天才クソ野郎の事件簿24 -TWENTY FOUR-


第23話「天野くんのクリスマスイブ 22:00~23:00」

12月24日 22:00~23:00


 12月24日。クリスマスイブ。

 夜中の22時。


スタッフ

くそ! くそっ!
なんだってこんなことに!


 青いキャップをかぶった男……ヤマサキはお台場を駆けていた。


天野桃香

待ちなさい!
待てって、言ってんのよ!

ヤマサキ

ひぃぃ!


 背後から女子高生ほどの娘が駆けてくる。

 かなり足が速い。

 最初はそれなりに距離が離れていたのに、今ではもう少しで手が届きそうだ。

 

ヤマサキ

……なんて、しつこい女だ!


 『自由の女神像』に近づいたあたりで、ヤマサキは足を止めて振り返った。

 相手は若い娘。

 出来れば手荒い真似はしたくなかったが、もう後には引けない。

 計画が失敗に終わった以上、爆弾を回収し逃げ切ることが最優先だ。


ヤマサキ

うおおお!!!


 ヤマサキは拳を振り上げ、桃香に殴りかかった。


 桃香はその動きを驚いて見つめる。


 そして、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


天野桃香

せいやぁ!


 迷うことなくつま先を急所にぶち込む。


ヤマサキ

ぐお!

天野桃香

もういっちょ!


 パァン、と軽快な炸裂音。

 桃香の平手がヤマサキの頬を張った。


天野桃香

まだまだ!


 低い姿勢で懐に飛び込み、ヤマサキの襟元を掴む。

 くるんと反転。

 腰に乗せてヤマサキの身体を宙に浮かばせた。


天野桃香

とおおりゃぁぁ!


 ドシン、と鈍い音をたてて、ヤマサキの身体がアスファルトに叩きつけられた。



天野勇二

はぁ、はぁ……。
桃香、終わったようだな……。



 ようやく天野が追いついた。

 肩で息を吐いている。


天野勇二

お前は相変わらず、足が、速いな……。

天野桃香

えへへ、だって陸上部だもん。
このぐらいお茶の子さいさいだよ。


 桃香は「まだ走りたりない」と余裕の表情だ。


天野勇二

もう処刑してやったのか。
爆弾は取り上げたか?

天野桃香

あっ、いけない。
忘れてた。


 慌ててヤマサキに駆け寄る。


天野桃香

おら、爆弾を出せよ。
てめぇなに持ち逃げしてんだ。
言っておくけど、ちい兄は私ほど甘くないんだからね。
指の骨をポキっとされたくなければ、早く出せよ。


 ヤマサキの腹をドスドス蹴りながら脅している。

 どうやら、ただの陸上部、というワケではなさそうだ。

 さすがクソ野郎の実妹だ。


ヤマサキ

い、い、いやだ!
お前らはなんだ!
蹴るな! 離せ!


 ヤマサキはまだ抵抗している。

 天野はため息を吐きながらしゃがみこんだ。


天野勇二

おい……。
無駄な抵抗は止めてくれないか。

もう警察には通報している。
それが爆弾であることは明らか。
お前の共犯である『山崎貴紀』は仲間が確保している。

逃げられやしねぇんだよ。

天野桃香

そうだぞ。
ちい兄怒ったら怖いぞ。

天野勇二

重要なのは、爆弾が他にも仕掛けられていないか、という点だ。
どうなんだ。
他にも仕掛けたのであれば今すぐに吐きやがれ。

天野桃香

そうだそうだ。
早く吐け。


 ヤマサキは爆弾を抱いたまま口を閉ざしている。

 黙秘を貫くつもりのようだ。


天野桃香

しつこいなぁ。
そんな男は嫌いだよ。


 桃香は舌打ちしながらヤマサキのポケットを漁り始めた。


ヤマサキ

なっ、お前、やめろ!

天野桃香

うるさいよ。
じたばたすんな。


 桃香は尻ポケットから財布を抜き取り、中を調べる。

 にんまりと笑みを浮かべた。


天野桃香

ちい兄、免許証があったよ。
この男は『山崎昌やまさきまさ』だって。

天野勇二

ほう、アートデザイナーの男と同じ苗字か。
ふぅん。なるほどね。
確かに顔も骨格も似ている。
こいつらは兄弟か。


 天野は呆れたように吐き捨てた。


天野勇二

兄弟揃って何をバカなことを企んでいるんだ。
桃香よ、全てのポケットを探れ。
起爆装置などを持っていれば厄介だ。

天野桃香

おっけー。
任せてよちい兄。


 ヤマサキはそれ以上の物を持っていなかった。

 爆弾だけは死守しているが、それも時間の問題。

 逃げる隙はもうない。

 さすがに年貢の納め時だった。


ヤマサキ

……ちくしょう……。

お前ら、どうして、俺たちを邪魔するんだよ!


 爆弾を抱きながらヤマサキが吼えた。


ヤマサキ

お前らには関係ないだろうが!?
なんで関係ないくせに、出しゃばってくるんだ!
どうして俺たちの邪魔をするんだよ!

天野勇二

関係ない?
それがどうした?
関係がないと何か困ることでもあるのか?

ヤマサキ

あ、あるに決まってんだろ!


 天野はギロリとヤマサキを睨みつけた。


天野勇二

ならば、教えてもらおうじゃないか。

何も関係ない前島、そしてクリスマスを純粋に楽しんでいた人間の命まで奪おうとしたくせに、なぜそんなことを偉そうに尋ねられるのか……。

さぁ、言ってみやがれ。


 ヤマサキは「うぐぐ……」と唸りながらも叫んだ。


ヤマサキ

気に入らないんだよ!
お前らみたいな浮かれたヤツらが!
世界はこんなにも危険に満ちているのに、平和ヅラしてのん気に浮かれているお前らみたいなヤツらが!


クリスマスがなんだ!?
キリストの誕生日だぞ!
聖書も読んだことねぇ虫ケラ共が!
企業に躍らされた資本主義のブタが!
お前らみたいなヤツらが何人か死ねばこの国も………うぎゃああああ!


 ヤマサキの身体が50センチほど浮かび上がった。

 天野が思い切り蹴り上げたのだ。

 持っていた爆弾が転がり落ちる。

 桃香は慌ててキャッチし、深く息を吐いた。


天野勇二

くだらねぇ男だ。
世の中が全て、お前の好み通り動いているワケじゃねぇんだよ。
そんな理由で命を奪おうとしやがって……!


 ヤマサキはガタガタ震えながら天野を見上げた。

 蹴られた箇所が痛い。

 内蔵が破裂したのではないか、と錯覚するほどの威力だ。


 そして、迫り来る天野がとんでもなく怖い。 


 極悪の笑みを浮かべている。

 飢えた肉食獣のような殺気を放っている。

 悪魔がこの世に存在するのであれば、この男だろう、と感じた。


天野勇二

俺様はお前みたいに、命を粗末に扱うヤツが嫌いなんだ。

殺すのは簡単さ。
破壊するのだってワケねぇさ。
だがな、救うことは果てしなく難しいんだよ!
つまらねぇ妬みで爆弾なんか仕掛けやがって……!

貴様のようなヤツは……死ね!!!


 ズガン、とヤマサキの頭を蹴り上げる。

 見事にクリーンヒット。

 死んではいなかったが、ヤマサキは完全に気絶していた。


天野勇二

チッ!
くだらねぇ……。


 桃香はヤマサキの様子を見て安堵の声をもらした。


天野桃香

……ふぅ、殺さなかったね。
ちい兄のトドメを刺す光景は心臓に悪いよ。
毎度のことながらヒヤヒヤした。

天野勇二

俺様は命の重さを知っているからな。
どうだ、偉い兄だろう?

天野桃香

うん。
ちい兄はエライ!


 パチパチと拍手する桃香の姿を見て、天野は満足気に微笑んでいた。


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つばこ

これにて事件解決!
さて、長かった24時間更新も次回がラスト!
ご期待ください!!!

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コメント 173件

  • Demurrer

    やっぱり、こう読み返すと勇二が止めのダサい台詞より桃香の台詞のほうが可愛げがあっていいな。

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  • ドラゴンポテトが美味しすぎて

    天野「しね!」からの、妹「殺してないの偉い!ちいにぃ!」どやぁ大好き

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  • rtkyusgt

    ももかかわいすぎる。かなり従順。笑

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  • コウ

    非リアが暴走するとこうなるんだねw

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  • 焼きましゅまろ

    桃香ちゃん嫁に欲しい、、、、、、、
    可愛いし強いしわしの好みやし、、、
    師匠!!桃香ちゃんをわしにください!!

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