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さぁ、徐々に事件が動き始めるぞ……。
天才クソ野郎の事件簿24 -TWENTY FOUR-
第9話「天野くんのクリスマスイブ 8:00～9:00」
12月24日 8:00～9:00
12月24日。クリスマスイブ。
朝方8時。
涼太はまだ渋谷にあるラブホテル『ペガサス』にいた。
ハルカ
『ヤマサキ』か『ヤマザキ』だったか……。
確かそんな名前だったよ。
爆弾を作ってる男。
アイラインを引きながらハルカが喋っている。
佐伯涼太
ヤマサキさん……。
その人が前島悠子ちゃんを狙ってるの？
涼太はまだ半裸だ。
バスローブを羽織り、昨晩の激戦で負った『傷跡』をポリポリかいている。
傷跡の数は多い。
主に首筋や背中に集中している。
かなり激しい闘いを繰り広げたようだ。
ハルカ
そんな話をしてたよ。
なんか気にいらないんだって。
デンキコウガク？ とかなんかの専門で、なんかのアーティストなんだって。
意外と爆弾なんて簡単に作れるんだ、とか言って自慢してた。
イヤミなヤツだったね。
佐伯涼太
ふーん。
物騒な人だね。
よくそんなのと寝たね。
ハルカ
顔だけは良かったからさ。
あと手が綺麗だったし。
指先が長くてキレイな男って、なんかそそるんだよね。
ハルカはけろりとした顔で答えている。
なかなかチャラい娘だ。
佐伯涼太
なんで前島悠子ちゃんを狙ってるんだろう？
動機は聞いた？
ハルカ
本気かどうか知らないけど、ヤマサキはクリスマスが嫌いなんだって。
佐伯涼太
クリスマスが？
なんでまた？
ハルカ
なんか、賑やかにワイワイやってるのが気にいらないってさ。
変わってんの。
『今年こそクリスマスを中止にしてやる。前島悠子をイケニエにしてクリスマスを凄惨な日にしてやるんだ』
とか言ってた。
涼太は呆れてため息を吐いた。
佐伯涼太
なにそれ。
くっだらないなぁ。
クリスマスなんて最高のイベントじゃん。
企業はお祭り感を演出して物を売りたい。
僕らは騒ぎたい。
クリスマスは誰もが幸せになれる『Win-Win』のイベントなのに。
ハルカ
気に入らないなら無視すればいいだけなのにね。
ヤマサキはそれが出来ないんだってさ。
ちっちゃい男だったなぁ。
涼太はハルカの話を聞きながら、ぼんやりと考えこんでいた。
佐伯涼太
（クリスマス……。それに前島さんか……）
嫌な予感がする。
胸騒ぎがする。
その時、チャラ男は確かな虫の知らせを感じていた。
佐伯涼太
（確か今日、お台場で2つがミックスするデカいイベントがあった……。まさかと思うけど、ヤマサキはそれを狙ってるのかな……）
スマホを取り出して調べる。
お台場にて行われるイルミネーションライブ。
かなり規模が大きい。
前島悠子はイルミネーションを点火させる役目を担っている。
佐伯涼太
（気になるね……。念のため行ってみようかな。確か勇二もお台場にいるはずだし……）
思案している涼太をハルカが呼んだ。
ハルカ
いつまでそうしてんの？
もう行かない？
お腹空いちゃったよ。
涼太はにやりと微笑んで言った。
佐伯涼太
ねぇハルカちゃん。
美味しいパンケーキを奢るからさ、ひとつ頼まれてくれない？
