お気づきだろうか……。
この山崎という男……。
読者の皆様は、お気づきだろうか……。
山崎という男の「手」に、ご注目いただきたい……。
天才クソ野郎の事件簿24 -TWENTY FOUR-
第11話「天野くんのクリスマスイブ 10:00~11:00」
12月24日 10:00~11:00
12月24日。クリスマスイブ。
巳の刻10時。
その時間帯、前島はお台場の『ウエストプロムナード』で歌番組のリハーサルに励んでいた。
今夜の特番は17時から20時までの3時間。
生放送で繰り広げられる。
途中、各地の中継やVTRを流すこともあるが、基本的には特製ステージでのライブが中心だ。
前島を始めとしたアイドルグループの面々、その他にも著名なミュージシャンが集まり、音合せや出演の段取りをチェックしている。
スタッフ
前島さーん。
ちょっといいですか?
青いキャップを被ったTV局のスタッフが前島を呼んだ。
前島悠子
なんでしょうか?
スタッフ
ちょっとご挨拶をお願いしてもいいですか?
前島悠子
はい! 喜んで!
純粋無垢な笑顔で了承。
芸能人たるもの、お偉いさんとの挨拶も仕事のひとつだ。
青いキャップを被ったスタッフは、1人の男性の前まで前島を連れて行った。
スタッフ
こちら、今回のイルミネーションである『クリスマスシンフォニー』の総責任者、アートデザイナーの
山崎と紹介された男は、温和な笑みを浮かべて頭を下げた。
山崎貴紀
山崎と申します。
今回は人気の前島さんに僕のイルミネーションを点火していただくと聞き、とても感動しています。
宜しくお願いします。
前島は
前島悠子
こちらこそ宜しくお願いします!
前島悠子ともうします!
本当に素敵で壮大なイルミネーションですよね!
私なんかがスタートさせていただけるなんて、もう一生の思い出になります!
本当にありがとうございます!
ぺこりと頭を下げて手を差し出す。
握手を求めるが、山崎はなかなか手を差し出さない。
見ると薄い革手袋をしている。
山崎貴紀
えっと、はい。
お願いします。
山崎は少々迷っていたが、革手袋を外して手を伸ばした。
握手を交わす。
手には爛れた跡が残っている。
火傷などを負った傷跡なのかもしれない。
気を使わせてしまったなと、前島は申し訳なく思った。
スタッフ
前島さんにはこちらの『プリっち』で、イルミネーションを点火していただきます。
後でカメラチェックもお願いしますね。
スタッフが『プリっち』を前島に手渡した。
新色の『ローズダイアモンドピンク』だ。
前島悠子
『プリっち』を使うんですね。
どうやって点灯させるんですか?
山崎貴紀
特製限定アプリを入れてあるんです。
その『クリスマスボックス』っていうアプリを起動してみてください。
タップすると『Happy Xmas!』という甲高い機械音が鳴った。
前島悠子
うわ、大きな音ですね!
山崎貴紀
こちらの音声を聴くことによって、イルミネーションが作動するんです。
まずはステージのツリー。
そこから街全体に光が広がっていく……という流れなんです。
前島悠子
ふむふむ。
これでイルミネーションが広がりきったら、新曲スタートとなるんですね。
前島は朗らかに頷いた。
前島悠子
まかせてください!
最高のステージにしてみせます!
前島は無邪気な笑みを浮かべながらも、チラリと山崎の顔を見つめた。
総責任者にしては若い。
まだ30代半ばだろう。
銀縁のメガネが似合う、知性派のイケメン。
温和な笑みを浮かべているが、どこかに陰がある。
何かを達観したような、興奮を必死で隠しているような、常人とはまた違った目つきだ。
前島悠子
(芸術家だからでしょうか……。なんか、嫌な感じがしますねぇ)
何だか胸騒ぎがする。
アイドルでも、虫の知らせを感じることがあるようだった。
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お気づきだろうか……。
この山崎という男……。
読者の皆様は、お気づきだろうか……。
山崎という男の「手」に、ご注目いただきたい……。
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