灯を絶やしたくないと願った当時の経営者が、同市惣社の看板職人・中谷紀明さん(81)に依頼し描いてもらったものだ。「楢山節考」「仁義なき戦い」「鉄道員」...と昭和30年代以降の東映作品の題字や俳優がずらりと並ぶ。
 「シャッターが開いてる!」―。息を吹き返した店構えはネット上で早速話題に。立ち止まって見入る市民も多く近隣商店には再開の有無や上映の問い合わせが相次いだ。全国でシネマコンプレックス(複合映画館)が主流となる中、観光で訪れた都内の女性(70)は「本当に懐かしい。このまま保存して」。通り沿いのカメラ店経営・増田博志さん(69)は「やっぱりシャッターが上がるとうれしいね」と喜んだ。
 かつて映画館が軒を連ねた上土通りに今、銀幕はない。しかし「せっかく残った建物をもう少し生かそうとなった」と藤森典人協議会長(84)は話す。管理者から物件を借り、皆で掃除したという。屋内使用には配電や防火面で課題もあるが、関係者は少しずつ、可能な範囲で活用を模索する考えだ。