天才クソ野郎の事件簿24 -TWENTY FOUR-

第2話「天野くんのクリスマスイブ 1:00～2:00」

12月24日 1:00～2:00

　12月24日。クリスマスイブ。

　深夜1時。

　その時間帯、国民的アイドルの前島悠子は自宅マンション前にいた。

　ちょうど車から降りるところ。

　事務所のスタッフに自宅まで送ってもらっていたのだ。

　運転席にいた前島のマネージャーこと、川口（かわぐち）が声をかける。

　川口は苦笑した。

　前島は「はて？」と呟きながら小首を傾げた。

　『師匠』とは、前話に登場した「天野勇二」のことだ。

　天野は前島が通う大学の先輩。

　とある事件で知り合い、なぜか意気投合し、奇妙な師弟関係を結んでいる。

　天野は前島のことを『見どころのある弟子』としか思っていないが、前島はそれ以上の関係になりたい、と考えている節がある。

（詳しくは『彼女を上手にミスコンで優勝させる方法』『彼女を上手にスキャンダルから守る方法』にて）

　前島はため息を吐きながら言った。

　川口は仰天した。

　川口の知る天野という男はかなりの硬派だ。

　前島（アイドル）の好意さえ意に介さない。

　もしかしたら男色なのではないか、と思えるほどクール。

　だからこそ川口も天野と前島の仲が進展することを、それほど心配していなかったのだが……。

　前島はしょんぼりと告げたが、苦笑している川口の顔を見て思い出した。

　川口はマネージャー。

　自分は恋愛ご法度のアイドルグループの一員。

　卒業を発表したとはいえ、今後もアイドルを続ける以上、色恋沙汰はオープンにするべきではない。

　川口はため息を吐きながら言った。

　去り行く川口の車に頭を下げ、前島はマンションに向かった。

　スマホを取り出し、着信を確かめる。

　師匠からの連絡はない。

　前島はため息を吐き、夜空を眺めた。