ここまでが『アルカナ編』の序盤でして、比較的ゆったり物語が進んで来ました。
そんなのんびりペースも終わりでございます。
次回、衝撃の急展開が待っております!
どうかチャンネルはそのまま! 来週も読んでやってください! お願いします!!!
天野勇二
前島よ。
もう一度言うぞ。
天野はぐだぐだ泣き続けている前島を見下ろすと、もう何度目になるかわからないセリフを告げた。
天野勇二
お前を殺そうと企む殺し屋がいるんだ。
俺様はそいつを捕まえる。
だからSPとして雇え。
前島悠子
いやいや、師匠。
遠回りすぎますよ。
もっとストレートにいきましょ!
気持ちを直球で投げ込んでください!
さぁこい!
カモーン!!!
天野勇二
じゃあ、俺様の目の前にいろ。
以上だ。
前島悠子
それはあれですよね。
『
天野勇二
はぁ?
なんだそりゃ。
だから何度も言うが、お前を殺そうと企む殺し屋がいるんだよ。
俺様はそいつを捕まえる。
前島悠子
だからぁ!
それは『
もっとストレートに言ってくださいよ!
天野勇二
じゃあ、俺様の目の前にいろ。
以上だ。
前島悠子
もう!
さっきから同じ会話の繰り返しじゃないですかぁ!
前島がグズグズ泣いていると、会議室のドアがコンコンとノックされた。
川口由紀恵
天野様。
悠子ちゃん。
よろしいですか?
前島悠子
えっ!?
マネージャー!?
天野勇二
川口か。
待ってたぞ。
入れ。
天野の声を受け、川口が神妙な顔つきで現れた。
もう40歳に近い年配の女性。
前島の専属マネージャーだ。
前島悠子
な、なんで川口さんが!?
えっ!?
川口さんも『
師匠!
どんな趣味なんですか!
天野勇二
川口よ。
前島に話してなかったな。
まぁ、それも当然か。
川口は恐縮して頭を下げた。
川口由紀恵
すみません。
悠子ちゃんには心配をかけたくなかったんです。
前島悠子
えぇっ!?
どういうことですか!
川口由紀恵
あれ?
天野様、まだお話してなかったのですか?
天野勇二
いや、さっきから何度も説明しているんだが、コイツが全く話を理解しないんだ。
川口由紀恵
それも無理はありませんよね。
私も信じられません。
川口は前島の隣に座った。
机の上にいくつかの書面を広げる。
川口由紀恵
天野様のお話を聞き、スタッフ総動員で調査を開始しております。
まずは届いているファンレターの中から、脅迫に該当するものをお持ちしました。
前島は呆然と目の前のファンレターを見つめた。
前島悠子
か、川口さん……!?
ほ、本当に、殺し屋が、私を狙ってるんですか……!?
川口由紀恵
私にもわからないの。
天野様にお話を頂いて、それらしいものを持ってきたの。
前島悠子
うぇぇん!
本当なんだ!
きてないんだ!
川口由紀恵
いいえ、来てるのよ。
動揺するのはわかるわ。
でもいくつか怪しいのがいくつか届いてるのよ。
前島悠子
そういうことじゃないですよ!
師匠もマネージャーも!
もう知りません!
川口は前島が何をそんなに興奮しているのか、さっぱり理解できなかった。
しかしまずは『前島の命が狙われている』という当面の出来事が問題だ。
川口由紀恵
ここにあるのは怪しいファンレターの一部です。
郵送とメールの両方をお持ちしました。
天野は机の上の文面に目を通し、険しい表情で呟いた。
天野勇二
これは酷いな。
こんなにもアイドルというのは悪意を受けるのか。
川口由紀恵
人気が出ればそれに反する意見も出ます。
悠子ちゃんには見せないようにしているものばかりです。
アイケープロでは必ず全てのファンレターをマネージャーやスタッフがチェックしている。
手紙以外にも、花や小物やぬいぐるみなどのプレゼントが送られてくるが、全てスタッフが中身を分解してチェックし、盗聴器などや毒物が仕掛けられていないか確認するのだ。
時にはカミソリが入っていたり、妙な液体が入っていることもある。
中傷だらけのファンレターであればタレントに見せず処分している。
前島悠子
川口さん、これ、私へのファンレターなんですか?
川口由紀恵
ええ。
悠子ちゃんには見せてないの。
前島悠子
そんな!
ファンからのお手紙は全部見たいです!
川口由紀恵
そういう訳にもいかないの。
ネットの掲示板も見ないように言ってるでしょ?
モチベーションを下げる中傷なんて、アイドルは見ない方がいいの。
天野は書面を見て、激しい嫌悪感に襲われた。
どれもこれも悪意の塊だ。
『最近の前島さんは華がなくなりました。もう引退してください』
『またグループに戻ってください。僕の意見を聞かないあなたはバカなんだ』
『今すぐ引退しろ。ブサイクはテレビに出るな』
『ジャニーズと共演するな。私の恋人が汚れる』
『顔面がセンターなんだよ。それでよくテレビ出れるね』
『この先も芸能界にのさばるなら絶対に殺してやる』
天野勇二
これは『殺してやる』と書いてあるぞ。
脅迫罪にならないのか?
川口は忌々しい目で書面を睨みつけた。
川口由紀恵
こうした明確なキーワードを含むものは即座に通報しています。
ですが、警察がこちらの期待通りに動くことは
相手も賢くなってきていて、こうしたストレートな単語はほとんど使いません。
しかも無記名でどこから送られたのかわからないんです。
天野勇二
ゲスな手紙だな。
書いたヤツの悪意を嫌というほど感じるよ。
前島は肩を落としながらいくつかの手紙を見つめた。
自分の手元に届くのは応援メッセージだけだ。
こうした悪意から避けるようにしてくれている事務所の心遣いを感じた。
そして、アンチからの激しい悪意は、やはり心が傷つくものばかりだ。
天野勇二
前島よ。
お前にはこんな書面を送るクズ共より、魅力を感じ声援を贈るファンが山ほど存在する。
この程度の紙きれで、大多数のファンの声援を忘れるな。
川口由紀恵
天野様の言う通り。
悠子ちゃん、こんな手紙を気にしちゃダメよ。
前島は涙目で頷いた。
天野は改めて告げた。
天野勇二
どのようなやり方なのか。
どんな目的があるのか。
全て不明だがお前を『殺す』と宣言しているヤツがいる。
『プロの殺し屋』と自称している男だ。
俺様と涼太の観察の結果、そいつはクロに近い、というのが現在の結論だ。
前島は困惑して天野と川口を見つめた。
前島悠子
そ、そんな……。
なぜでしょう……?
今は恨みを買うような仕事をしていません。
何か、私に至らないことがあったんでしょうか……?
天野勇二
わからん。
その理由を川口に尋ねたのだが……。
川口は天野の言葉を受けて言った。
川口由紀恵
悠子ちゃんの言う通り、今は恨みを買うような仕事も、問題のある発言もしていません。
スキャンダルも天野様との仲を探られるのが一番怖いくらいです。
天野勇二
ふむ……。
前島よ、男を作ったりしてないか?
前島の乙女心が吹き飛んだ。
前島悠子
作ったりしてませんよ!
よくそんなことが言えますね!
師匠は本当にクソ野郎なんですから!
うぇぇぇぇん!
川口はその姿を見て、ようやく前島の心情を察した。
苦笑しながら天野をたしなめる。
川口由紀恵
天野様……。
そのお言葉は、さすがに悠子ちゃんが可哀想です。
天野勇二
ほう?
そうなのか?
川口由紀恵
天野様は本当に鈍感ですね。
まぁ、だからこそ、こちらとしてはありがたいです。
前島悠子
ありがたくないですよ!
こっちは!
グズグズ泣いている前島を無視して、悪意のある手紙に目を通す。
天野はガッカリしたように告げた。
天野勇二
わからんな。
断定できるものがない。
どれが殺人を計画しているのか、これだけでは判断がつかない。
川口由紀恵
私としても同じ結論です。
一体、誰が前島を狙っているのでしょう。
天野勇二
俺様も知りたいよ。
やはり前島を襲うヤツを返り討ちにするしかなさそうだ。
川口よ。
またSPとして雇わせてもらう。
24時間、前島に付き添わせてもらうぞ。
川口は慌てて首を横に振った。
川口由紀恵
さすがにそれは困ります……。
天野様と悠子ちゃんのスキャンダルは、もう発覚寸前なんですよね……。
天野勇二
スキャンダルだと?
そんな覚えなど俺様にはない。
前島を見殺しにするつもりか。
川口由紀恵
いやぁ……。
そうではないんですけど……。
うーん……。
天野と前島の関係は、週刊誌に一度スクープされたことがある。
前島にとって、天野は大学で一番仲の良い男性。
恋愛関係に発展しているのではないかと記者に探られているのだ。
これまで天野が前島と2人きりで会うことはほとんどなかった。
だが、24時間付き添うとなれば話は別だ。
いくらSPだとしても、そこまで密着する必要はない。
前島悠子
川口さん。
何を迷っているんですか。
私が殺されるかもしれないんですよ?
師匠に守ってもらうのが一番です。
師匠、宜しくお願いします。
前島はもう前向きに考えていた。
愛の告白はなかった。
ちっとも、きてなかった。
天野は相変わらず自分のことを『女』として見ていない。
しかもなぜか『殺し屋』に狙われている。
だが、天野が『24時間付き添ってくれる』というオマケに目を向けていた。
川口由紀恵
悠子ちゃん……。
あなたもわかるでしょ?
それは別の意味で心配だわ。
前島悠子
でも殺し屋ですよ。
うぇーん。
師匠怖いです。
師匠以上に頼れるSPはこの世に存在しません。
天野勇二
ああ、まかせておけ。
俺様が守るからには安全だ。
前島悠子
えへへ!
いやったぁ!
師匠がいつも一緒です!
川口は純真無垢な笑顔を浮かべる前島、そして、
天野勇二
クックックッ……。
あのタロット野郎め。
これで返り討ちの体制は整ったぞ。
天才クソ野郎に喧嘩を売ったこと、地獄で後悔させてやるぜ……!
こんなことを呟く天野を見て、果てしなく不安だった。
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