天才クソ野郎の事件簿 -特別編-

『彼女を上手に誘拐する方法』
第2話 「天野くんの姪」

前島悠子

姪っ子さん!
つまりこの子は 『天才クソ野郎の姪』なんですか!!!


 仰天する前島を尻目に、天野はメイに向き直り、偉そうに言い放った。


天野勇二

おいメイよ。
いい加減、俺様を『パパ』と呼ぶのはやめろ。

メイ

別にいいじゃん。
パパはパパなんだもん。


 メイは「それよりもさ」と言いながら、前島をじっと見上げた。


メイ

どうして前島悠子ちゃんと友達だって、教えてくれなかったの?
あたしがゆうこちゃんのこと好きだって知ってるのに。

天野勇二

訊かれなかったからな。
それにこいつは『友達』じゃない。
弟子だ

メイ

……弟子?
弟子ってどういうこと?

天野勇二

弟子は弟子だ。
コイツは師匠である俺様の弟子なんだ。

メイ

ゆうこちゃんはアイドルだよ?
弟子なんて失礼だよ!


 天野は「フン」と鼻で笑うと、タバコの煙を吐き出しながら言った。


天野勇二

お前に理解してもらうつもりはない。
俺様と前島は師弟関係という、強い絆で結ばれているのさ。


 その言葉を聞き、前島は拳を握って喜んだ。


前島悠子

そうですよね!
強い絆!
師匠と私には、強い絆があるんですね!

天野勇二

そうだ。

前島悠子

いやったぁぁ!


 両手を上げて喜んでいる。

 メイはその姿を 唖然あぜんとしながら見つめた。


 この前島悠子という娘は、ただの女子大生ではない。

 幅広い世代から支持されている、大人気の現役アイドルなのだ。

 それも国民的アイドルグループのセンターに立つような娘。

 しかも独学で大学へ進学しており、多忙な芸能界の仕事と学業を両立しているスター。

 将来は女優、歌手、モデル。

 その全てを達成できそうな1000年に1人の逸材だ。


 天野とはとある事件で知り合い、色々あって意気投合し、奇妙な師弟関係を結んでいる。

(詳しくは『彼女を上手にミスコンで優勝させる方法』などにて)


メイ

ふぅん……?
パパの言うことは、時々ワケわっかんないなぁ……。


 メイは首を捻りながら前島を見ていたが、思い出したように言った。


メイ

ていうかさ、お願いパパ。
あたしを誘拐してってば。

天野勇二

はぁ……。
またそこに帰結きけつするのか。


 呆れたように言葉を続ける。


天野勇二

さっきからなんだ。
誘拐だと?
家出の相談なんか聞く気はないぞ。

メイ

いえでじゃないよ。
誘拐してほしいの。
もうお家に帰りたくないんだってば。
パパに誘拐されたいんだよ。


 天野はギロリとメイを睨みつけた。


天野勇二

くだらねぇな……。
今の小学生クソガキの間じゃ、『誘拐ごっこ』でも流行っているのか?

あまり俺様を怒らせるな。
失せろ。
お前みたいなクソガキのれ言に付き合っているヒマはねぇんだよ。


 天野は本気で苛立っている。

 瞳には殺気が宿り、「睨むだけで殺す」ぐらいの迫力を放っている。

 前島はその表情を驚いて見つめた。


前島悠子

(あれ……? 師匠にしては珍しいですねぇ……)


 確かにこの男はとんでもないクソ野郎だ。

 口は悪く、野蛮な形相ですぐに人を脅しつける。

 しかし「幼子には妙に優しい」という、不可思議な特性を持つ男でもあるのだ。


 前島は実際に、その姿を目の当たりにしたことがある。

(詳しくは『彼が上手にベビーシッターする方法』にて)


前島悠子

(どうしたんでしょう? 師匠はメイちゃんが嫌いなんでしょうか……?)


 前島がどうしたものかと困惑していると、メイがテーブルを叩いて立ち上がった。


メイ

……もういいよ!
パパのバカ!!!


 袖口で目元を拭う。


メイ

もうパパなんか知らない!
他の人に頼むからいいもん!
パパなんか死んじゃえばいいんだ!


 メイはそう叫ぶと、テラスから勢い良く走り去った。


天野勇二

……チッ。
メイのやつめ。


 天野は舌打ちしながら椅子に腰掛け、前島は不安気にメイの背中を見送った。


前島悠子

あの、師匠……?
メイちゃんをあのままにしていいんですか……?

天野勇二

構わんさ。
あいつは性根がひねくれてやがるんだ。
素直じゃないガキだよ。
まったく誰に似たんだか。

前島悠子

そうですか……。
まぁ、本当に師匠の子供だったら、ひねくれて当然ってカンジもしますけどねぇ……。

天野勇二

うん?
何か言ったか?

前島悠子

あっ!
いや、何でもありません!


 前島は椅子に腰掛け、天野の顔をじっと見上げた。


前島悠子

それよりも……。
なぜメイちゃんは、師匠のことを『パパ』と呼ぶんですか?


 天野は嫌そうに口を閉ざした。

 タバコの煙を静かに吐き出す。

 前島はおずおずと言った。


前島悠子

その……。
言い難いことなんですか?

別に「オジさん」のことを『パパ』って呼ぶこともあるかもしれませんし……。

もし説明が面倒だったら構わないですけど……。


 天野は虚空をじっと見つめた。

 静かに首を振る。


天野勇二

いや、お前には言っても、構わないか……。

別に隠すほどのことでもない。


 天野は静かに口を開いた。


天野勇二

ワケがあってな。
メイの父親は入院しているのさ。
メイは父親とマトモに会話したことさえない。
そのためなのか、いつしか俺のことを『パパ』と呼び始めやがった。


 前島が「ふんふん」と頷く。


前島悠子

パパさんはお病気なんですか?

天野勇二

ああ……。
お前も会ったことがあるだろう?
あれはな、『兄』の子供なのさ。

前島悠子

えっ……。


 思わぬフレーズが出てきた。


 天野の兄。

 勇一ゆういちのことだ。


 前島は一度だけ、会ったことがある。

 前島にとって、忘れられない思い出のひとつだ。

(詳しくは『彼女が上手にアイドルグループを卒業する方法』にて)


 前島は震えながら言った。


前島悠子

お、お、お兄さんの子供!?
お兄さんは、だって……!

天野勇二

そうだ。
兄はかなり長いこと入院している。

だが、入院する前に、兄は1人の女と関係を持っていた。

メイはその女が産んだ子供なんだ。


 天野は静かに言葉を紡いだ。


天野勇二

兄がただひとり、愛していたはずの女さ……。





(明日に続く)


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描いてもらいましたコーナー☆



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素敵なイラストありがとうございます!

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明日は、火曜連載 『しみことトモヱ』「simico先生」のイラストが登場します!
お楽しみに!ヽ(*´∀`*)ノ.+゚

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つばこ

どうも、つばこです。
今回の「特別編」から読み始めても楽しめると思いますが、本編をお読みいただくとより楽しめるようにもなっております。ご興味ありましたら本編もご拝読くださいませm(_ _)m
 
さてさて、本日は『ぼく りゅーちゃん! ~インコと500日漫画家~』の「篠月梟太郎先生」に天クソを描いていただきましたぁーーヽ(*´∀`*)ノ.+゚
素敵なイラストを本当にありがとうございます!
りゅうちゃんが! 肩に! 肩に乗ってる! 超絶カワイイ!!!+。:.゚ヽ(*´ω`)ノ゚.:。+゚

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コメント 226件

  • Demurrer

    あまり絵が好みではない

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  • らんこ

    あああああああ~りゅうちゃんとのコラボあったああああああああ~感激です(///∇///)

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  • メル子

    篠月先生とつばこ先生、ここでつながりがあったんですね!
    今天才クソ野郎の漫画を描いていらっしゃるのが篠月先生なので運命を感じます(笑)

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  • ひとよ

    ↓いやほんとに。素晴らしい。

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  • nameless

    まさかこのときのコラボがイラスト1枚で終わらず、漫画で毎週読めるようになるとは思わなかった。

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