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 この件です。

 まぁ大体、画像のコメントで話は終わってるんですが、記録のためにここにも書いておきましょう。

OKサインタブー化は反差別運動のせい?

 とりあえず現時点でのwikiの記述を全文引用しておきましょう。
 反差別運動の暴走現象によってタブー化した表現の一つ。
 日本でも広く知られる、親指と人差し指で輪を作り、残りの指をピンと伸ばして作る指の形のことである。輪がアルファベットのO、伸ばした3本の指がKを表現している。*1
 印刷物として最初に見られるのは1839年アメリカの新聞「ボストン・モーニング・ポスト」であるとされ、All Correct(全て正しい)の意味のスペルミス(Oll Korrect)から生じた流行語をハンドサインで表したもの。
 このようにかなり明瞭な歴史が判明しているOKサインであるが、2017年以降に英語圏の匿名掲示板「4Chan」*2で「白人至上主義者のサイン」であるというデマが流れたことで、急速にタブー化した。このデマによると伸ばした3本指はKではなくWを、輪っかはOではなくPを表しており、WP=White Powerの意であることになっている。
 米国最大のユダヤ人団体ADL(Anti-Defamation League:名誉毀損防止同盟)は2019年10月、「差別的なシンボルのデータベース」にOKサインを加えたと公表した。
 2019年には、米フロリダ州のテーマパーク、ユニバーサル・オーランド・リゾートで「怪盗グルー」の着ぐるみが、お客の児童との写真撮影時にOKサインをしていた(動画を見るかぎり筆者には「準備できたので撮ってOK」という意味に理解するのが自然なように思われる)。このことで家族が騒いだため、中に入っていたスタッフが解雇された。
 2020年、サンディエゴのトラック運転手の男性が、運転中にこのハンドサインをしたという苦情で解雇される事件が発生した。彼の仕草は白人至上主義とは何の関係もなかったばかりか、彼自身メキシコ系であった。そしてそもそもOKサインすらもしていなかった。彼は普段の癖で指を鳴らしていただけだったのである。
 【OKサイン】-表現規制用語集
 ここの記述だと、まるでOKサインが反差別運動という「正義の暴走」によってタブーとなり、ついには習慣的に使っていただけの人が解雇に追い込まれるというとんでもない事態になったかのようです。これは酷い!表現弾圧だ!

 ……というのはもちろん事実に反します。以下をご覧ください。
 反差別を掲げるユダヤ系団体、名誉毀損防止連盟(ADL)は、親指と人差し指で輪をつくる「OK」のサインを「ヘイト(憎悪)のシンボル」としてデータベースに追加した。
(中略)
 「OKサイン」がヘイトのシンボルとなったきっかけは、ネット上の匿名掲示板「4Chan」でオルタナ右翼たちが悪ノリで始めたキャンペーンだった。
 彼らは2017年に同掲示板で「オペレーションO-KKK」を立ち上げた。リベラル派やメディアに、ドナルド・トランプ大統領もよく演説中に使うこのOKサインが白人至上主義の「秘密の合図」だと思い込ませたのだ。親指と人差し指で輪をつくって残り3本の指を立てると「ホワイト・パワー」を意味する「WP」の文字に見えるから、白人至上主義者を自称するジェスチャーだという訳だ。

高校の卒業アルバムが台無し
 ADLが指摘したように、このでっち上げが大々的に広まり、遂には白人至上主義への支持表明のジェスチャーとして使われ始めた。ニュージーランドのクライストチャーチにあるモスクで銃を乱射し、51人を殺した罪に問われているオーストラリア人のブレントン・タラント被告は、初めて出廷した際に笑顔でOKサインのジェスチャーをしてみせた。
 「OK」のサインは白人至上主義のシンボルになったので、一般の方はご注意下さい-Newsweek日本版
 というように、OKサインは元々極右が「あいつらなんでも差別っていうからOKサインも差別ってことにしたら信じるんじゃねwwww」という悪ふざけから始まっています。この悪ふざけを皮肉なことに反差別ではなく極右が信じ込み、実際に差別的な意味を持つサインとして使用したため本当になってしまいました。

 要するにOKサインのタブーは「極右が作って極右が使った」ために出来上がったもので、反差別側には何ら非はありません。この用語集では極右や白人至上主義者の存在が透明化され、「反差別が云々した」というところだけ書かれているので、まるで反差別側のせいでOKサインがタブーになったかようになっています。これは現象の評価が違うのではなく、事実の認識が誤っているとみるべきでしょう。
 According to the Anti-Defamation League, the gesture -- made by forming a circle with the thumb and index finger, and extending and separating the other three fingers -- has been used in recent years by white supremacists to form the letters W and P, but has also long been used as a sign signifying "OK" or approval. Therefore it shouldn't be assumed to be a white supremacy symbol unless there is other evidence to support those claims, according to the ADL.
 (引用者訳:Anti-Defamation Leagueによると、親指と人差し指で円を形成し、他の3本の指を伸ばして離すジェスチャーは、近年、白人の至上主義者がWとPの文字を意味するために使用しています、しかし「OK」または承認を示す標識としても長い間使用されてきました。したがって、ADLによると、これらの主張を裏付ける他の証拠がない限り、それは白人至上主義のシンボルであるとみなすべきではありません。)
 SDG&E Worker Fired Over Alleged Racist Gesture Says He Was Cracking Knuckles-NBC 7 San Diego
 ちなみに、用語集が「正義の暴走」の事例っぽく取り上げているトラック運転手の事例ですが、その件を報じた記事では、OKサインを差別的であると認定しているADLの発言として、このサインを過度に白人至上主義と結びつけるべきではないと発信しています。つまり「正義の暴走」などという現象は起こっていません。

ヒトシンカって誰だ?

 ところで、この事実に反する用語集を書いたヒトシンカとは何者でしょうか。
 ぶっちゃけ興味ないという人は、とりあえず知名度のない青識亜論や白饅頭(テラケイ)だと思ってくれればいいです。

 私が自身の個人アカウントを不当に凍結されたとき、予防措置としてブロックしたアカウントのひとつであることからもわかるように、彼はいわゆる「不誠実で、嫌がらせのために虚偽の通報をしかねないミソジニスト/表現の自由戦士」の1人です。そんな彼を象徴するツイートはこれ。

 ちなみに、アカウント名には「文筆業」とあり、お仕事も募集中ですが、以下で指摘するように彼の文章力と読解力は極めてお粗末なものです。

それ、参考記事に書いてありますよ

 彼の読解力の低さを象徴するのは、やはり先ほど批判した「OKサイン」の記事でしょう。

 私はOKサインが差別的とみなされるようになった経緯を説明するために記事を引用しましたが、実はこの記事、用語集の「OKサイン」のページにも「参考リンク」として記載されていました。
スクリーンショット (86)

 こんな風に。さすがに予想外で、私は後で気づきましたが。
 つまり彼は、自分で引用した記事の内容をきちんと把握することすらできていないというわけです。あるいは読んでないだけかもしれませんが。

 ちなみに、さっき私が引用した英語の記事も参考リンクにあります。彼は全文をグーグル翻訳にでもぶち込めばわかることも把握できていないことが見て取れます。

 さらにいうと、女児にバナナを持たせて批判を浴びたアウディの広告を取り上げた『【アウディの広告】』では、ドイツ人が色にどんな意味を見出すかという話をするときの根拠として、3年も前から更新が止まっている、管理人のハンドルネームすら不明の個人サイトを引っ張ってきています。

 そして『【寛容のパラドックス】』では「何かの本」の写真を貼り付けてカール・ポパーはそんなこと言っていないと主張しているのですが、なぜ文章をじかに書かないのか意味不明ですし、そもそもその本のタイトルすら書かれていないのでマジで「何かの本」としか言いようがないという謎の状況が生まれています。あと画像が小さすぎて文が読めない。

 エビデンスの判断基準が滅茶苦茶です。大学でレポートの書き方を学ばなかったんでしょうか。

用語集なのにお気持ち大爆発

 ところで皆さんは、用語集というとどんなものを想像するでしょうか。一般に、辞書のように事実を中心に列挙したものだと考えるでしょう。しかし彼の伸びやかな文章力は、そんな常識をあっさり超えていきます。いくつか例を出しましょう。
 このように必死のいいわけを繰り返しながらも、アンチ宇崎ちゃんフェミニスト達は劣勢を自覚せざるを得なかった。特に「巨乳は奇形」「献血ボイコット」で論理性ばかりでなく道徳性すら皆無であることを暴かれてしまう。
(中略)
 ここに至って、宇崎ちゃん叩きのフェミニスト達は完全敗北したのである。
 【宇崎ちゃん献血ポスター事件】-表現規制用語集
 すなわち規制派側が、実際に有害性を示せない表現に対して「TPOをわきまえるべき」という不明瞭な排除命令を投げつけるためだけに発言するだけの言葉であり、実際には何の根拠もないのである。
(中略)
 しかし、日頃ポスターに描かれたアニメキャラクターの胸の大きさにまで「TPOを弁えろ!」と叫んでいたはずのフェミニスト達は、この時なんらTPOに対する意識を発揮せず、上野に快哉を叫んでしまったのである。
 彼女らにとって「男」たちが罵声を浴びせられたことの快感に比べれば、あれほど大事だと嘯いていたTPOなど一顧だにする価値のないものであったのだ。
 【TPO】-表現規制用語集
 うーんこの。アカウントで『表現規制用語集』編纂などと気取るならもうちょっと用語集っぽい文体を使えばいいと思うんですがね。

 皮肉なのは、彼らが普段からフェミニスト側の主張を「お気持ち」と馬鹿にする一方で、彼ら自身が「用語集」という極めて客観性の高い事実の列挙が期待される場において、極めて情緒的な記述をこらえることができずに大爆発してしまっているという点でしょう。「完全敗北」とか、よっぽど盛り上がっていないと使いませんね。

 この件から察せられるのは、彼らが普段他人の主張を「お気持ち」と嘲笑するのは、彼ら自身の考えが感情に基づいていることの裏返しだったのだろうということです。私がいつも言っている「自分がそうだからと言って他人もそうだと思い込むな」という言葉を送ります。

ガチ規制はスルー

 この用語集で最も注目すべきは、実は「書いてあること」ではなく「書いてないこと」です。
 用語集を見る限り、これはヒトシンカが一人で、7月下旬ごろからこつこつと書き始めたもののようです。ですから項目が網羅的ではないのは当然でしょう。

 しかし、「TPO」と「公共の場」というほぼ同じ意味の言葉の記事をわざわざ別で用意したり、「ラブジョイの法則」「ローマの慈愛」といったマイナーな用語を揃えるという仕事ぶりの割には、規制という側面から極めて重大な意味を持つイベントが書き落されているという不自然さがあります。

 そうです。「あいちトリエンナーレ」という、政府が展示に圧力を変え未だに問題の続く出来事への言及が皆無という点が非常に不自然です。この事例は余波として文化庁がほかの映画への補助金を打ち切ったり、広島の展示会で事前検閲が行われそうになったりと様々な問題が生じています。

 そのほかにも、自民党議員が電波停止に言及した事例、香川のゲーム規制、最近判決が確定したろくでなし子事件、ビラ配りの高校生が逮捕された事件等々、規制というならば100人中99人が規制だと同意しそうな内容が1つも書かれていません。

 もちろん用語集というたいそうな看板とは違い実質的には個人のブログですから、網羅するのは困難でしょう。しかしこれだけの事例があってたった1つもフォローされていないのは、意図的に書いていない、少なくとも5年以上前の事例である「駅乃みちか」や「それでもボクはやってない」よりも優先順位が低いとみなしている証拠でしょう。

 この用語集は、何がどう書いてあるかと同時に、何が書かれていないかという点においても、表現の自由戦士たちの脳内を可視化する資料として極めて貴重かもしれません。