涼太と宮内はコンパの会場に向かった。


 待機していた富樫と合流。


 涼太は富樫に宮内のことを紹介した。



佐伯涼太

こちらは医学部のOB。
宮内先輩だよ。
勇二の知り合いなんだ。
将来は立派なお医者さんになるエリート様だよ。


 富樫はおずおずと頭を下げた。


 天野ほどの天才ではないだろうが、医学部の卒業生なんて十分優秀な頭脳の持ち主だ。


 宮内は気さくな笑顔を浮かべて言った。


宮内圭吾

よろしくな!
マデューってヤツの情報を集めればいいんだろ?
俺はちょっと良くない薬品を持っていてな。
このシャンパンにたっぷり仕込んできたぜ。


 宮内は大量のシャンパンを持ち上げながら笑った。


 全部ピンクのドンペリだ。


 涼太が驚いて尋ねる。


佐伯涼太

宮内先輩、いったいどんな薬を?

宮内圭吾

涼太よ、それは聞かないほうがいい。
このシャンパンは女の子用だ。
絶対に飲むなよ。
飲むと余計なことを自白してしまうかもしれないぜ。

佐伯涼太

ヒュー!
さすが宮内先輩だなぁ。
手回しが抜群ですね!

宮内圭吾

まぁな!
俺は医学部の会合で必ず幹事を任される男だ!
最高に盛り上げてやるよ!



 宮内は以前、天野に友人との関係を修復してもらったことがある。


 それがきっかけで心機一転することができ、挫折しかけていた医師への道を再び歩み出している。


 天野にはかなりの恩を感じていた。


 相手が殺し屋で天野たちを狙うのであれば、宮内も見過ごすことはできない。


 しかも宮内本人は社交的で人付き合いの良い男だ。


 今回のようなコンパには最適だった。



富樫和親

あ、あれですよ!
きました!

宮内圭吾

おお、あれがメイドさんか!
奥田おくだもあれと結婚したもんな!

佐伯涼太

ミルクちゃん!
おーい!

……って、あれぇ?



 涼太と富樫の目が固まった。


 今回コンパに来るのはミルクちゃんともう1人だけ、と聞いている。


 しかし、やって来たのは驚くべきことに4人の女の子だった。



ミルクちゃん

はぁい!
涼太様に富樫様!
お待たせしましたぁ!

佐伯涼太

あれ?
ミルクちゃん、2人って話じゃなかった?


 ミルクちゃんは嬉しそうに微笑んだ。


ミルクちゃん

天野様がいらっしゃると聞いたら、お店の女の子たちが『私も行きたい!』って話になったんですぅ。
ご迷惑でしたかぁ?



 富樫はその言葉を聞いて理解した。


 来ているのはモデル体型のピンクちゃん。


 知的メガネ美人のクリスちゃん。


 無愛想で有名なハニーちゃんまで来ている。


 『メイドさんまでイッテQ』のレギュラーメンバーであり、全員が天野という太客を好む娘ばかりだ。



佐伯涼太

そ、そうなんだ。
ごめん……。
今日は勇二、いないんだ。



 涼太が告げると、メイドたちのテンションは氷点下まで落ち込んだ。


 目当ての太客がいない。


 メイドたちは天野からいくら巻き上げるか、それだけを目当てにしていたのだ。


 お店で30万も連日使うのであれば、あんなバックも、あんなアクセサリーも、あんな宝石も買ってくれるかもしれなかったのに。



 宮内がその空気を察し、慌てて自分をアピールした。


宮内圭吾

ま、まぁ、天野はいないけど、代理で俺が来たんだ!
みんな宜しくな!
病院を経営している宮内ってもんだ!
まだ若いけど天才内科医って評判なんだぜ!


 宮内がちょっと誇張して、『医者』という役職をアピールした。


 メイドたちの耳が『内科医』、しかも『病院を経営』という言葉にピクピクと反応する。


 黙っていてもモテる、それが医者だ。


 しかも宮内はそこそこのイケメンで、社交的かつ気さくな人柄のようだ。


 結婚相手としては高値で取引される。



佐伯涼太

そうそう!
それに今日は超VIPルーム取ってあるんだ!
あの前島悠子ちゃんもお忍びで使うようなカラオケルームだよ!
全部僕たちの奢りだから!

宮内圭吾

それに見てくれ!
ドンペリをたくさん用意したぜ!
今日は素敵な夜にしよう!


 涼太と宮内が必死に盛り上げ、なんとかメイドたちを会場へ連れて行った。


 こういった空気になると、女の子慣れしていない富樫は、まったく活躍することができない。


 そのため涼太は富樫を『気の利くイジられキャラ』に設定していた。



佐伯涼太

富樫くんはとにかく大声で笑うんだ。
細かいボケもオーバーリアクションして持ち上げるんだよ。
今日の君のポジションはそれだ。
あとイジるし、女の子のドリンクに気を配ってね。


 と、涼太から指示されている。



 そもそもコンパというものは『チームワーク』が重要だ。


 全員の役割をきちんと定め、それぞれが役目を果たすこと。


 今回のような3人体制のコンパをサッカーの布陣に例えると、中央を支配する司令塔が涼太、女の子に攻め込むFWが宮内、こぼれ球を全てクリアするDFの富樫。


 この連携が機能しないと試合には勝てない。


 ワールドカップの本戦にも出場できない。


 懸念材料はDFの富樫が経験不足であるため、恐らく後半にバテるだろう、という点だ。



ミルクちゃん

うわぁ!
すごーい!



 メイドたちはカラオケルームに入ると歓声をあげた。


 前島のコネと天野の金を贅沢に使い、超VIPの部屋を手配したのだ。


 カラオケルームにはフカフカのソファが置かれ、熱帯魚が泳ぐ水槽がムードを演出し、シャンデリアが荘厳な輝きを放っている。


 ルームの隅にはダブルベッドまで用意。


 シャイなカップルのために小部屋も2つある。


 さらに夜景が一望できるプールまで存在し、水面には薔薇の花びらが撒かれている。


 まるでラブホテルのスイートルームのようだが、あくまでもカラオケルームだ。



佐伯涼太

はいはーい!
それじゃ涼太ちゃんが歌っちゃいまーす!



 涼太は高らかに定番ソングを歌い始めた。


 歌い終えれば女の子にマイクをパスし、全員のグラスが空にならないよう気を配る。


 そして歌っている子が孤独にならないよう合いの手もいれる。


 女の子が相手であれば涼太は最強だ。



佐伯涼太

イエエェェェイ!
メイドさん4人とパーティナイッ!
僕ちゃん今日は盛り上がっちゃうよ!
ジャスティス!!!



 チャラチャラしながら、これでもかと女の子を褒めちぎる。


佐伯涼太

メイドと言えばこの子が業界ナンバー・ワン!
ピンクちゃんが歌っちゃいます!
僕ちゃんもピンク色に染まっちゃうね!


 涼太の合いの手に乗ってピンクちゃんが歌い出す。


佐伯涼太

メイド喫茶のクールビューティー!
ハニーちゃんが通るよ僕ちゃんも通るよそのツン顔マジきゃわゅいねー!


 ハニーちゃんも楽しそうに歌い始める。


 場は最高潮に盛り上がってきた。


佐伯涼太

おっぱいファンタジスタがドリブル中央突破!
ミルクちゃんのミルクがどんどん注がれちゃうよ!


 ミルクちゃんも巨乳をブンブン振り回して歌っている。


佐伯涼太

アキバのカフェでは誰もが知ってるメガネっ娘!
赤いメガネの奥の笑顔に胸キュンキュン!
イエエェェェイ!!!


 赤いメガネのクリスちゃんもテンションマックスだ。


 涼太が盛り上げている間に、宮内がシャンパンをメイドたちに振る舞う。


 宮内特製の『ちょっといけないお薬』が入ったシャンパンだ。


 飲むと色々なことを自白したくなる、不思議なシャンパンである。


宮内圭吾

はいはい飲んで飲んで!
これみーんなピンドン!
ドンドンシャンシャンいっちゃうよ!
はいのーんでのんでのんでのんでのーんで!


 宮内がこれでもかと酒を飲ませる。


 こうした先輩が飲み会コンパにいるとありがたいものだ。


宮内圭吾

ヒュー!
良い飲みぷっりじゃん!
あれ?
なぁ涼太、ピンクちゃんていい女じゃね?

佐伯涼太

あれれ?
ホントだ。
宮内先輩!
いいオンナですね!

宮内圭吾

いいオンナ?

佐伯涼太

いいオンナ?


 宮内と涼太が聞き返すと、富樫が顔を真っ赤にして、リズムをつけて叫んだ。


富樫和親

はーーーい!
ホントは、どうでも、いいオンナ!

佐伯涼太

ハイ!
のーんでのんでのんで!
のーんでのんでのんで!
ハイ、飲んで!


 ピンクちゃんがケラケラ笑いながらシャンパンを飲み干し、富樫に怒ってクッションを投げつける。


ピンクちゃん

もう!
富樫くんてば酷い!
どうでもいいオンナじゃないもん!

富樫和親

ご、ごめんなさい!
そ、そういうコールにしろって言われたから……。


 富樫がしょんぼり肩を落とすと、宮内がハニーちゃんに肩を組みながらささやく。


宮内圭吾

あれ?
富樫のヤツ、あんなこと言ってる。
いいオトコじゃね?


 ハニーちゃんが楽しそうに声をあげる。


ハニーちゃん

ホントですね!
とってもいいオトコですね!

宮内圭吾

いいオトコ?

ハニーちゃん

いいオトコ?


 宮内とハニーちゃんがニヤニヤしながら顔を合わせると、富樫以外の全員が大声で叫んだ。


佐伯涼太&富樫以外の全員

はーーい!
ホントは、どうでも、いいオトコ!

宮内圭吾&富樫以外の全員

ハイ!
のーんでのんでのんで!
のーんでのんでのんで!
ハイ、飲んで!


 富樫が死に物狂いで酒を飲み干す。


 酒が強くない富樫にとっては拷問のような時間コールだ。


 ミルクちゃんは苦笑しながら富樫の口元を拭いてやった。


ミルクちゃん

もう……。
富樫様ってば、ムリしちゃダメですよぉ。

富樫和親

あ、ありがとう……。

ミルクちゃん

富樫様はお酒が強いんですかぁ?

富樫和親

ううん……。
そんなに強くないんだ……。

ミルクちゃん

私もなんです。
お揃いですねぇ。
私たちは静かにちょっとずつ飲みましょうよ。

富樫和親

う、うん……!


 ミルクちゃんが優しげに微笑む。


 富樫は耳まで真っ赤にしてデレデレしていた。


 すかさず司令塔からパスが飛んでくる。


佐伯涼太

はーい!
富樫くん!
なんかちょっとイイ感じになってる!
ズルい!
飲んで!

富樫和親

ひぃ!
もう勘弁して下さいよぉっ!




 富樫に酒を飲ませ続け、コンパの時間は楽しく過ぎていった。


 メイドたちは太客あまのから金をもぎ取れなくて残念だったが、「これはこれでいいや」と楽しんでいた。



佐伯涼太

(はぁ、本当に宮内先輩が空いてて良かった。富樫くんと2人だけじゃ絶対無理だと思ったからねぇ。マジで代打ホームランだよ)



 幹事の涼太は胸を撫で下ろしていた。


 ノリが良くて社交的で頭の回転が早くて、この状況でも危険を承知で参加してくれる。


 これらの条件に合うのは宮内しかいない。



 宮内は本当に社交的かつ、場の空気が読める頼もしい先輩だ。


 何も言わなくとも富樫のお目当てがミルクちゃんだと気づき、容姿がナンバーワンのピンクちゃんは幹事である涼太に回した。


 つまりはクリスちゃんとハニーちゃんをダブルロックオンして口説いている。


 2人の女の子も相手が医者なら悪い顔をしない。



クリスちゃん

ねぇ、宮内様ぁ。
今度、お店にも来てほしいなぁ♡



 クリスちゃんがしなだれて微笑みを浮かべる。


 細身のスレンダーなメガネキャラ。


 セクシーな大人の色気を振りまいている。


 ハニーちゃんも対抗して宮内の腕に抱きついた。



ハニーちゃん

その時はぁ、ハニーのことを一番に呼んでくださいねぇ。
えへへ♡



 無愛想なハニーちゃんも愛想を振りまいている。


 宮内は「この女の子たち、目が『¥マーク』になってるぜ」と内心苦笑していた。



宮内圭吾

ああ、今度必ず行くよ!
ハニーちゃんは可愛いもんなぁ。
ねぇねぇ、俺手相占いが得意なんだけどさ、ハニーちゃんの手相見てあげよっか?



 宮内はアルコールもテンションも十分に高まったのを感じると、大きな声でハニーちゃんに告げた。



 これは前線からの合図サインだ。



 今から勝負を仕掛けるぞと、涼太と富樫に向けたサイン。



 つまり、『今から全ての会話をマデューに関連するものに移す』というサインなのだ。



佐伯涼太

(よしきた。ここからがコンパの本番だ)



 涼太は胸元に隠していたボイスレコーダーのスイッチをオンにした。




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つばこ

☆注意☆
 
お酒を嫌がる人に無理やり飲ませてはいけません!
コンパだかマデューの情報を探るためだとか知りませんが、イッキ飲みとか絶対にダメです!
変なコールで飲ませるのもダメです! アルコールによくわからない薬を混ぜるのもダメです!
女子諸君はこんな男たちと出会ったら、例えそれがどれだけ理想的なイケメンだったとしても、股間を蹴り飛ばしてとっとと帰りましょう!!!!!
 
【つばこへの質問コーナー】
『書いてて一番楽しかった話はどれですか?』
 
やはりコミカルな回ですねぇ(*´∀`*)
『アルカナ編』であれば天野くんとミルクちゃんが出会った4話。
『天才クソ野郎の事件簿』であれば、ブタ野郎をプロデュースした「彼を上手にご主人様にする方法」とか、天野くんがホストになった「彼が上手にホストになる方法」ですね。もうニヤニヤしながら書いてました(´∀`*)ウフフ

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コメント 45件

  • みぃ

    楽しい(見てるだけなら)

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  • のっち

    高値で取引…に思わず吹き出した〜笑

    宮内先輩もモテそうだもんね!

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  • rtkyusgt

    オリラジの藤森で涼太を脳内再生した(笑)

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  • あろまる

    コンパとか疲れそう。
    私なら精神力がもたねーわ

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  • ゆんこ

    でも宮内くん、ゲi…

    ゲフンゲフン(´ρ`*)

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