さぁ、立ち上がれ天才クソ野郎!
例えどれだけ傷ついても、たったひとつの温もりを守るために!!!
あのエセフランスクソタロット野郎をぶっ飛ばす、最高の作戦を見せてくれ!!!\( 'ω')/ウオオオオァァァ---ッ!!!!
天野は必死に蘇生処置を行った。
涼太も汗だくになるまで心臓マッサージを続けた。
それでもハニーちゃんが息を吹き返すことはなかった。
ハニーちゃんはもう死んでいた。
やがて救急車が到着し、ハニーちゃんとミルクちゃんをストレッチャーに乗せて搬送して行った。
天野は顔を歪めながらその光景を見ていた。
周辺にはパトカーや救急車が集まり、沢山の野次馬が群がっている。
野次馬たちは遠慮なくカメラを取り出し、無数のフラッシュを天野たちに浴びせた。
野次馬
おい、あれ前島悠子じゃない?
野次馬
本当だ!
ゆうこちゃんじゃん!
野次馬
きゃー!
悠子ちゃんこっち向いて!
遠慮なく天野たちを撮影している。
天野は心底イライラしていた。
蘇生処置を行っている間も、野次馬は救助を手助けしなかった。
何度も
今は前島悠子という
誰もハニーちゃんの命に興味はないのだ。
己の好奇心を撮影し、SNSで発信したくてたまらないのだろう。
天野勇二
おいてめぇら!
写真なんか撮るんじゃねぇ!
ぶっ飛ばされたいのか!
怒りをぶちまけても、野次馬はそんな天野にもカメラを向ける。
天野は無神経な群衆にイライラしながら前島に告げた。
天野勇二
前島よ、これは刑事事件になる。
つまり、お前の傍から離れなくてはならない。
一番恐れていた展開だ。
お前は
俺が連絡するまで誰とも接触するな。
前島は涙目で頷いた。
天野と離れるのは最大の恐怖だ。
天野は少し迷ったが、前島の耳元でささやいた。
天野勇二
俺以外は誰も信用するな。
警察も信用するな。
誰が接触してきても無視しろ。
例えそれが園崎でも、富樫でも、涼太であっても、無視しろ。
前島は驚愕の眼差しで天野を見上げた。
前島悠子
し、師匠……?
そ、それは、どういうことですか……?
天野勇二
言葉通りの意味だ。
俺だけを信じろ、ということだ。
前島悠子
は、はい……。
天野たちはそれぞれパトカーに乗せられ、警察署まで連行された。
そして案の定、長い事情聴取の時間に入った。
天野は見たままのことを伝え、無駄だとは理解しながらも、マデューという危険の存在を訴えた。
天野勇二
だからマデューって殺し屋がいるんだよ!
そいつが逃げている。
指名手配して捕まえてくれ!
警察の反応は
プロの『殺し屋』かつ、逮捕されたことも事件になったこともなく、100人以上殺害している犯罪者の存在なんて、警察が認めるはずなかった。
殺した人間の数だけ
存在自体も信じられない。
天野はハニーの死因すら教えてもらえないまま、警察に尋問され続けた。
刑事
お前は過去に何度も暴力事件を起こしているな。
殺人事件の
今回こそ、お前がやったんじゃないのか?
警察のこのセリフで、天野はもう何もかもが嫌になってしまった。
何を言っても無駄だ。
確かに天野は過去に暴力事件を何度も起こし、殺人事件の被疑者になり、全国指名手配されたこともあった。
警察が被疑者の
天野勇二
俺が殺したと言うのか。
冗談じゃない。
俺の怪我を見てよくそんなセリフが吐けるな。
刑事
お前は
確かに重症のようだが、女1人を殺すぐらい、お前なら簡単だろ?
天野勇二
バカなことを抜かしやがる。
これまでにどれだけ、貴様らに犯罪者を突き出してやったと思ってるんだ。
刑事
過去の被疑者の突き出し方は暴力そのものじゃないか。
なぁ、正直に言えよ。
そのほうが楽になれるぞ?
今回のことも、これまでのことも、本当はお前がやったんだろ?
警察は凶暴性が強く、被疑者としてマークしたことのある天野を一番に疑った。
これは素行の問題であり致し方ないことかもしれない。
天野勇二
ならばもういい。
もう何も喋ることはない。
刑事
それは犯行を認める、ということだな?
天野勇二
違ぇよ。
もうお前らに喋ってやることなど何もない。
天野は無駄なことを喋らず、警察の尋問を無視し続けた。
最終的に警察は厄介なクソ野郎を留置所に放り込み、天野は独房の中で長い時間を過ごした。
天野勇二
(……俺のせいだ。俺のやり方が甘かったんだ)
天野は、闇の中で自分を責めていた。
天野勇二
(俺は何をしていた。何が『天才クソ野郎』だ。ハニーが死んだのは俺のせいだ……)
拳を痛いほど握りしめる。
天野勇二
(あの時、俺はマデューを追うべきではなかった。目の前にいる『ハニーという患者』に集中すべきだったんだ……)
天野は無力な拳を見つめた。
天野勇二
(助けられたはずの命を見捨てて、マデューへの復讐心に
悔しげにため息を吐く。
何度も床を拳で叩く。
天野勇二
(しかもマデューを捕まえてもいない。俺はアイツに振り回されているだけじゃねぇか。アイツのトリックを何も解けてやしない。全て、俺のやり方が甘かったんだ……)
天野は闇の中で座り込み、前島のことを思った。
前島は常に自分と行動していた。
自らの身柄が拘束されている以上、前島にも同様の容疑がかけられているかもしれない。
天野勇二
(前島はどうしている。あの弟子、1人で泣いてないだろうか)
天野は前島の身が心配だった。
そればかりに気を取られていた。
だからこそハニーが犠牲者に選ばれたと、天野は自分を責めていた。
天野勇二
(……もう許さねぇ。マデュー、お前は俺を本気で怒らせた。これほどの怒りを感じるのは生まれて初めてだ……)
天野は闇の中で静かな復讐に燃えていた。
天野勇二
(もう誰も殺させやしない。俺の本気というものを見せてやる。『天才クソ野郎』をナメてかかったこと。地獄の底で後悔させてやるぜ……)
天野が解放されたのは、もう夕暮れ時だった。
刑事
被害者の意識が戻った。
もう帰っていい。
警察はそれだけ言って天野を解放した。
天野勇二
おいおい……。
俺の容疑は晴れたのか?
犯人は見つかったのか?
警察はその問いに答えない。
天野勇二
質問に答えろよ。
こんなに長い時間ブタ箱に放り込んだくせに、なんの説明もないのか。
やはり警察官は何も答えようとしない。
天野は心底嫌な気分になりながら独房を出た。
天野勇二
ふざけやがって。
いったいどれほど無能な貴様らに貢献してやったと思ってるんだ。
次に殺人犯を捕まえても突き出したりしねぇぞ。
後悔しやがれ。
天野は留置所を出ると私物を返してもらい、即座に前島へ電話をかけた。
前島はワンコールもせずに出た。
前島悠子
……師匠!?
師匠ですか!?
前島です!
天野勇二
ああ、やっと解放された。
今どこにいる。
前島悠子
4階の奥にある女子トイレにいます!
天野勇二
よく言いつけが守れたな。
今から行くぞ。
天野は指定の場所に向かった。
廊下から声をかけると、女子トイレの奥から前島が駆けてきた。
真っ直ぐ天野の胸に飛び込む。
前島には『芸能事務所』という後ろ盾があったので、弁護士がすぐさま呼ばれて早い時間に解放されていた。
事務所の人間と一緒に警察署を出たが、即座に行方をくらましてトイレに閉じこもっていたのだ。
事務所からの電話は全て無視。
誰にも連絡が取れない。
天野からの着信はない。
ここが警察署で危険の少ない場所とはいえ、前島の恐怖と心細さは相当なものだった。
天野勇二
ふぅ……。
お前は無事だったか。
心配したぜ。
前島悠子
ひっく、ひっぐ……。
怖かったです……。
師匠……。
もう、どこにも行かないでください……。
天野勇二
不安な思いをさせたな。
すまない。
前島は泣きじゃくりながら、天野の腕の中で声をあげた。
前島悠子
師匠……。
私、もうイヤです……。
もう、誰かが殺されるのは、イヤです……!
前島は真っ赤になった目で訴えた。
前島悠子
私のために誰かが殺されるなんて、もう耐えられません!
もう誰にも死んでほしくないんです!
師匠も巻き込みたくありません!
こんなことなら、アイドルなんて辞めます!
天野勇二
ああ……。
そうだな。
その気持ちもわかるよ。
前島悠子
酷いですよ!
こんなやり方、あんまりじゃないですか!
どうして私を狙わないんですか!?
どうして無関係な人ばかり殺すんですか!?
こんなの耐えられませんよ!
天野勇二
ああ、俺も耐えられない。
前島悠子
もうヤダァ!
もうイヤです!
こんなこともうイヤなんです!
前島の涙が天野の胸を濡らす。
天野は前島を強く抱きしめた。
天野勇二
全ては俺の責任だ。
俺の選択が悪かったんだ。
もう誰も殺させない。
もうマデューの好きなようにはさせない。
約束する。
だから、もう少しだけ堪えてくれ。
前島は
天野はその背中を優しく撫でた。
前島悠子
師匠は……。
ひっぐ……。
何も……悪くないです……。
天野勇二
いや、俺のやり方が甘かった。
俺は敵のやり方に見事にハメられていた。
前島の背中を撫でる。
たったひとりの弟子の背中を撫でる。
胸の中で震える小さな温もり。
守るべき、たったひとつの温もり。
天野は確かな決意を持ち、力強く前を向いた。
天野勇二
どうか、俺を信じてくれ。
これからが天才クソ野郎の反撃だ。
天才クソ野郎にかかれば全てうまくいくんだ。
だから、頼む。
前島の瞳を見つめる。
頬に流れる涙を指で拭い、天野は力強く言った。
天野勇二
お前の心が折れてしまったら、全てがおしまいだ。
お前の心だけは折れてほしくない。
お前の輝きを失いたくない。
だから、頼む。
どうかもう一度だけ、俺を信じてくれ。
俺の中の『天才クソ野郎』を信じてくれ。
前島は鼻をすすりながら、天野の顔を見上げた。
前島悠子
師匠のこと……。
ずっと、信じてます……。
この気持ちは、まだ消えてません……。
天野勇二
そうか……。
まだ俺を信じてくれるんだな。
前島悠子
はい……。
私は師匠の、ただひとりの、弟子ですから……。
天野勇二
ああ、お前だけが俺の弟子だ。
前島悠子
師匠……。
どうか、お願いします……。
前島は涙を滲ませながら、天野に訴えた。
前島悠子
もうこれ以上、誰も死なせないでください……。
私のために、誰かが殺されるのを防いでください……。
こんなこと、頼める身分じゃないって、全部私に原因があるんだって、わかってます……。
でも、どうか……。
師匠、お願いします……。
天野勇二
悪いのはお前じゃない。
マデューだ。
全てマデューのせいだ。
そして俺はお前の依頼を受けた。
もう誰も死なせない。
約束しよう。
前島悠子
はい……。
ありがとうございます……。
天野が優しく前島を抱きしめる様子を、遠くから1人の人物が眺めていた。
天野はそれを見ると苦笑しながら声をかけた。
天野勇二
母さんか。
来てくれたのか。
母親の
天野桃子
当たり前じゃない。
あなたが捕まったと聞いて心配してたのよ。
でも、お熱いところを邪魔しちゃったかしら。
天野勇二
いいんだ。
それより母さん。
頼みがある。
天野は前島の頭を撫でながら言った。
天野勇二
悪いんだが……。
ちょっと前島と一緒に、『フランスのホテル』でバカンスしてくれないか?
19,712
さぁ、立ち上がれ天才クソ野郎!
例えどれだけ傷ついても、たったひとつの温もりを守るために!!!
あのエセフランスクソタロット野郎をぶっ飛ばす、最高の作戦を見せてくれ!!!\( 'ω')/ウオオオオァァァ---ッ!!!!
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