FNN記者のイチオシのネタを集めた「取材部 ネタプレ」。今回は、社会部警視庁担当・石田真美記者がたむろする少年少女の本音「新宿歌舞伎町“トー横”界隈の実態」を伝える。
トー横界隈で事件やトラブルが相次ぐ
社会部警視庁担当・石田真美記者:
最近ニュースなどでよく耳にするようになった「トー横」の実態についてお伝えします。
記憶に新しいところでは、11月東京・新宿区歌舞伎町にあるビルの屋上で、43歳の男性が暴行を受けて死亡した事件で、少年ら4人が逮捕されました。

12月14日は、逮捕された少年の1人が事件の1週間前に被害者の男性とトラブルになっていた様子を撮影した映像についてお伝えしました。

この事件の舞台が、東京・歌舞伎町の「トー横」と呼ばれる界隈だったのです。
この「トー横」と呼ばれるエリアは、新宿区歌舞伎町のTOHOシネマズが入っている“東宝ビル横”周辺のことです。
そして、トー横界隈に集まっている少年少女は、「トー横キッズ」と呼ばれています。

もともとは、ビルのすぐ横の新宿東宝ビルがトー横と呼ばれていましたが、最近は“広場界隈”と呼ばれる広場に集まる場所が移ってきているんです。

社会部警視庁担当・石田真美記者:
トー横では、2021年に入ってから男性が暴行を受け死亡した事件以外にもトラブルなどが相次いでいます。
5月には、トー横すぐ近くのホテルで少年少女(18歳・14歳)が飛び降りて死亡。
6月には、“トー横キッズ”の少年が酒を飲んだ末にホームレスの男性を暴行し、その暴行の様子を映した動画がSNSで拡散され、少年は書類送検されました。
10月には、21歳のトー横界隈の男が、トー横に憧れる地方の女子高生とSNSで連絡を取り、トー横に呼び寄せ、みだらな行為をした疑いで逮捕されました。
そして11月には、先ほどお伝えした傷害致死事件がありました。
カフェに入るお金がないから“トー横”
加藤綾子キャスター:
トー横キッズってよく聞くようになったなと思うんですけど、何でこんな事件が多いのにここに集まってきちゃうんですかね?
社会部警視庁担当・石田真美記者:
そうですよね。そこで、トー横キッズ達にその理由を聞いてきました。

FNN取材班:
何をしに来ている?
“トー横”に集まる高校生:
暇つぶし…?そうですね、友達に会いに来たり、暇つぶししている。

FNN取材班:
カフェとかでもいいのかなと思うが?
“トー横”に集まる高校生:
そこまでのお金がないのと、結構人数が集まっちゃうっていうのがあって、こういう広場で広いところで集まっている。
うちら結構ガストとか行くんですけど、怒られるんですよ、うるさくて、で外にいる。

社会部警視庁担当・石田真美記者:
この若者のように“はやりの場所”という感覚でのトー横界隈という一面もあるようです。

実際にトー横に行ってみると、座り込んで何をするでもなく話をしているだけの子が多く見られたり、“地雷系ファッション”という黒っぽい色を基調とした服装の若者が多くいました。
そして、話を聞いてみると、TikTokにアップするダンスの動画を撮っていて、それをアップするといった子もいました。

その一方で、深刻な事情を抱える少年少女もいました。
“トー横”に集まる高校生:
親とうまく折り合いがつかないみたいな時期があって、私は家帰れてなくて、ずっと(歌舞伎町で)ホテル暮らししてて…

“トー横”に集まる少女:
ここの悪いループだなと思うのは、女の子が男の子に貢ぐ。やっぱりここにいる女の子って、誰かに求められたいっていう子が多いから、でもお金をあげたらその人には絶対求めてもらえるわけじゃん。

社会部警視庁担当・石田真美記者:
このように事情があって家に帰れずトー横を生活の場にしているという少年少女もいました。

少女が少年をホテルに住まわせるなど面倒を見ているケースでは、少女が売春行為に手を染めて貢いでいたり、精神的に不安定になり睡眠薬などを過剰に服用したりしている少女までいました。

「〇〇界隈」と呼ばれる場所は全国にも
社会部警視庁担当・石田真美記者:
また、飲酒や徘徊などの行為も確認されていることから、警視庁は12月、トー横の一斉補導を実施しました。私服の警察官120人ほどがトー横に現れ、地べたに座り込む少女らに声をかけています。

この日は、明け方にかけて埼玉県や神奈川県など関東各地から来ていた中高生など17人の少女が補導され、保護者のもとに引き渡されました。

実は、2021年9月にも一斉補導が実施されています。その際には、少年1人、少女22人合わせて23人が補導されたということです。
補導された少女が多い理由として考えられるのは、単純に少年の場合は素直に従わなかったり、警察官に声をかけられても逃げてしまうことが多かったり。少女の場合は、荷物が多いのでなかなかすぐに動けないというようなことがあるようです。

子どもたちがトー横に行くことを親が心配するのではないかと聞いてみると、「門限があってそれまでには帰る」という子もいれば、「自分の位置情報を共有することを条件に親が許可している」という子もいました。

“トー横界隈”というのは「歌舞伎町で若者が集まる場所」として使われる言葉ですが、こうした“〇〇界隈”と呼ばれる場所は全国にあるんです。
例えば、大阪の「グリ下」界隈は、道頓堀にあるグリコの看板の下。
名古屋では、繁華街の栄にあるドン・キホーテの横で「ドン横」界隈と言っています。
そして横浜は、ショッピングモールのビブレの横ということで「ビブ横」界隈と呼ばれているそうです。

ただ流行りの場所という一方で、気づかないうちに犯罪に巻き込まれてしまう可能性もあることは認識してほしいと思います

社会で子どもをどう育てていくか
加藤綾子キャスター:
そうですね、孤立・孤独・居場所がないという子どもたち、少年少女が集まる場所になっているってことですよね。
住田裕子弁護士:
一種のたまり場なので、それなりのつながりを求めているのはわかるんですけれど、目に見えるのならいいのですが。深夜で徘徊しているのは補導の対象です。家に帰れないお子さん、家出している、親とうまくいっていないなどということがあると、犯罪に誘いこまれる可能性は多いです。

それから、ここに行くというのは地域のつながりが薄いんですよね、家庭だけじゃなくして。
そういう人間関係が希薄になってる中で、こういう状況が生まれたんだと思うんです。
これから家庭の崩壊が見える中では、「こども家庭庁」、「子どもを家庭含めて社会で見守ろう」そして「子どもを育てていこう」という新しい組織ができますから、ぜひ居場所のないお子さんに対しての児童福祉施設・養護施設とか、そういうものを拡充していってほしいし、食べるご飯がない子どもに対しては「子ども食堂」を地域でも作っていただきたいなという気がしますね。

加藤綾子キャスター:
社会でどう子どもを育てていくかを考えないといけないということですね。
(「イット!」12月15日放送より)