昨日「らんま」を語るのに引き合いに出した『きまぐれオレンジ☆ロード』ですが、
実はあだち充の『みゆき』と一緒にして、中身のないラヴコメ三本と定義できる。以前指摘したけど、
三角関係は『みゆき』を踏襲しつつ、髪型と特質は入れ替え。両方とも「年下=ショート=元気」で、
まつもと泉は完全に真似したとも解釈でき。しかし「謎」がある方は別々。

 実は主人公の男の子にとってで、読者が知れる範囲は少ない。「きまぐれ」では女の子の家族、
『みゆき』では若松兄妹の両親の顔が知れず。しかも解明されないので、物語を進める要因ではなく。
たとえば鮎川は幽霊が怖いはずなのに、広い屋敷で一人で住めるのか? 若松みゆきが帰る前、
義理の父親との関係は常識の範囲内だった? さらに檜山ひかるちゃんの家族も描写なし。

 もっともひかるちゃんは、鹿島みゆきちゃんとともに好きな男の子への態度は明確で。だから、
曖昧な態度をとり続けたほうに男の子がなびいたことで、「恋愛には秘密が必要」という主義は、
共通であり。ただし若松みゆきは鹿島さんを邪険に扱わないのに、振られるまで待ったという、
他力本願で卑怯な悪女という解釈も可能。実際、真人と仲良く手を繋いだのが最終回の場面だから。

 対する『きまぐれオレンジ☆ロード』は、恋敵のはずの二人を幼馴染みにしたことで、
大げさに云えば「人間の業(ごう)」を描けた形。ひかるちゃんに慮って秘密にしたことも、
悲劇を約束されたお話に。実際「あの日にかえりたい」も三人とも傷ついて終幕を。ただし、
不良少女と超能力者という「外れ者」が重要な要素にはなっていないのですね。

 つまり隠された題目に「差別問題」があるはずなのに、春日くんが転入することから始めたので、
完全に回避され。アニメの作り手もまつもと泉も自覚しているものと。「カセットテープの伝言」は、
原作でもしなかった「もう一つの最終回」だし、原作の最終頁のあとで春日くんは告白したと、
ファンなら想像できるところ。描かなかったのは多分、野暮と思ったため。

 しかし人間の苦悩を綴る「文学」でなったため、原作では『みゆき』、アニメでは『タッチ』を、
引き継ぐことが出来たというもの。


    マンガにおける伝播子の実例  2005/3/21(月) 午後 9:55
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