【次回予告】
天野が連れて行ったフランスのホテル。
それは南仏のリゾート地、ニースにある極上の五つ星ホテルだった。
宝石のように輝くビーチ、絵画のように美しい街並み、異国情緒を優しく奏でる潮風、空と海は限りなく透明に近いブルー。
前島は最高級エステを受けながら束の間の休息を満喫するのであった……。
次回『天野くんのアナザースカイ』
この次も、サービス、サービスゥ!ヽ(*´∀`*)ノ.+゚
(もちろん全部ウソです)
天野が警察に拘束された翌日。
天野は涼太と富樫を連れて、ミルクちゃんが入院している病院へ向かった。
天野勇二
富樫よ、ミルクの容態を聞いた。
頭部に傷があって数針縫り、まだ頭痛を訴えているようだ。
だが、骨折も
まだ様子を見たいところだが、恐らく
不幸中の幸いだったな。
天野が言うと、富樫は悔しそうに顔を歪めた。
富樫和親
僕は、自分が情けないです……。
ミルクちゃんを守ることが、できませんでした……。
涼太が励ますように声をかける。
佐伯涼太
富樫くんのせいじゃないよ。
まさかマデューが『とんぼ返り』してミルクちゃんを襲撃するなんて、想像もしてなかった。
僕らの判断ミスだよ。
天野勇二
そうだ。
俺も判断を誤った。
お前の責任ではない。
俺たちの責任だ。
富樫は頷いて口を開いた。
富樫和親
警察に色々聞いてみたんですけど、ミルクちゃんを殴った『凶器』は発見できなかったそうです。
警察も無能なばかりではない。
女の子が殴られて出血していた。
当然ながらこれは『事件』だ。
犯行現場の周囲を捜索し、『凶器』が落ちていないか調べている。
その結果、ミルクちゃんの
天野勇二
俺も情報を集めた。
ハニーの検死の詳細。
そしてミルクの殴打の詳細を聞くことができた。
佐伯涼太
またぁ?
なんで勇二は検死についての
天野勇二
それは秘密だ。
まずミルクだ。
ミルクは『棒のような物』で殴打された可能性が高い、とのことだ。
頭部に付着した成分から『鉄パイプ』か『金属バット』、もしくは金属製の『特殊警棒』ではないかと推測される。
しかも一発じゃない。
ミルクは数発殴られていた。
殴打自体はそこまでの威力ではなかったが、綺麗に皮膚を切り裂かれていて、そこから激しく出血していたようだ。
富樫は涙目で肩を落とした。
富樫和親
そんな……。
マデューは何度もミルクちゃんを殴ったんですか……。
なんて酷いことを……!
天野勇二
ミルクから詳しい話を聞けるかもしれない。
昨日は面会謝絶だったが、今日は話ぐらい聞けるだろう。
天野たちは病院に足を踏み入れた。
病室に向かいながらハニーちゃんのことを説明する。
天野勇二
そしてハニーの死因はドラッグの
大量のMDMAが胃の中から発見されたそうだ。
天野は2人にMDMAの写真を見せた。
様々な着色をされたケミカルドラックだ。
天野勇二
だがな、胃に残っているMDMAは2種類あるそうだ。
少し前から飲んでいたもの。
そして、死ぬ直前に飲んだもの。
胃の中に残っていた成分から、お茶で流し込んだ可能性が高い。
アイツは薬をやっているように見えたか?
涼太は信じられないとを振った。
佐伯涼太
ありえないよ。
あの子がジャンキーなワケない。
お酒が入ってもそこまで異常じゃなかった。
天野勇二
俺も店でしか会ったことがないが、中毒患者には見えなかった。
間違いなく『無理やり飲まされた』と考えられる。
富樫は切なげにため息を吐いた。
富樫和親
酷い話ですね……。
マデューはミルクちゃんを襲っただけでなく、ハニーちゃんに追加のドラッグを飲ませて殺した……ということでしょうか。
天野勇二
その可能性が高い。
逃げるフリをして、すぐに現場へ舞い戻った。
そして邪魔なミルクを殴り倒し、ハニーにもう一度MDMAを流し込んだ。
悔しそうに虚空を見つめる。
天野勇二
俺の判断ミスだ。
あの場はまずハニーを救うべきだった。
俺は助かる命を見捨ててしまった。
佐伯涼太
あの場面は仕方ないよ。
マデューを捕まえることが、犠牲者を出さない一番のことなんだし。
天野勇二
ああ…‥。
そうだな……。
天野はミルクちゃんの病室に入る前に、富樫に言った。
天野勇二
富樫よ。
お前はミルクの傍にいたいだろう?
富樫和親
はい。
ミルクちゃんに付き添います。
天野勇二
マデューはミルクを殺し損ねた。
再襲する可能性は高い。
その時はこいつを使え。
熊でも一撃で倒すことができる。
天野は1本の『スタンガン』を富樫に持たせた。
護身用の武器だ。
富樫和親
ありがとうございます。
使わせていただきます。
天野勇二
それからもうひとつ、確認しておきたいことがある。
天野はスマホを操作し、一枚の写真を富樫に見せた。
天野勇二
マデューがお前に見せた『殺人』について確認したい。
築地の駅の事故死だ。
写真は築地駅のホームだ。
天野勇二
お前とマデューが立っていたと思われる場所から撮影した。
電車に飛び込んだ男はどの辺りに立っていた?
富樫は写真の一部分を指さした。
富樫和親
後部車両の扉付近でした。
僕は一瞬しか見なかったんですが、たぶんここだと思います。
天野勇二
すると男の右側から車両がやって来ることになる。
実際に見てみたが、ホームの両端にはあるのは低い柵だけだ。
そこから後部車両の入り口までは約3メートル。
飛び込んだ男はどこに立っていた?
富樫は写真を見ながら首を捻った。
富樫和親
正確にはわかりません。
マデューの話に夢中で、反対側のホームをまるで見てませんでした。
天野勇二
ならば、男はどのように飛び込んだ?
富樫は当時の
富樫和親
確か……。
両手を伸ばしていて……。
僕が見た時は宙に浮いていました。
電車に両手を上げて飛び込んだように見えました。
かなり前の方にいたんじゃないかと思います。
天野勇二
じゃあ死体の一部は、お前の方まで飛んで来たのか?
富樫は首を横に振った。
富樫和親
いいえ。
飛んで来ませんでした。
吹き飛ぶ様子は見ましたけど……。
天野勇二
ならば接触した部分は手前だな。
巻き込まれたのは『上半身だけ』といったところか……。
マデューはその時、何をしていた?
富樫和親
タロットカードを出していました。
天野勇二
タロット?
タロットを出して何をしていたんだ。
富樫はマデューの姿を思い出しながら、クネクネとした動作を真似た。
富樫和親
こんな感じで……。
1枚のタロットカードを右手に持って……。
何度か振り回してましたね。
天野勇二
『アルカナ』はなんだ?
富樫和親
ア、アルカナ、ですか?
天野勇二
そうだ。
何か言ってなかったか?
富樫はぼんやりとした記憶を思い浮かべた。
確かにマデューは『アルカナ』について何か言っていた。
富樫は頭を捻りながら記憶を探った。
富樫和親
確か……。
『
崩れ落ちる相手には相応しい……とか、そんなことを言ってました。
天野勇二
なるほど……。
よく理解できた。
富樫よ、お前、金が欲しいか?
富樫和親
えっ?
お、お金ですか?
天野勇二
そうだ。
金が欲しくはないか?
富樫も涼太も、なぜ天野がこんなことを尋ねるのか、心底理解できなかった。
天野はどこか冷たい殺気を放ち続けている。
富樫は怯えながら口を開いた。
富樫和親
ほ、欲しいですけど……。
それは、ど、どういう意味でしょうか……?
天野勇二
例えば5千万円。
誰かが恵んでくれると言ったら、俺と前島を殺そうと企むか?
富樫は慌てて首を横に振った。
富樫和親
と、とんでもないです。
半額じゃないですか。
金額は大きいですけど、それで天野さんたちを殺そうだなんて思いません。
天野勇二
そうか。
わかった。
ミルクの見舞いに行こう。
天野は何事もなかったかのように病室のドアをノックし、静かにミルクちゃんの病室に入った。
ベットの上には頭に包帯を巻かれた痛々しいミルクちゃんの姿があった。
天野勇二
ミルクよ。
災難だったな。
ミルクちゃん
あっ……。
天野様に……。
涼太さん……。
ミルクちゃんは天野たちを見ておぼろげな笑顔を浮かべた。
しかし、富樫の顔を見ると、涙をポロポロと流した。
ミルクちゃん
と、富樫様ぁ……!
ひっく、ひっぐ……。
会いたかったですぅ……!
富樫も涙目でミルクちゃんの手を握った。
富樫和親
僕も会いたかったよ。
ミルクちゃん、危険な目にあわせてごめんね。
ミルクちゃん
いいんです……。
富樫様がご無事で良かったです……。
お店では大きな胸を揺らす元気いっぱいの娘なのに、今はそのカケラも見当たらない。
弱々しい姿は天野たちの心を痛めた。
天野勇二
ミルクよ。
俺たちのせいで巻き込んでしまった。
すまなかったな。
ミルクちゃん
いいえ……。
いいんです……。
ハニーちゃんは、もう帰って来ないんですね……。
ミルクちゃんは富樫の腕を握り、顔を歪めて泣き始めた。
ハニーちゃんの死はニュースで報じられている。
ミルクちゃんもそこでハニーちゃんが亡くなったことを知ったのだ。
ミルクちゃん
ハニーちゃん、一生懸命頑張ってたのに……。
酷いです……。
天野様、絶対に、マデューを捕まえてください……!
天野勇二
ああ、もちろんだ。
必ずマデューは捕まえる。
マデューが狙っている前島も『フランスのホテル』に逃亡させた。
富樫和親
フ、フランス?
涼太たちは驚いて天野の顔を見た。
佐伯涼太
前島さんをフランスに海外逃亡させたの!?
いつの間に!
天野勇二
別に、お前に言う必要はないだろう?
佐伯涼太
なんだよぉ。
冷たいなぁ。
何か言えば僕も手伝ったのに。
富樫が不安げに尋ねた。
富樫和親
だ、大丈夫ですか?
フランスはマデューに関係する国じゃありませんか?
天野勇二
アイツは偽フランスだ。
まがい物だよ。
フランス人とのハーフなんてデタラメだと踏んでいる。
天野はそう言うと、ミルクちゃんに尋ねた。
天野勇二
ミルクよ。
お前は襲った奴の姿を見たか?
単独犯だったのか。
それとも複数犯だったのか。
どんな凶器を持っていたのか。
何か覚えてないか?
ミルクちゃんは悲しげに首を横に振った。
ミルクちゃん
覚えてないんです……。
ハニーちゃんに声をかけながら、救急車を呼ぼうした時だったんです……。
一瞬、背後に人の気配がしたな、と思ったら、突然頭が痛くなって……。
視界が真っ暗になったんです……。
ミルクちゃんの肩が小刻みに震えている。
ミルクちゃん
何度も、ガツンって、頭を叩かれて……。
なんとか顔を見ようとしたんですけど、誰なのかわからなくて……。
視界も真っ暗で、頭も痛くて……。
その後は……何も、何も……!
ミルクちゃんの顔が真っ青になり、ガタガタ震え出した。
富樫がすかさずミルクちゃんの肩を抱く。
富樫和親
ごめんね。
ミルクちゃん、辛いことだよね。
いいんだ。
もう十分だよ。
そのことは何も考えずにゆっくり休もう。
ミルクちゃん
は、はい……。
天野はその様子を見て、ミルクちゃんに質問することは諦めた。
天野勇二
悪いことを聞いたな。
涼太、行こう。
佐伯涼太
うん。
またお見舞いに来るからね。
富樫和親
ミルクちゃん、僕はずっと側にいるよ。
何かあったら言ってね。
ミルクちゃん
富樫様……。
ありがとうございます……。
天野は富樫を残して病室を出た。
すぐに涼太が
佐伯涼太
ねぇ勇二ぃ。
今の質問は可哀想だよ。
警察じゃないんだからさ、ミルクちゃんにあんなこと訊いちゃダメだってば。
天野勇二
そうか?
しょうがないじゃないか。
佐伯涼太
殺気をビンビンに出してたよ。
あれじゃミルクちゃんも怯えちゃうよ。
天野勇二
それは悪いことをしたな。
俺としては引っ込めていたつもりだったのだが。
佐伯涼太
よく言うよ。
『飢えた肉食獣』みたいな目してたくせにさ。
天野と涼太は喫煙所に向かい、一服することにした。
天野の容態を考えれば禁煙厳守なのだが、もうどうでも良くなっていた。
天野勇二
涼太よ。
お前にも色々聞きたいことがある。
タバコの煙を見ながら尋ねる。
天野勇二
お前が駅前で追っていたのは、本当にマデューだったのか?
佐伯涼太
うん。
マデューだったよ。
天野勇二
本当か?
『マデューに似た誰か』だったんじゃないのか?
涼太は記憶を探りながら口を開いた。
佐伯涼太
マ、マデューだったと思うよ。
マデューの走り方は見たことないけど、あの場面で異常な速度で逃げているのは、マデューしか考えられないでしょ。
天野はその言葉に噛みついた。
天野勇二
その『異常な速度で逃げている』という人間が、マデューだと確信した根拠はなんだ?
別に自分がマデューだと名乗ったワケではあるまい。
顔を見たのか?
しっかり確かめたのか?
涼太はそう言われると自信がなくなってきた。
歩道橋を下りて右に走った際、異常な速度で逃げる男を発見したのだ。
歩道橋に立っていた人間に服装が似ていた。
状況から考えると、ミルクちゃんを殴り、ハニーちゃんにドラッグを飲ませた直後だろう。
そこまで考えて涼太は気づいた。
佐伯涼太
そ、そうだ……。
僕は顔を見てない。
単純に
『現場から逃げる人間=マデュー』
だと思い込んでた……。
それに……。
涼太は
佐伯涼太
ピンクちゃんが叫んだんだ。
あれがマデューだ、って。
だから僕はそう信じこんだ。
それでマデューを追いかけたんだよ……!
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【次回予告】
天野が連れて行ったフランスのホテル。
それは南仏のリゾート地、ニースにある極上の五つ星ホテルだった。
宝石のように輝くビーチ、絵画のように美しい街並み、異国情緒を優しく奏でる潮風、空と海は限りなく透明に近いブルー。
前島は最高級エステを受けながら束の間の休息を満喫するのであった……。
次回『天野くんのアナザースカイ』
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